第64回 無理やり管理されなくても、自発的に動きたくなる職場

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第64回 無理やり管理されなくても、自発的に動きたくなる職場

安田

前回の対談で、中辻さんはリモートワーク中に寝ていようが遊んでいようが、納期さえ守ってくれれば、ある程度個人の裁量に任せていると仰っていましたよね。


中辻

ええ。社員の子たちを信頼しているので、わざわざ「ちゃんと仕事してる?」なんて見張らなくてもいいんです。

安田

一方で、中辻さんはポスティングスタッフさんたちもマネジメントしているじゃないですか。オフィスで仕事をしている社員さんたちとは、マネジメントのポイントは変わってくるんですか?


中辻

えー…どうかなぁ。根本は変わらないと思いますね。反響があったものについてはしっかり開示して「あなたのおかげでお客様が喜んでいたよ」としっかり伝えるようにしていますし。

安田

じゃああまり変わらない?


中辻

そうですね。たぶん私、安田さんが思ってくださっているほど、緻密なマネジメントはしてないと思います(笑)。

安田

笑。でも例えばポスティングスタッフが、ポスティング中にお菓子食べてたり寝てたりしたら、注意しますよね?


中辻

あ、それは注意しますね。でもそもそもウチのポスティングスタッフさんたちって、自分の仕事にものすごいプライドを持っていらっしゃるんですよ。

安田

あ、そうなんですね。そもそもサボるような人はいないと。


中辻

ええ。それどころか、「いかに丁寧に速く正確にチラシを配布するか」を常に考えてくれてます。事前に配布エリアの下見に行ったり、地図とにらめっこしながら効率よく回れるルートを計算したり…。

安田

へぇ、それはすごい。プロフェッショナルなわけですね。


中辻

そうそう。だからそういう方たちに、「配布の素人」である私が言えることなんてほとんど無くて(笑)。

安田

なるほど。でもそれって、ある意味「完成形の人」というか、きちんと育成された人であればこそ成り立つ関係性だと思うんですよ。人に管理されなきゃ真面目に働けないという人、世の中にいっぱいいますよ。


中辻

うーん、それで言うと、ウチでは面接の時にかなりふるい落としているんです。「人に管理してもらわなきゃ働けない」っていう人はそもそも採用しませんね。

安田

採用後の育成に力を入れるわけじゃなく、そもそも厳選した人材だけを入れていると。


中辻

はい。だってポスティングって、クライアント様のチラシを配るんです。そんな大切なもの、信頼できる方にしか任せられませんよ。

安田

ああ、確かにそうですよね。前にお話してくださったみたいに、またチラシを大量に池に捨てられたりなんてしたら、たまりませんもんね(笑)。


中辻

そうそう(笑)。なのでウチでは採用はかなり厳しくやっています。だいたい15名面接してようやく1名採用できるくらいかな。

安田

15分の1ですか。でも今はどこも人集めに苦労していて。ポスティングスタッフも人気職とは言えない中で、選り好みもしていられないんじゃないの、と思ってしまうんですが…。


中辻

うーん、ウチはあまり人集めに苦労することはないですね。いつも求人をかける時はIndeedさんで広告を出すんですけど、広告費1000円ほどでも毎回30名くらいは応募がくるので。

安田

え、それはすごい! なぜ中辻さんの会社にだけ、そんなに大勢集まるんでしょうか。


中辻

たぶん一番のフックは、スタッフさんにお渡しする単価が高いからでしょうね。あとは、「ランク制度」があることも大きいかな。

安田

「ランク制度」ですか。それはどういうものなんでしょう?


中辻

ウチではどれだけ反響を取れたかによって、ランクが変わるんです。ランクが上がれば上がるほど、1枚あたりの配布単価がどんどん高くなるという仕組みで。

安田

なるほどなるほど。つまり求人の段階から、「ウチはこういうシステムだから、頑張って反響を取って、どんどん上のランクになって稼いでね」というのを打ち出しているわけですね。


中辻

仰るとおりです。あとは月1で「反響大会」というレクリエーション的なことをやっていて。反響1位になった人にはシャトーブリアンをごちそうします、とか(笑)。

安田

おぉ、それは羨ましい(笑)。とは言え、どこの会社でも「頑張れば時給アップ」とは謳っているはずで。やっぱり中辻さんのところのように、評価基準と給与アップのルールが明確なのがいいんでしょうね。


中辻

それはあると思いますね。ちなみに月の手取り額だけで言えば、私より稼いでいるポスティングスタッフさん、いっぱいいますよ(笑)。

安田

えー?! 専務より収入が多くなるなんてことが起こり得るんですか! それは夢がある(笑)。


中辻

笑。とは言え、そういうのはかなりストイックにやられているスタッフさんたちです。朝から晩まで配布して、休みも週1日だけしか取らないとか。

安田

え、でも、例えそこまでしても、反響がなければ単価は上がらないんですよね?


中辻

ええ。ウチは「たくさん配れる人」ではなくて、「反響を取ってくれる人」を評価する会社なので。闇雲に配布していても、稼げるわけではないです。そもそもクライアント様からすれば、少ない配布数で大きな反響を取りたいわけなので。

安田

なるほど。ちなみにランクというのは、一度上に上がったら、その後は下がることはないんですか?


中辻

いえいえ、そんなことはないですよ。2ヶ月毎にランクの見直しがあるので、最上位ランクの座であぐらをかいているとすぐに落ちちゃうよ、と言っています。

安田

頑張ったら頑張った分だけしっかり稼げるけど、それは裏を返せば、サボっていたらすぐに給与も下がるよ、というわけですね。なるほどなぁ。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

Twitter

1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

感想・著者への質問はこちらから