第74回 自分のファンを増やすことが、仕事のしやすさにつながる

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第74回 自分のファンを増やすことが、仕事のしやすさにつながる

安田

『日本ポスティングセンター』は「日本一高いポスティング会社」だと謳っていらっしゃいますが、私はこれ、すごくまっとうな戦略だと思っているんです。実際、会社の収益アップを目指すなら高く売るしか方法はないですよね?


中辻

そうですね。利益を増やすためにも、無駄な安売りはしてはいけないのかなと思っています。

安田

とは言え、他と似たような商品を自社だけ高く売ることは難しいので、商品やサービスのクオリティを上げる必要がある。ちなみに中辻さんとしては、「価格」と「クオリティ」のどちらを先に上げるべきだと思いますか?


中辻

クオリティを上げるのが先だと思います。ただ、クオリティが上がったから大手を振って値上げできるかと言うと、そう単純でもない気がしていて。

安田

ほう、それはどういうことですか?


中辻

そもそも現時点でリピートしてくれているお客さんって、「その金額でそのクオリティだから」買ってくれていることが多いと思うんです。つまりお客さんの中では既に価格とクオリティのバランスが取れている。

安田

確かにそうかもしれませんね。仮にクオリティが2倍になったとしても、「価格が2倍になるならウチはいらないよ」というお客さんもいるかもしれない。


中辻

まさに仰るとおりだと思っていて。だから、順番としてはまずクオリティアップに取り組むんだけど、それが実現できたからと言って、そのまま既存商品の価格に反映するのは危険だと思っていて。

安田

なるほどなぁ。じゃあどうすればいいんでしょう?


中辻

いろいろなやり方があると思いますが、例えばクオリティの高さごとにバリエーションを作るとか。松竹梅みたいな。

安田

あぁ、なるほど。じゃあまずクオリティアップに励み、現状のものよりいいものができたら、それをバージョンアップ商品として高い金額で発表する。そして、そのクオリティを求める相手に対してPRする、ということですね。


中辻

そうですそうです。既存商品をすっかり上書きしてしまうのはリスキーだと思いますね。あ、ちょっと話がズレてしまうかもしれないんですけど、私、最近すごく大きな気づきがありまして…。

安田

ほぅ、なんでしょう? 気になります。


中辻

実はこの夏、何年かぶりに『日本ポスティングセンター』の広告を打ったんです。というのも最近増員した社内デザイナーがすごく仕事が早くて、かつ、クオリティの高いモノを作るので、会社全体として仕事量にかなり余裕ができたんですね。

安田

いいですね~。つまり、仕事を増やすために広告を打ったわけですか。


中辻

はい。そうしたら、これまでのお客様と全然タイプが違うお客様からの問い合わせが増えまして…。というのも今までって「誰かの紹介」でお問い合わせいただいたお客様ばかりだったので、金額に関するクロージングってほぼしてこなかったんですね。

安田

皆さん「この会社は日本で一番高いポスティング会社だけど、その分しっかり良い仕事をしてくれる」ということをわかった上で、中辻さんに連絡をしてきてくれている、と。


中辻

そうですそうです。でも広告から問い合わせてこられた方って、金額になかなかシビアで。私たちとしては「このクオリティで作るんだから、これが適正価格です」とやってきているのに、それを理解していただけないというか…。

安田

「チラシなんて1万円程度で作れる時代に、この会社は10万も15万もするの?!」って思われちゃうわけですね。


中辻

そうなんですよ! こんなに顕著に変わるもんなんやな、と。安田さんがよく仰っている「自分や会社のファンになってもらう」ということがいかに大事かっていうことがわかりました。

安田

そうだったんですね、それは良かったです(笑)。


中辻

それで何を言いたかったかというと、これからの世の中で「品質の高い商品」はますます必要になってくると思うけど、品質が高いだけじゃ売れないんだな、ということに気づいたということなんです。

安田

なるほどなるほど。つまり「価格アップ」と「クオリティアップ」はどちらも必要だけど、それだけじゃダメだと。


中辻

そう! 「ファンになってもらわないといけない」んです。

安田

素晴らしい!(笑) よく「お客さんをファンに変える」っていう人もいますけど、私はファンになってくれるお客さんってそもそも最初から「ファン要素」を持っている気がしますね。だから「安さ」で選んでくる人は、どんなに頑張ってもファンにはなってくれない気もして。


中辻

うんうん、それはすごく思いますね。

安田

ちなみに中辻さんは「紹介」が増えるように何か特別なことをやられているんですか?


中辻

いえ、何もやっていないです(笑)。

安田

何もやっていないのに、勝手に紹介顧客が増えていくわけですか! それはすごいな(笑)。


中辻

はい、ありがたいことに。昔は「ご紹介カード」とか渡して「紹介してくれたら次はちょっと値引きますよ」ってやってたんですけど、そういうのはちょっと嫌だなぁと思ってしまう自分もいて(笑)。

安田

それでも紹介が増えていくのはすごいですよね。普通、経営者同士は競争しているわけだから、「あそこのポスティング会社を使うと売上が上がるよ」なんて教えたくないはずなのに(笑)。


中辻

確かに(笑)。もちろん新規のお問い合わせも大事ですけど、やっぱり私は既存のお客様に繰り返し使っていただくことを一番大事に考えていて。そういう大切なお客様が、ご自身のお客様やお知り合いを私に紹介してくださる、ってすごく嬉しいことだなと思っています。

安田

なるほどなぁ。既存顧客を大切にしている中辻さんの姿勢が、また新たな「紹介」や「ファン」を増やしていくことにつながるんでしょうね。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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