第80回 効果的なチラシって、どういうもの?

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第80回 効果的なチラシって、どういうもの?

安田

『日本ポスティングセンター』では全国から依頼されたチラシの作成もされていますし、中辻さんご自身も「チラシ診断」をやられているので、これまでにもいろいろな種類のチラシを見てきたと思います。その中でも、「お客さんに取っておいてもらえるチラシ」ってあるじゃないですか。


中辻

ああ、そうですね。ちょっと見て捨てちゃうんじゃなくて、手元に保管してもらえるようなチラシはありますね。

安田

そうそう。というのも、私が対談しているご葬儀会社の社長さんからお聞きしたチラシの話で、なるほどなぁと感心したことがありまして。いざという時に自分の会社をすぐに思い出してもらえるように「保存してもらいやすいような工夫をしたチラシ」を配布したんですって。


中辻

へぇ〜。それ、どんなチラシなんですか? めっちゃ興味あります(笑)。

安田

「ご葬儀のマナー」といったテーマで十数回に渡って連載したそうです。それを毎月配布していたって仰っていました。そうすると「続き物」になっているから皆さんずっと保管していたらしく、結果的にチラシからの問い合わせがすごく増えたんですって。


中辻

なるほど! 素晴らしいですね、その葬儀会社さん。ものすごくいいアイディアだと思います!

安田

ですよね。それで私も「やっぱりチラシは保存してもらう方がいいのかな」と思うようになりまして。そのあたり、中辻さんはどう考えていらっしゃいますか?


中辻

私は「長期的なスパンで見て、いつか必ず必要になる商品」に関するチラシは、どうにかして保存してもらうため、あの手この手で工夫をするべきだと思います。

安田

確かに葬儀会社は、いつ何時必要になるかわかりませんけど、いつかは必ずお世話になるはずですもんね。


中辻

ええ。それでいうと塗装屋さんのチラシも「長期で保存してもらいたいチラシ」の部類に入ると思います。とはいえ、投函する前にお家の状態を見れば、「このお家はもうそろそろ必要そうだな」っていうのはある程度わかりますけど。

安田

確かに、明らかに新築の家には投函しても効果は少なそうですもんね(笑)。


中辻

笑。ただそういうお家でも、突然何らかのアクシデントがあるかもしれないので、やっぱりチラシを保管しておいてもらう努力はした方がいいかもしれないですね。

安田

なるほどなるほど。ちなみに塗装屋さんだと、どういう工夫をして保管してもらいます?


中辻

「塗装の時期をセルフで見分ける方法」とか、「雨漏りして大変だった実話ランキング」とか、豆知識系のエピソードを載せると、保存しておいてもらいやすい傾向があります。

安田

読み物系や知識系は、やはり保存してもらう確率が高いと。じゃあ出前屋さんのチラシはどうです? どうやって長期保存してもらいます?


中辻

チラシそのものをメニュー表にすると注文する時にわかりやすいから保存してもらいやすくなりますよね。あとはもう定番の「クーポン」をつける。注文時にチラシのクーポンを使えば安くなります、って。

安田

確かに「チラシといえばクーポン」みたいなところはありますね(笑)。ところでクーポンの使用期限ってどういう基準で設定するんですか?


中辻

それは難しいところなんですよ。というのも、葬儀屋さんや塗装屋さんのように「いつ頼むかわからない」というサービスだと、あんまり使用期限は関係ない。ただ、期限を区切らないことで「いつでもいいか」と思う方も当然いらっしゃるので…。ですから飲食店さんや美容室・美容系サロンなどの「来店動機さえあればすぐに来ていただけるはず」というサービスについては、だいたい1ヶ月半を目安に使用期限を設定するようにしています。

安田

なるほどなるほど。そういうサービスのチラシだったら、別に長期的な保存はしてもらわなくてもいいわけですね?


中辻

してもらわなくてもいい、って言っちゃうと語弊があるかもしれないですけど。美容系のサービスだと「来店スパン」があるんですよ。例えば1回まつ毛エクステをしたら、だいたい1ヶ月後にまた施術を受けに行く、みたいな。そういうところは「長期保存」をしてもらう必要性は低いかなと思います。

安田

なるほど。つまり比較的短期間で来店を促したい場合には、期限がついたクーポンは有効だと。あとよく聞く話ですけど、クーポン目当てで来店したお客さんは、なかなかリピーターにはなりづらいと。これって実際のところどうなんですか?


中辻

あぁ…いわゆる“初回ハンター”と呼ばれる、クーポン限定価格を狙った来店ばかりをする人はいますね。ウチでも何年か前に、通常6000円するまつ毛エクステ・まつ毛パーマを1000円でやります、という破格のチラシをやったことがあったんですけど…

安田

それはすごい(笑)。さぞかしたくさん集客できたでしょうね。


中辻

できましたね〜。広告費50万円くらいで、700人近い集客ができました(笑)。

安田

多いなぁ!(笑) でもそれくらいパンチの効いたキャンペーンの方が、かえっていい気もしますね。


中辻

まさにそうなんですよ。だって50万円で700人もの新規顧客に会えるチャンスだと考えたら、費用対効果としてはかなり高いと思いません?

安田

うんうん。そのまま全員がリピートしてくれれば、なおよし、ですね(笑)。


中辻

まぁ、そこが難しいところでして…。広告で集客したお客様を、どうやってリピート客につなげるか。だから、例えばスタンプカードを作るとか、お得な情報を配信する公式LINEに登録してもらうとか、そういった「次回来店につながる仕掛け」もしっかり考えた上でクーポンを打たないとダメだと思います。

安田

なるほどなぁ。ちなみにクーポンをつける場合は「値段押し」のチラシにとどめておくんですか? それとも、値段だけじゃなくて「こんなお店です」という説明もしっかり入れます?


中辻

もちろん入れます。「このお店はこんないいところがあるんです」「こういう売りがあります」ということをしっかりアピールしておくことで、リピートに繋がりやすいですから。

安田

やっぱりそうなんですね。つまり、お店の良さを説明しつつ、まずはお得な価格をフックに1度来店してもらう、という打ち出し方になる、と。


中辻

そういうことです。逆に言うと、お店のストーリーがないのに、単に安くしてお客様を引き込もうとするのはよくないと思いますね。他店との価格競争になってしまうだけなので。

安田

確かにそうですね。じゃあ「とにかく1度来てくれれば、ウチの良さがわかる」という自信のあるお店であれば、あえて大胆なクーポンを打ち出して新規顧客をドカッと獲得する。これが最も効果的なクーポンチラシの打ち出し方ということになりそうですね。いやぁ、チラシも奥が深いですねぇ!

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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