第19回 採用できない会社に足りないたった1つのこと

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第19回 採用できない会社に足りないたった1つのこと

安田

今回は採用に関する話をしたいなと。人手不足が叫ばれて久しいですけど、採用できない会社に決定的に足りないのは何なんでしょうね。


西崎

給料とか休みとか待遇とか、いろいろ言われたりはしますけどね。でも僕はそこだけじゃない気がするんですよ。

安田

というと?


西崎

もうめちゃくちゃ陳腐な言い方をすれば、多分「愛」が足りないんですよ。

安田

愛!


西崎

僕の周りの経営者さんたちも、皆さん人手不足には困っているんです。最高の人材がどんどん応募してきてくれる会社なんてない。でも、困っている中でも、なんだかんだいい人材が揃っている会社はあって、その共通点はやっぱり愛があること。

安田

ふーむ、その愛というのは、経営者が従業員に対して抱く愛、ということですか。


西崎

経営者からマネジメント層に愛が伝わって、マネジメント層からまたメンバーたちに伝わって、結果会社全体に伝わっているようなイメージですかね。

安田

なるほど。まぁ確かにね、人手不足の会社の中でも本当に全然人が来ない、あるいは定着率が極端に低い会社って、そういう愛の伝達みたいなものがないのかもしれない。ただね、そういうのを越えて、とにかく人が集まりまくっている会社もあるじゃないですか。


西崎

それは例えば、世界的に有名な企業とかですか?

安田

そうそう。たとえばイーロン・マスクなんて社員に全然愛情持ってなさそうじゃないですか(笑)。でもやっぱりすごい優秀な人達がいっぱい集まってくる。それはなんでなのかなと。


西崎

イーロン・マスクはもう世界でトップ5に入るくらいの実績がありますし、世の中に大きな影響を与えるすごいプロダクトを作っていたりするので。そこまですごいと人は確かに集まるんでしょうね。

安田

まぁ確かに、例が極端だったかもしれませんね。日本の普通の中小企業だとそういう集め方は難しい、やっぱり愛が必要になると。


西崎

そうですね。やっぱり人間関係は大事ですから。

安田

確かに仰る通りだとは思うんですけど、でもいざ求人を出す時に、「うちは愛が深い会社です」なんて書いても伝わらないじゃないですか。


西崎

まぁそうですよね(笑)。むしろ胡散臭くなっちゃう。

安田

だから、こと求人広告について考えるなら、私はやっぱり差別化をする必要があると思うんです。で、これからの差別化は、ちょっと「歪(いびつ)」というか、「変な会社」みたいなPRをするのがいいと思っていて。


西崎

ほう、変な会社。

安田

ええ。例えば「ウチは5教科でいうと理科だけ100点の会社です。ほかは全部20点です」みたいに認めてしまう。そして求人には「だから理科が得意な人だけ応募して下さい」と書く。


西崎

ははぁ、なるほど。確かに実際、そういう手法で成功している会社が出てきているなという印象です。もちろん、その例で言う「理科は100点」の証拠というか、実績を見せる必要はあるでしょうけど。

安田

そうですよね。ブランド自体も何かしらエッジが効いている方がいい。「なんでも相談できる弁護士事務所」より「女性の離婚問題に特化した弁護士事務所」の方が人が集まる時代になってきているというか。


西崎

わかります。標準化していくと、結局角が取れて丸くなっていってしまう。

安田

トゥモローゲートさんもね、「ブラックな会社」という切り口でエッジを効かせ、それで採用に成功されたって仰ってましたよね。それと同じで、「全員にウケるビジョン」みたいなものは、もうほとんど意味をなさなくなっていくんだと思うんです。


西崎

わかります。「キレイなビジョンさえ作れば人が集まる」っていう感覚は僕にもまったくないですね。それよりも、「そのビジョンを実際に実践できているか」の方がずっと重要で。

安田

なるほど。とはいえ、実際トゥモローゲートさんではビジョンづくりの事業なんかをやっているわけですけど、結局その「キレイなビジョン」みたいなものが多くなっちゃいません?


西崎

いや、そんなことはないですね。むしろキレイでもカッコよくもない言葉になることが多いです。

安田

へぇ、そうなんですね。カッコ悪いところも見せていくと。


西崎

ええ。この間担当させていただいた会社さんは、「赤裸々なリフォーム」っていうビジョンにして。見積もりのときに原価まで全部見せちゃうっていう会社さんで、それをストレートに打ち出したんですよね。

安田

へぇ、全部さらけ出しますよ、というような。


西崎

まさに仰るとおりで、社長の裸の写真に「大事な所は、隠しません」なんてコピーを入れたり。悪徳業者のイメージもある業界だったので、全部さらけ出しますよ、と。

安田

なるほどなぁ。ちなみにそのビジョンを掲げてから、状況は変わったんですか?


西崎

ええ、2年で売上が4倍になったそうです。

安田

すごいですね!


西崎

さらに、採用に関しても、ターゲットが明確になるわけですよ。そういう会社のスタンスに共感する人、「さらけ出せる人」しかいらないので。

安田

ははぁ、なるほど。すごくいいですね。まさにそういうのがこれからの採用だと思います!

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数18万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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