
はい(笑)。今回は60代以上、「アリスタ」という職種の方からいただいております。毎週楽しく聴いています。さて、私の娘は仕事がうまくいかなくて心身症とうつ状態になり、入退院を繰り返しています。いままで大きな挫折もなく順調に進学して公務員になれたのに、つらい毎日です。一時期、安田さんもうつ状態にあったとか。もし、そのときの体験と克服法など教えてくださればありがたいです。よろしくお願いします。ということでーす。

僕はうつかどうかわかんないですけど。うつっていうのは病院で診察される病気の名前なので。僕は病院行ってないんでうつかどうかわかんないんですけど、会社がつぶれたあとに、まったく何やるにもエネルギーが湧いてこなくなっちゃったっていう時期がありました。

僕はですね、社員がたくさんいたことと、会社がつぶれそう……まあ、実際つぶれちゃったんですけど、つぶれそうだったんで、なんとか「つぶしちゃいけない」「社員を路頭に迷わせちゃいけない」「借金返さなきゃいけない」……いろんなことを抱えながらやってたときに、そのときはものすごいエネルギーが出てたんですよ。しんどかったんですよ。だけど、それは社長としての責任感みたいなものだったわけですよね。で、民事再生っていうのをやって法的に借金なくしてもらったかわりに私は社長をやめました。他の人が社長を引き継ぎ、社員とかお客さんはその新しい会社にみんなで移っていったんですね。だから、借金がなくなって事業は残ったんで、まあハッピーなわけですよ。

たしかに。

しかも、その借金つくって会社つぶした責任がある私がやめて、もうちょっとまともな人が社長になったわけです。それで実際に業績もだんだんよくなっていって、うまくいったわけですよ。いまでも元気にやられてるんです。ところが私はですね、そうなってくると、一生懸命よかれと思って「みんなのため」とか「会社のため」と思ってがんばってたのに、べつに自分がいなくなったって会社は回っていくわけですよ。

ある日突然、借金を返す必要もなくなって、社員が路頭に迷うだのなんだのっていう、それは社長の仕事なんで、社長じゃなくなったんでそんなこと考える必要もないし、まあ、責任とか、なんていうんですか、背中の荷物みたいなのがなくなって軽くなったわけですよ。で、軽くなって「これから自分の好きなことやろう」って、「ハッピーだ!」って思えるようなイメージがみなさんあると思うんですけど、実はそうはならないんですね。そこで私は、責任感で人間って仕事しちゃいけないっていうことを悟りました

結局僕はですね、『こだわり相談ツアー』っていうのをやり始めて、僕と会って相談したい人に「食事おごってくれたら相談乗るけど、どうですか?」っていう企画をやったんですよ。今でもやってますけどね。もう1回社長に戻るにあたって、はたして世の中の人たちは自分のことを必要としてくれてるのかな?っていうことを確かめたかったんですよ。

で、実はそこにいっぱい人が来てくれまして。ぜんぜん仕事にはつながらなかったんですけど、そこで結構まじめに、経営者さんも来れば、ニートさんもいれば、うつの人とか、それこそいろんな人が来て、とにかく一緒にご飯食べてる間になんとか全力でその人の役に立とうっていうことをやってたんですね。そしたら、だんだんだんだんと元気になってきまして。で、そこで気づいたんですよ。つまり、人間っていうのは誰かに必要とされることによってエネルギーが出るんだと。

いちばん簡単な方法は、家族でも友達でも赤の他人でもいいんですけど、目の前にいる人、すれ違った人でもいいし、とにかく何かしらのお困りごとがある人に、とにかく親切にすると。べつに「重い物を持ってあげる」とかでもいいんですよ。

ね。で、この方ね、こう書いてあるじゃないですか、「仕事がうまくいかなくてうつ状態になった。入退院をくりかえしてる」と。「その前にいままで大きな挫折もなく、順調に進学して公務員もなれたのに」っていう一文がすごい気になるんですよ。

なんていうんですかねえ、挫折がない人生なんてあり得ないし、たとえば「順調に進学」ってことは「希望した学校に行けた」とか「浪人してない」っていうことだと思うんですけど、この方は、それがいいことで、反対の「志望校に受からない」とか「浪人する」とか、挫折がよくないことだっていうふうに、たぶん思ってるんですよね。それがすごい“いびつ”に感じます、僕には。

「いままで順調に来たのに、なんでおまえこうなの」っていうのが、僕は最初からずっとそうだったんだと思うんですよ。こうやってうつになっちゃって「おかしい」ってこの方は思ってるんでしょうけど、本人はたぶん「ずっと順調だった」なんて思ってないんじゃないのかなって気がしますけどね。

本当に何ひとつ不満がなさそうな方が、仕事もうまくいって、お金もあって、モテモテなのに、自殺しちゃう人とかいるじゃないですか。そういう世の中的に「かっこいい」とか「美人だ」とか「金がある」とか「仕事がある」っていうのとは本質的に別ですよね。

そう思いますし、その方自身がどう思ってるかは、この方が聞いてないからわかんないですけど、「おまえは順調なんだよ」っていうふうに思われてるとしたら、なかなかそれもつらいんじゃないの?って思いますけどね。

たとえば甲子園目指してて、1回戦で負けて「あの犠牲にした時間は何だったんだ?」とかいったって、それ自体が人生って楽しいわけじゃないですか。僕も会社つぶしてますけど、それも含めて人生なわけですよ。
*本ぺージは、2020年9月23日、ポッドキャスト「安田佳生のゲリラマーケティング」において配信された内容です。音声はこちらから
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