原因はいつも後付け 第5回「他の事業は儲かりそう」という誘惑

// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第五回》「他の事業は儲かりそう」という誘惑

「ちょっと本業が厳しいんで、他の事業もやってみようと思うんです。」
ここ2年ほどで、数人のオーナーから同じ相談を受けました。

飲食店を軌道に乗せるのは簡単じゃありません。
軌道に乗るまでは、なかなか先も見えず不安になってしまうもの。

そんな時に、ふと頭をよぎるのが「他の事業」という選択。

飲食店は数年で9割が廃業すると言われる厳しい業界。
だから、本業が軌道に乗るまでは、他の事業もやって稼ぎを増やしたい、という訳です。

もしかしたら、今これを読んでいただいている方の中に、同じ事を考えている方もいらっしゃるかも知れません。

他の事業、皆さんならやりますか?

続けるリスクと分散するリスク

 

私が1号店を開業して10ヶ月が経った頃。

週末はちょっとお客さんが来てくれるようにはなったものの、平日はほとんどお客さんが来ないという状態で、お店は相変わらずの赤字続き。

このままではまずいと考えていた時、お店でこんな話が出ました。
「空いてる時間で何か他のことやった方が良いんじゃない?」

まさに冒頭にあったオーナーたちと同じアイデア。
理由も全く同じでした。他の事業もやった方が儲かりそうだから。

「お昼も営業したらもっと稼げるんじゃないか?」
「お昼を別業態の人に貸し出したらどうか?」
「飲食とは全く関係ない事業に進出してみたらどうか?」

アイデアはどんどん出てきました。

赤字が続くお店と、今よりも儲かりそうに思える新規事業。
どう考えても何か新しい事をやった方が良さそうに思えてくるのです。

10ヶ月やっても儲からない事業を続けたところで、成功できる保証はありません。
かと言って、他の事業も始めたら、ただでさえ少ない経営資源を分散させることになり、お店を軌道に乗せるという目標も遠ざかることになってしまう訳です。

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