第152回 大手の戦い方、個人の戦い方

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

私は2号店を出店する際、1号店とは大きく異なるモデルに挑戦しました。
それが、食事の品数を大幅に減らしたドリンク中心のお店作りであり、当時の私からすればこのモデルが上手くいけば儲けを一気に増やせる見込みでした。

でも残念ながらこの挑戦は上手くいかず、わずか数ヶ月でこのモデルを諦めざるを得なくなってしまいました。

そんな現実を目の当たりにした時、こう感じたのです。
「やっぱり品数は多い方が良いんだな」と。

ただ、そんな経験から20年近くが経った今、当時を振り返ってみると「あながち間違った挑戦ではなかったんじゃないか」と思えてくるのです。


「品数は多い方が良い」という当時の学び。
確かに品数が多ければ、お客さんからお店を選んでもらえる可能性も高くなりそうですし、お店へ行った際に商品を選ぶ楽しさも増えそうです。

でも実際に品数を増やしていってみると、今度は新しい問題が出てくるようになったのです。その問題というのが「品数では大手チェーンに勝ちようがない」という事実。

当然ですが、店内に材料を保存しておけるスペースはお店の大きなチェーン店が圧倒的に有利であり、「品数は多い方が良い」とするならば、それは自ら大手チェーンの勝ちを認めていることになってしまう訳です。

つまり「品数で集客する」というのは当時の大手の戦い方であり、小さなお店で商売をする私のような小規模経営が集客をするためには別の戦い方が必要だったということ。

その戦い方こそが、2号店を出店する際に私が選んだ「商品を絞る」という選択であり、商品を広げるのではなく絞るからこそ、その一品一品にこだわることができ、自分のお店ならではの強い商品が作れるのだと思うのです。

じゃあ、なぜ私の2号店は商品を絞ったにも関わらず、上手くいかなかったのか?

その答えは冒頭に書いた通り。
私の2号店の取り組みは、1号店のメニューから「商品を減らした」だけであって、正確に言うなら「商品を絞った」と言える商品構成ではなかったからです。私がもし、自信を持って絞り込んだと言える商売をしていたら、すぐに諦めることなく目の前にある商品の改善に力を注げていたはずです。

そう考えるのであれば、私たち小規模経営が採るべき選択は、安易に品数を増やすという大手が有利な選択ではなく、自分がこだわりたい商品を明確に絞り込み、その商品を掘り下げ続けることによって強い商品を手に入れるという選択なのではないでしょうか。

「自分のお店は大手が有利な戦い方で商売をしているのではないかと考えてみる」

私が2号店での失敗から得た気づきが、これを読んでくれた方の商品構成を見直すきっかけになれば嬉しいです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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