原因はいつも後付け 第23回 「想定しているお客さんとは誰なのか?」

// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第23回》想定しているお客さんとは誰なのか?

「お客さんが興味を持ってくれる看板を考えなければ。」
店舗を経営するオーナーの方で、この悩みを持った経験のある方は多いと思います。

全てのお店に共通して集客効果のある内容があるなら、それを書くに越した事はありません。ただ実際には、お店の持つ特徴がそれぞれ違う以上、どのお店にも共通して効果がある内容などない訳です。

ただ実は私、看板に何を書くかを考えるよりも先に考えておくべき事があるような気がするのです。

それが、冒頭に挙げた「お客さん」とは誰なのか?ということ。


「地域最安値を打ち出して集客をする。」
この連載でも書いてきた通り、創業当時の私のお店の売りは価格の安さでした。
当然、お店の看板にも価格が安いことを大きく打ち出し、お客さんの来店を期待していた訳です。

でもこの時、私はある見落としをしていることに全く気づいていなかったのです。
それが、「自分だったら、この看板を見てお店に入るのか?」という視点。

一見、当たり前のように思えるこの「自分だったら」という視点。
自分で考えているんだから「自分だったら」という視点が入っていて当然と思うかも知れません。

ただ、今から振り返って考えてみると、当時の私には不思議と、この「自分だったら」という視点が抜け落ちていたのです。

当時の私が本来お店の売りにしたかったのは、お店で過ごす非日常の時間。
にも関わらず、いざ看板を作る段階になると、お客さんは価格の安さを求めていると勝手に決めつけて低価格を打ち出した看板を作ってしまったのです。

つまり「自分がお客さんだったら全く響かない看板」を自分で作っていた訳です。

自分が全く響かない看板を作ったらどうなるのか?
それは、私が開業してしばらくの間、赤字続きの状態だった事実を考えれば明らか。

「自分がお客さんだったら」という視点で商売を考えることの大切さ。
これは何も、店舗ビジネスだけに限った話ではないと思います。

「自分だったら、このウェブサイトで商品を購入するのか?」
「自分だったら、この商品説明と価格で心が動くのか?」

集客にせよ商品にせよ、まずは「自分がお客さんだったら、これで心が動くのか」という視点で考えること。

自分の心は動かないのに、お客さんの心は動かせると思ってしまうのは、お店側の勝手な思い込みに嵌っている証なのではないでしょうか?

「この看板を見て、自分だったら心が動くのか?」

考えた本人である自分の心が動かないものが、他人の心を動かすことなどなく、逆に自分がお客さんだったら間違いなく心が動くと思えるものだけが、お客さんの心をも動かせるのだと思います。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計28店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。

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