第143回 お客さんの言葉が教えてくれること

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

起業してから7〜8年が経った頃だったと思います。
私がお店で働いていると、初めて来店されたお客さんがこんな言葉を口にしたのです。

「こんなお店があったんだ」と。

当時、私が働いていたお店はオープンからすでに5年くらいが経っていた一方で、話を聞いてみると、そのお客さんもまた5年以上前からその地域に住んでいたそうです。

つまり私のお店は5年間、そのお客さんにとって存在していないも同然だった訳です。
そんな事実を目の当たりにした時、率直にこう感じたのをよく覚えています。

「俺ってかなり集客、頑張っているはずなんだけどな」と。


「こんなお店があったんだ」という言葉。

店舗商売を経営している方であれば、お店で働いている時にこんな言葉を聞いた事のある方は多いのではないでしょうか?

私自身、冒頭に挙げたお客さんだけでなく、その後も何度かお客さんがこの言葉を口にしているのを聞いた事があります。

そんな経験から10年以上が経った今も、私はお店の集客方法を飽きずに考えています。
そして、集客を考えれば考えるほど実感するのは、やはり「自分の商売を認知してもらうことは簡単ではない」ということ。

恐らくこれは店舗商売に限った話ではないでしょう。
どんな商売であれ、少なからず似たような商売があり、そんな似たような商売の情報が溢れている中でお客さんに自分の商売を認知してもらうのは簡単ではありません。

ただ、見方を変えて考えるならば、認知してもらうのは簡単ではないからこそまだ打てる手が沢山あると言えるし、簡単ではないからこそ少し試したくらいで諦めてしまうのはもったいないと思うのです。

「こんなお店があったんだ」という言葉。

こうした言葉は素直に嬉しい反面、お客さんがお店の存在を知り、喜んでくれているという事実から考えると、「どうすればもっと早くお客さんに知ってもらうことができたのだろう」という力不足も痛感させられるような気持ちになるのと同時に、「まだまだお店を好きになってくれる人は沢山いるよ」とお客さんから教えられている言葉のようにも思えるのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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