// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 // |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
《第24回》仕組みよりも大切にしたいこと
「お店の経営を安定させるために欠かせないものは何か?」
店舗オーナーの皆さんだったら、この問いに対してなんと答えるでしょう。
この問いに対する私の回答、それは「リピーターさんの存在」。
新規のお客さんを集客するには時間とお金というコストが不可欠なのに対し、リピーターさんはコストが殆どかからないにも関わらず、定期的にお店にお金を支払ってくれる、とてもありがたい存在。
だからこそ、どのお店もリピーターの獲得に頭を悩ませ、SNSやクーポン、アプリなどの仕組みを作ってリピーターを囲い込もうとする訳です。
ただ、私は思うんです。
仕組みよりも、もっと大切にしなければいけない事を忘れているお店が多いのではないか、と。
「仕組みよりも大切にしなければいけないこと」とは何なのか?
それは、リピーターさんへの感謝の気持ち。
「おいおい、そんな当たり前の話やめてくれよ。」
なんていう声も聞こえてきそうですが、この当たり前が本当にできているのか?
ここが大事だと思うのです。
今までよく来てくれていたお客さんが、ぱったり来なくなった。
私がカウンターに立って接客をしていた頃、こんな経験を何度かしてきました。
その時はあまり深くは考えていませんでしたが、今思えばまさに「リピーターさんへの感謝の気持ち」が足りていなかったのではないかと思うのです。
そこにあったのは「感謝の気持ち」ではなく、「また次も来てくれるだろう」という慢心。
本当に感謝の気持ちがあると言うのなら、リピーターさんが初めてお店に来てくれた時と同じような緊張感をもって接客できていたはず。
本当に感謝の気持ちがあると言うのなら、また次回もお店に来るのが楽しみになるような商品開発に力を入れていたはず。
お店を使ってくれることの有り難さを忘れ、また次回もお店を使ってくれることが当たり前だと勝手に思ってしまうこと。感謝の気持ちを忘れ、メルマガやクーポンの内容ばかりを考えてリピートしてもらおうとしてしまうこと。
これがリピーターさんが増えてきた頃の私の慢心。
リピーターの方に「今日も来て良かった」と思ってもらえる努力ができているか?
感謝の気持ちよりも仕組みでリピーターを増やそうとしていないか?
こういった事を忘れ、リピーターの存在を「数字」として読み始めた時、そこに感謝の気持ちはなくなり、同時にリピーターさんとの別れの時が近づいてくるのだと思います。
そして、お店の慢心を感じた時、そのリピーターさんは無言でお店に来なくなるのです。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計28店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。