原因はいつも後付け 第51回 「繁盛店に見る商売の優先順位」

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原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第51回》繁盛店に見る商売の優先順位

私には月に2〜3回、食事をしに行くお気に入りのレストランがあります。
そのレストランは個人経営のお店で、オーナー自らが必ず厨房に立って、毎回こだわりの料理を出してくれます。

料理に対して強いこだわりを感じるお店。
店内の雰囲気や内装にこだわりを感じるお店。
本格的なカクテルを作ることにこだわるお店。

お店によってこだわるポイントは様々であっても、そんなオーナーのこだわりを感じられるからこそ行きたくなる個人経営のお店。

皆さんにもそんなお気に入りのお店って、あるんじゃないでしょうか?


私が食事をしに行く個人経営のレストラン。
そのお店を客観的に見た時、そのお店は必ずしもバランスの良いお店とは言えないような気がします。バランスの取れた大手チェーン店と比較すれば、足りない点は恐らくいくつも挙げられるでしょう。ただ、ここで私たち店舗を経営する側の人間が意識すべきなのは、

「なぜバランスが良いとは言えないお店に行きたくなるのか?」ということ。
私は、この疑問に対する答えに繁盛するお店のポイントがあるような気がするのです。

バランスが良いとは言えないにも関わらず、なぜそのお店に行きたいのか?

この疑問に対する私の答え。
それは、オーナーの料理の味にこだわる姿勢に惹かれるから。
そして、そんなこだわりを追求するオーナーを応援したいから。

つまり、自分の強みを磨いてお客さんに喜んでもらおうとする姿勢に共感して「応援したい」のです。

「応援したい」と思ってくれるお客さんがいること。
これは、商売が上手くいってるお店に共通する事なのではないでしょうか?

自分の強みを磨いてお客さんに喜んでもらうために力を注ぐ。
お客さんに喜んでもらおうと努力するからこそ、お客さんが応援してくれる。
そして、応援してくれるお客さんが増えるから商売がうまくいく。

お店を経営する上で、儲けを欠かすことはできません。
これは私も店舗商売をしているので、よく分かります。

ただ、商売をする上で大事なのは、自分が儲けようと考えるよりも先に、お客さんに喜んでもらおうと思えるかどうかではないでしょうか?

今から思えば、20年近くも前に私が作成した事業計画書では、自分の見込み収入は綿密に計算されていた一方、お客さんに提供する価値についてはあまり触れていなかった気がします。

つまり、私は商売の優先順位を間違えていたと言うこと。

綺麗ごとに思えるかも知れませんが、繁盛しているお店のオーナーはお客さんに喜んでもらおうと自らのこだわりを追求する努力をするからこそ、その姿勢にファンが付いているのであり、逆に考えるのであれば、開業時の私のように自分の稼ぎを増やそうと努力する姿勢にファンが付くことなんてないのでしょう。

自分が優先したいのは、お客さんの喜びなのか、自分の稼ぎなのか。

この順位はオーナーによって異なるかも知れません。
ただ、私自身のこれまでの経験から考えるのであれば、この順位こそがファンが付くお店になるか、付かないお店になるかを分ける重要な要素であり、この順位を間違えている限り、そのお店にファンが増えることもなければ、稼ぎが増えることもないのだと思います。


「お客さんの喜び」と「自分の稼ぎ」。
この優先順位がお店の明暗を分けていると言っても過言ではないと思うのです。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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