原因はいつも後付け 第67回「コロナ禍の一年で得たもの」

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第67回》コロナ禍の一年で得たもの

2020年のコラムは今回が最後。
今年も私の連載を読んでいただいた皆さま、ありがとうございました。

さて、今回は一年の最後ということで、「ふりかえり分析家」らしく、今年一年を振り返って、私が強く意識したことについて考えてみたいと思います。

私が今年一番強く意識したこと。
それが「視点の持ち方」だったように感じます。

《失った営業時間》

私の商売にとって今年一番の大きな出来事。
それは当然、新型コロナの拡大。
そして、その拡大を原因とした休業要請や時短要請です。

ニュースなどで飲食店オーナーが厳しい経営状況を訴えるシーンを多くの人が目にしたのではないでしょうか。

この状況は私も全く同じでした。
全店舗の休業を決定した際の、何とも言いようのない不安を未だによく覚えています。
ただ、不安があったのも事実ですが、同時にこう考えたのも事実なのです。

「営業する時間がない」ということは、「営業していない時間がある」ということだ、と。

「なんてひねくれたヤツだ」と感じる方もいらっしゃるかも知れません、笑。
でも私、思うのです。商売をする上では、この「ない」という状態を、視点を変えて「ある」と考える思考というのは、とても重要なのではないかと。

なぜなら、「ない」ものに意識を向けても、そこからは何も解決策は生まれないから。

「営業する機会を奪われた」と捉えた時、そこから前向きなアイデアは出てきません。
だから、この事実を視点を変えて「新しいことにチャレンジする時間が増えた」と捉えてみる。「ない」という事実を逆から見て「ある」に変えることで、初めて前向きなアイデアが出てくるようになると思うのです。

《視点を変える》

今回のコロナ禍だけに限らず、商売をしていると私たちは、つい「ない」ものばかりに意識が向きがちな気がします。
「立地が悪い」、「お金がない」、「知名度がない」。

自身の経験を振り返って考えてみると、特に小規模経営においては、この「ない」という状態を感じる機会が多いように思います。でも、そんな「ない」が多い状況だからこそ、視点を変えることで得られる価値も大きいのではないでしょうか。

「立地が悪い」ならば「見つけたときの喜びがある」。
「外注するお金がない」ならば「手作り感がある」。
「知名度がない」ならば「チェーンでは出せない強みがある」。

視点の持ち方次第で、「ない」は「ある」になるということ。

私たちは今年のコロナ禍で、多くのものが「ない」という状況に追い込まれました。
そして、2021年が今年と比べてどうなるのか、私には分かりません。

でもそんな、なかなか先行きの見通しを持ちづらい状況だからこそ、「視点の持ち方」を意識することが重要であり、物事を「ある」から捉えることができている限り、私たちに困難を乗り越えるアイデアが尽きることはない、と強く感じた一年なのです。

2020年、最後のコラムも読んでいただきありがとうございました。
2021年も引き続きどうぞよろしくお願い致します。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから