第167回 店名よりも伝えたいこと

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

私も講師を務めることになっている、小さなビジネス開業スクールのBFS

先日、その内容のリニューアルを考えていた時に、ふと私自身が開業した時にやってしまっていた初歩的な失敗を思い出したので、今回はその失敗について書いてみようと思います。

これから実店舗を構えて商売をしようと考えている方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。


実店舗を構えて商売をする時に、多くのお店が活用するであろう集客ツール。
それが「店前看板」。

大手チェーン店ほど大きな看板は出せないものの、お店の前に出す看板は通りを歩く人たちに自店舗の存在を知ってもらうための重要なツール。そこで当時の私が自店舗の存在をアピールするためにやってしまった失敗。

それが、看板の一番目立つ場所に「店名」を書いてしまったこと。

今から振り返って考えると、お店の名前を考えるのは開業オーナーの醍醐味の一つですし、そんな思い入れのあった店名だからこそ、一番目立つ場所に書きたくなってしまったのだと思います。もしかしたら、これから店舗商売をやろうと考えている方で、当時の私と同じように考えている方もいらっしゃるかも知れません。

ただ、これまで20年店舗商売をやってきて分かったのは、通りを歩く人たちにとって重要なのは、お店を使うことで「どんな体験ができるのか」という価値であり、聞いたこともない店名をいくら目立たせたところで、価値の伝わらない看板では集客できないということ。

まずは通りを歩く人たちにとってどんな体験が提供できるのかを知ってもらい、お店を使ってもらうことに集中する。お客さんは店名を知ったからお店に来てくれるのではなく、お店を使ってみて気に入ったら店名を覚えてくれるようになる、ということ。

これが今の私が考える店前看板の役割であり、なかなか大きな看板を出すことが難しいお店だからこそ、その限られたスペースを店名のアピールばかりに使ってしまうのは、あまりに勿体ないのではないか、と当時の看板を考えていた自分に伝えたいのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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