第211回 居心地の悪い店

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

お店を開業してしばらくの間、私はある事に悩んでいました。
それが「せっかくお客さんが来店しても、お店がガラガラだから居心地悪くてすぐに帰ってしまう」ということ。
そして、すぐに帰られてしまうから、次のお客さんが来た時もガラガラでまたすぐに帰られてしまうという悪循環。

「もっと他のお客さんが入っていればお店の居心地も良くなるのに」
当時は本気でそう思っていたのですが、今から振り返って考えると、この現状の捉え方こそが繁盛しない原因の一つだったと思うのです。


「お店がガラガラだからお客さんの居心地が悪い」
こう捉えてしまっていた当時の私が気づいていなかったこと。

それは「お店がガラガラだからこそ出来ることがもっとあった」という視点。

今お店に来てくれているお客さんに興味を持ち、お客さんに対して何が出来るかを考えたり、お客さんがリピートしてくれた時に喜んでもらえるような商品を考えたり。

つまり、私は自分にまだまだ出来ることがあったにも関わらず、それを考えようとせずにお店の状況が変わることばかりを期待していた訳です。

居心地が悪いのはお店がガラガラだから。
こうした思考になってしまうのは当時の私だけではないでしょう。

でも、本当にお客さんのことを考えていたのであれば、他のお客さんがいないという事実よりも目を向けるべきところがあったはずですし、むしろ今お店に来てくれているお客さんの事を考えていなかったからこそ、ガラガラの店内状況ばかりに目が向いていたのだと思うのです。

事実、お店が繁盛するようになった頃には、たまにお店が空いている時間があったとしても、その状況など気にすることもなくお客さんと接することが出来ていましたし、お客さんも空いている時間帯に来れたことを喜んでくれているようでした。

こうした経験を振り返って今思うのは、お客さんの居心地が悪かったのはガラガラだからではなく、自分が今お客さんに何が出来るのかを考えていなかったからであり、そう考えれば、お客さんがすぐに帰ってしまっていたのは環境のせいではなく、自分のせいだったと言えるのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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