第102回 「開業→告知」では遅すぎる

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

 

前回のコラムで「お客さんにお店を認知してもらうことの重要性」を理解した、開業したての辻本くん。今回は、お客さんに認知してもらうための活動に苦戦中の様子。

お店の認知度を上げ、早く集客が増えるようチラシ配りをしているものの、労力の割に反響も弱く、もっと良い手がないものかと悩んでいるようです。

今回の彼に対して、今の辻本は何を思うのでしょうか?


「お店の集客が思うようにいかない。」
あくまで私の感覚ですが、実際に店舗の開業を手伝ってきた経験からすると、商売を始めて一番多い悩みは、この集客だと感じます。

なぜ、小規模経営のお店の多くが、開業時に集客で頭を悩ませるのか?
私が考えるその原因はとてもシンプルで、広告費にかけられるお金が大手チェーンと比べれば圧倒的に少ないからでしょう。

じゃあ、お金がないならどうすれば良いのかと考えたときの私なりの答え。
それが、「お金」の代わりに「時間」を使うということ。

集客をすぐに得るための広告にお金を投資できない以上、お店を認知してもらうための告知にコツコツと時間を投資することによって、成果に近づいていくということです。

ただ、そんな事を開業当時の彼に言ったら、恐らくこんな返事が返ってくると思います。
「そんな悠長なことやってたら、お店が持たないだろ!」と。

確かに開業した後は、売上に関わらず固定費はかかり続けるため、なるべく早く成果を手にしたくなる気持ちは分かります。でも、だからこそ私は提案したいのです。

「開業→告知」の順序を見直してみませんか?と。

多くのオーナーは、お店の開業準備がある程度終わってから、お店の告知方法を検討し始めます。ただ、小規模の商売はお店を認知してもらうまでにある程度の時間が必要である以上、お店のオープン直前になってから急いで告知を始めたのでは遅すぎるという事です。

告知の手段や内容は個々のお店が置かれている状況によって変える必要があるため、一概に「これが正解」と言うことはできないでしょう。ただ、どんな手段であれ、そのタイミングを「開業→告知」ではなく、「告知→開業」とすることで、開業後の集客という成果を早めることができるようになるのです。

お店の認知に時間が必要なのであれば、開業後にその時間を短縮しようとするのではなく、開業前から告知に力を入れることで、お店が認知されるまでの時間を早めるということ。

今回の辻本くんは開業した後に告知を始めたため、軌道に乗るまで厳しい経営を続ける結果となりましたが、もし彼が開業前から告知に力を入れるという選択に気づいていれば、遥かに順調なスタートが出来たのではないかと、今から振り返って思うのです。

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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