第185回 商売の運

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

私には、以前から気になっていたことがあります。
それが何かというと、商売で成功者と言われている人ほど、「運が良かった」という言葉を使う印象がある、ということ。

確かに商売をしている中で、運を感じることは私にもあります。
でも、成功したと言われる人たちが本当に運が良かったから成功したのかと考えてみると、私にはそうは思えないのです。


もちろん、私は「運が良かった」と言う人たちが嘘を言っているとは思いません。

じゃあ、なぜ私はこの言葉に違和感を感じるのかと考えてみると、商売には確かに運が少なからず影響を与えていると感じる一方で、運という言葉が辞書通り、「幸・不幸を支配する、人間の意志を超越したはたらき」であるとするならば、成功者と言われる人は「良い運」を多く引いたといえる事になり、そんなに「運の良さ」が一定の人にかたよるのは不自然な気がするからです。

そこで、私は思うのです。
商売で成功している人というのは「運が良かった」というよりも、「運が良いと感じる判断基準」が他の人とは異なっているからではないか、と。

他人にとってはピンチと捉えられることも、その人にとってはチャンスと捉えられる思考になっており、他人とは判断の基準が違うから運が良かったと思えているような気がするのです。

そして、他人とは異なる捉え方をするから次の行動も変わり、他とは違う行動をするから他とは違う成果を手にすることができるのではないでしょうか。

そう考えるのであれば、確かに短期で見れば多少の運のかたよりはあったとしても、それよりも商売の成果を分けているものは、目の前に起きている出来事がピンチなのかチャンスなのかという捉え方の違いであり、その捉え方の違いが長期に積み重なった結果として大きな成果の違いとなっているということ。

私たちは想定外の出来事に直面した時、どうしても「なんでこのタイミングで…」や「なんで自分のお店ばかりが…」といった「運が悪い」視点で捉えがちですが、その出来事の捉え方を疑い、その出来事が生み出した変化からチャンスの部分を見つけようとする思考こそが商売の流れを変えるきっかけであり、成功した人が口にする「運が良かった」を言葉通りに受け取って「自分には運がない」と思っている限り、その商売の運が良くなることはないのだろう、と思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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