第207回 マニュアルの捉え方

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

先日、大手チェーンの新業態が最寄り駅にできたと聞いたので、興味もあり家族で行ってみることにしました。

その日は土曜日で駅の近くで大きなイベントもあった影響か、店内はほぼ満席だったものの予約をしていたこともあり無事お店に入ることができたのですが、そのお店で改めて考えさせられる出来事に遭遇したのです。


混雑している店内に活気のある若いスタッフさんたち。

そんな風景の中にただ1人、私よりはるかに高齢の男性スタッフ(店長ではない)がホールで仕事をしており、その方が何度か商品をテーブルに運んできてくれたのですが、その際の接客する姿勢が接客業をしている私自身も驚いてしまうほど心地のよいものだったのです。

その方は、私たち家族のテーブルでの挙動を見て初めての来店と判断したのか、
「この料理は実はこうやって食べると美味しい」
「この料理は値段が高めだけど、こうした価値がある」
「この料理は今日売り切れちゃったけど、似たような料理ならこれもオススメです」

と満席で忙しいはずにも関わらず、初めて来た私たちにお店の商品をとても楽しそうに説明してくれたのです。

もちろん、他のお店のスタッフさんたちも笑顔で注文を聞いてくれましたし、商品の提供が雑だったりした訳ではありません。じゃあ、この高齢の男性スタッフさんだけに感じた心地よさの原因は何なのだろうと私なりに考えてみたその答え。

それが「マニュアルの捉え方」ではないかと思うのです。

大手チェーンが運営元のお店なので、当然接客する上でのマニュアルは用意されているでしょう。働くスタッフさんたちが皆、ある一定レベルでの接客や商品提供をできているのはマニュアルのおかげと言えるのかも知れません。

ただ、そんなマニュアルも、「マニュアル通りに仕事をやることがゴール」と捉えているのか、「マニュアル通りに仕事をやることがスタート」と捉えているのかで、両者の仕事ぶりには少しずつの違いが生まれていき、その違いが積み重なってお店の業績にも違いが生まれていくような気がするのです。

「同じマニュアルを読んでいるはずなのに業績が異なる」
こうした現象が起きるのは、飲食店だけではないでしょう。

この現象が起きる原因こそが個々人におけるマニュアルの捉え方の違いであり、マニュアルをゴールではなくスタート地点として捉え、そこに自分なりの創意工夫を加えるから仕事も楽しくなるし、創意工夫をするからお客さんもより心地よさを感じることができるのではないでしょうか。

仕事のマニュアルをどう捉えるか。

偶然の出会いではありましたが、この男性スタッフさんにはそんな仕事における大事な姿勢を教えてもらった気がするのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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