その84 人気者

ラップをご存知でしょうか。
中高年にイジらせると「チェケラッチョ」といわれてしまうやつです。

「ラップをやるのは
クラスで目立っている奴や人気者じゃなきゃおかしなことになる」

何年か前の話になりますが、
ある商業的に成功した日本のラッパー(ミュージシャン)を
プロデュースした人が、こんなことをいっていました。
自分はラップ音楽自体はほとんど知らないのですが、
なんとなくその意図は理解できる気がします。

本場アメリカではまた別かもしれませんが、
日本の街中で突然ラップをやりはじめた人がいたとしたら
まず間違いなく
「なにやってんだこいつ……」
という空気を作り出してしまうでしょう。
ラップというのは若者には世界共通で人気の音楽ジャンルではありますが、
日本社会からみれば
直輸入したものを自動翻訳にかけたような、
木に竹を継いだような奇異な文化に過ぎません。

そんな、元々ちょっと社会の認知からズレているパフォーマンスをして
「カッコイイ」ことを成立させるには、
それを受け入れて支える「聴衆」が必要なのです。
ラップも音楽なので上手い下手に価値があるようなのですが、
かりに高校のクラスの陰キャが
こっそり猛練習したすごいラップを披露しても誰も喜びません。
だからこそクラスカーストの上にいる、
(なにをやってもウケることが約束されている)人気者がやることが
成功の前提なのだ、ということなのです。

一般のビジネスの世界でも
人気者であることは成功するための重要な役割となるでしょう。

以前、わたくしの住処の近所に本格的な店構えのラーメン専門店がありました。
現代的な設備、清潔感のある店内、
シンプルではあるがそれが選び抜かれた結果であろうメニュー、
なによりどれだけの食べ歩きと試食を繰り返したのか、
と思いを馳せずにいられない店主の突き出た腹からして
歴戦の勇者であることは疑いありませんでした。

しかし、以前、と申し上げた通り、そのお店は今はありません。
飲食店ですから、成功にも失敗にもいろいろな背景があったのでしょうが、
店主の性格に若干強めのクセがあったことが
その理由の主要な一つであったように思われるのです。

個人店ですと多少荒々しい性格であっても
熱心なファンをつけることがあり得るようですが、
その店主は大変おとなしい方でした。
しかしなぜか子供が嫌いな方だったようで、
ファミリー層を取り込む必要がある町であるにもかかわらず
子供連れに半ギレした姿を見ることがありました。

それが自分に向けられることはないにしても
ちょっとどうかな…という雰囲気がありました。

現在は同じ場所で別の人が居抜きで違うラーメン店を年単位で経営しており、
もしも、彼自身が来店動機になるような性格の持ち主であったら
また結果も変わったのではないか、と思うのです。

あと、味も正直イマイチだったかな……
 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

リーマン20年のキャリアを3ヶ月分に集約し、フツーだけど濃度はまあまあすごいエッセンスをご提供するカリキュラム、「グッドゴーイング」を制作中です。

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