第236回 商品を増やさないメリット

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

「小規模で商売をするならば商品を増やしすぎてはいけない」
商売をやっている方であれば、一度はこんな言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか?

商品を増やしすぎると、お店の強みや売りが分かりづらなくなる。そして、強みが分かりづらくなってしまった結果、集客に苦労することになる、という訳です。

私自身、起業した時はこうした言葉を知らず、商品を増やしすぎて売れないお店になってしまった経験があるため、とても納得するところではあるのですが、今から振り返って考えると、商品を増やしすぎないメリットというものは、もう一つあるように感じるのです。


私が感じる商品を増やしすぎないメリット。
それは自分が本当に売りたい商品だけに絞ってエネルギーを注げるということ。

開業する時、私が本当に売りたかった商品はウイスキーでした。

ただ、当時はウイスキーが今ほど多くの方には飲まれていなかったこともあり、集客に不安を感じた私は焼酎、ワイン、カクテル、日本酒とそれぞれのお酒を何種類も用意することで色々な嗜好のお客さんに来てもらおうと考えたのです。

その結果、仕入れるお酒を選ぶことや、メニューの入れ替えなどに追われ、気がつけば本来売りたかったウイスキーに魅力を感じてもらうための取り組みに時間とエネルギーを使えなくなっていました。

つまり、冒頭に書いた通り、商品が増えすぎると「強みが分かりづらくなる」という問題点に加え、「強みを出したかった商品にエネルギーを注げなくなってしまう」ということ。

そんな失敗から私は商品を絞り、そこから生まれた時間とエネルギーをウイスキー専用メニューの作成や、直営店舗スタッフ全員でのウイスキー工場見学などにあてた結果、強みの明確なお店になることができたと感じています。

使える経営資源が少ない時ほど商品の幅を広げたくなってしまうものかも知れませんが、そんな限られた資源だからこそ、私たちは商品を絞り、絞った部分を掘り下げることに時間とエネルギーを注ぐ必要があるのだと、自らの失敗を振り返って思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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