第120回「飲食業は儲からない」という言葉の違和感

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

「飲食業は儲からない」という言葉をネットでたまに目にします。
確かにこの商売を20年やってきて「儲けるのが簡単だ」と感じた記憶はないので、この言葉は間違ってはいないのかも知れません。

ただ一方では、同時にこうも思うのです。
「果たして確実に儲かるといえる商売なんてあるんだろうか」と。


「確実に儲かる商売」
そんなものがもしあるならば、私も是非やってみたいところです。

でも冷静に考えれば、そんなものは存在しないことが分かります。
なぜなら確実に儲かりそうなところには多くの人が集まり、そこに競争が生まれた結果、たちまち儲けに差が生まれていってしまうからです。

つまり「飲食業は儲からない」という言葉は間違いではないけれど、「○○業なら確実に儲かる」といえる正解もないということ。どの業界であっても、その中には儲かる商売と儲からない商売が存在しているのであり、業界の選択自体が儲けの原因とはならない、ということです。

じゃあ、「儲かる」「儲からない」の違いを生んでいる原因とは、どこにあるのか?

私が思う、その答え。
それが、自分が選択した商売で儲かるようになるまでモデルを考え続けることができる「商売の深さ」だと思うのです。

私の考えが正しいかどうかは分かりません。
ただ、私が知る限りで言うならば、儲かっている商売のオーナーは決して自分の商売を他人の儲かり具合を見て決めている訳ではなく、自分がやりたいと思える商売に没頭し、改善を続けた結果、儲かっているように見えるのです。

そう考えるのであれば、やはり儲けとは商売の「選択自体」にあるのではなく、選択した商売でどれだけ儲かるまでモデルを深堀りできるかという「深さ」にこそあるのではないでしょうか。

「飲食業は儲からない」という言葉の違和感。

その正体は、この言葉を発している時点でそれは「商売の選択自体」で儲けが決まると考えている証であり、その思考をしている限りどんな商売であろうと深堀りすることはできず、「商売の深さ」という視点の欠如こそが「何業をやっても儲からない」という結果を招く原因であるような気がしてならない、ということなのです。

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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