第142回 変わりゆく顧客と商品

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

毎週書いているこのコラム、「原因はいつも後付け」。
私自身が店舗経営を通じて得てきた様々な結果を振り返り、その結果を生み出した原因を考えて発信することで皆さんの経営の参考にしてもらいたい、というのがこのコラムの趣旨です。

そんな趣旨もあり、このコラムを書き始めてから過去を振り返る機会も増えた訳ですが、改めて自身の1号店を振り返り、最近出店したお店と比べてみると、つくづく感じるのです。

「いつの間にか顧客層も商品も大きく変わったものだ」と。


大きく変わった顧客と商品。
こんな風に書くと、もしかしたら私がどこかのタイミングで商売のモデルを変更するために大きな改善をしたと思われるかも知れません。

確かに2号店と4号店の出店の際に、新しいモデルに挑戦したことがあるのは事実。
でも残念ながら、その挑戦はどちらも失敗に終わり、以降は商売のモデルを変えるような大きな改善をした記憶はありません。

じゃあ、なぜ大きな改善をした記憶がないにも関わらず、昔のお店と今のお店では顧客も商品も大きく変わっているのか?

今の私が考える、その答え。
それは毎月、毎年という単位での少しずつの小さな改善が積み重なって、結果的に大きな変化になっているのではないか、ということ。

2号店や4号店で新しいモデルに挑戦しようと考えた時、私はお店の内装や商品を大幅に変えれば顧客層も変わり、一気に儲けが増やせると考えていたように思います。もちろん、そんな方法で上手くいっているお店もどこかにあるのかも知れません。

ただ、昔のお店と今のお店が大きく異なっている一方で、最近出店したいくつかのお店を見比べても大きな違いがないという事実から感じるのは、やはり商売において大切なのは、一か八かの大きな改善よりも、今のモデルをより掘り下げる小さな改善の積み重ねであり、小さく改善し続けた結果が、大きな顧客層と商品の変化を生み出しているように思えるのです。

当たり前の話ですが、私たちは毎年確実に年を取っていきます。
去年の自分と今年の自分を見比べても大きな違いはありませんが、10年前の自分と見比べれば明らかな違いがあることに気付きます。

お店や商売もそれと同じなのではないでしょうか?

一気に大きく変えようとするのではなく、先月や去年と同じことを繰り返すのでもない。
毎月毎年、自分自身がお客さんに提供したい価値を見直して、少しずつ変わり続けること。とても地味な取り組みの繰り返しであるため、短期で見れば違いはほとんどなかったとしても、長期で振り返れば大きな変化となっている。

偉そうに言うつもりはありませんが、こんな小さな改善を繰り返し、振り返ってみれば大きな顧客層と商品の変化となっている事実こそが、20年間商売を続けることができたという結果を生み出している原因であり、逆にもし私が20年前と同じ顧客層と商品で商売を続けていたとしたら、今ここでコラムを書いているという結果もなかっただろうと思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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