この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
「法人インフォ」っていうサイトが作られまして。
※法人インフォ https://hojin-info.go.jp/
法人インフォ?
内閣官房と経産省が作ってるんですけど。これ、ここに法人名入れると、どの会社がどんな届出してるかっていうのが一発で分かるんです。
じゃあ、労働者にも一発で分かってしまう。
そうなんですよ。
ちょっと休みの話に戻したいんですけど。
はい。
1日8時間労働だったら「105日は休ませなくちゃいけない」って話でしたよね?
そうです。
あれって、有給休暇も入ってるんですか?
有給なしで105日ですね
有給なしですか。有給って、年間何日とか決まってるんですか?
決まってます。まず、週5日以上の労働契約になってる人は、6カ月勤務すると10日です
6カ月勤務すると10日。その10日は、何カ月以内に取らないといけないとかあるんですか。
時効は2年です。6カ月から今度は1年おきに、つまり通算で1年6カ月目に11日が追加で発生します。
ということは、合わせて21日になる。
そうです。そこから、また1年すると、今度は12日。ただその時には、始めの6カ月の10日は時効で消えます。
ということは、21日の次は23日になると。
そう23日ですね。
その半年ごとの増加は、ずっと増え続けるんですか。
6年6カ月で20日になるんですが、そこで打ち止めです。
ということは、マックス20日。
そうです。だから時効までに貯まるのはマックス40日です。
じゃあ、その40日を「2年の間に消化しなくちゃいけない」ということですか?
消化しなくちゃいけないわけじゃなく、40日間有給があるってだけです。
あるってだけ?でも今後はそれを、強制的に取らせることになるわけでしょ?
強制されるのは年間20日のうち、5日間だけです。
え?そうなんですか。全部じゃないんですか?
5日間だけです。
ということは、15日は別にいいよと。えらくゆるい法律ですね。
逆に言うと、1日も取れてない会社があるってことですよ。
そうなんですか?
それに100人いたら500日分の人工がなくなるわけですから。ぜんぜん緩くないんです。
ということは、1日8時間勤務の会社だったら、105+5で110日は絶対休ませなくちゃいけないと。
そういうことですね。
5日休ませたかどうかって、どうやって調べるんですか?
法定3帳簿とていうのがありまして。
3帳簿?
労働者名簿、出勤簿、賃金台帳の3つが、労働3帳簿です。
なるほど。それで管理していると。
それにプラスして、有給管理簿っていうのが4月1日から追加される。
その帳簿に嘘を記入すると?
違法ですね。
じゃあ、帳簿をごまかす人はいない?
帳簿ちょろまかす以前に、社員を洗脳してますね。
社員を洗脳?
はい。だから、働き方改革のセミナーをやると「敵扱い」されるんです。
敵扱い?
「お前は厚生省の回し者か!」みたいな。「従業員が有給あることに気付くだろう!」みたいな。
じゃあ、有給あることに気づいていない社員さんが、いるんですか?
いないと思います。ネットとか調べたら分かるんで。実際は経営者の顔色を伺ってるだけでしょうね。
有給5日取得が義務化するってことでしたけど。
はい。
残りに関しては、どうなるんですか。15日は買い取るんですか?
買い取りは禁止なんです。
従業員からしたら「せめて買い取ってくれ」ということになりませんか。
もともと有給の理念っていうのは、従業員に休んでもらうことなんです。会社が買い取ったら、金で解決しちゃうわけじゃないですか。
まあ、そうですけど。じゃあ結論的に言うと、取らない有給は「なかったこと」になるんですか?
そうです。
じゃあ強制の5日っていうのは、どうなんですか。今後、増えていくんですか?
増えてくと思いますね。
どのくらい増えるんですか?
政府としては、有給の取得率70%以上という目標を掲げてます。
今は、どれくらいの取得率なんですか?
厚生労働省が発表した就労条件総合調査によると、17年大企業の年中休暇の取得率は51.1%です。
結構、高いんですね。風邪ひいて休むとかも、有給に入ってたりするんですか?
もちろん、そういうケースもありますね。
中小企業は、どの程度の消化率なんですか?
有給取得ゼロの割合が40%ぐらいです。
え!「1日も取ってない会社が40%ある」ということですか?
そうです。まったく取れてない人が4割いるんです。
じゃあ、きちんと休んでいる会社と、まったく休んでいない会社と、かなり大きな差があると?
そうです。だからそこのルールを揃えることが、今回の改正の目的です。
ルールを揃えて、やっていけない会社は撤退しろと。
そういうことですね。従業員30人未満の企業って、勝手にローカル・ルールを作ってる場合が多いんで。
ローカル・ルール?勝手に作ってる?
うちは有給3日ですとか。
今までは、それが許されていたと。
今までも許されてないですけど。
許されてはいないけど、バレなかったと。
なんとなく、うやむやになってたような感じですね。
ちなみに70%取得という目標は、何年後ぐらいのイメージなんですか?
具体的な期限は決めてないんですけど、目標としては2020年で掲げてますね。
2020年ですか。
はい。そしてロードマップでは、働き方改革のゴールが2027年になってます。
2027年までには、生産性の高い会社だけにしたいと?
そうでしょうね。選挙とか考えると大々的には言えませんけど。
中小企業でも、そこまでたどり着けますか?
私の肌感覚で言ったら、かなり難しいです。
実際、休めと言われて、どのくらい休みを増やせるものなんですか?中小企業って。
2〜3日ぐらいですね。
5日に届かない?
そこは無理やり届かせるでしょうけど。
どうやって?
さっき、安田さんが言ってたように、風邪引いたときに有給取らせるとか。
なるほど。風邪引いた時でも、昔なら「這ってでも来い」って言われましたけど。
そんなことしたら、永久に来なくなっちゃいますよ。
久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は地元である岐阜県多治見市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。