ルールに隠された意図を読め!
第104回「社会保障は誰のため?」

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第104回「社会保障は誰のため?


安田

社員が休んでいても給料を払うための助成金。なんて名前でしたっけ?

久野

雇用調整助成金です。

安田

持続化給付金は何でしたっけ?

久野

持続化給付金は「売上が半分になったらもらえる援助」みたいな。

安田

ああ。そうでした。いろいろありすぎて分からなくなってきました。

久野

持続化給付金は不正受給がめちゃくちゃ増えてるやつです。

安田

ああ。あれですか。で、私が聞きたいのは雇用調整助成金でして。

久野

はい。それはまさに社労士の分野です。

安田

中小企業は社員を休ませても100パーセント助成金でカバーされるんですよね。

久野

そうですね。上限が1万5,000円ですけど。

安田

じゃあ給料が高い人は1万5,000円までしか出ない。

久野

ちょっと複雑なんですけど。会社で単価が決まるんですよ。

安田

会社で単価が決まる?

久野

ざっくりいうと過去の給与の実績とか。

安田

過去に支払った給料以上にはもらえないと。

久野

たとえば全社の平均給与が1万4,000円なら、誰が休んでも1万4,000円。

安田

なるほど。そうなんですね。

久野

高い金額に設定されて安い人だけが休むと、助成金が手残りする可能性もあります。

安田

なんと!じゃあ「休んだら給料が増えた」って人もいるわけですか?

久野

本人の給与は増えないです。そのぶん会社に残るだけ。

安田

「受け取った金額」をぜんぶ社員に払わなくてもいいんですか?

久野

いいです。

安田

会社が儲けちゃうこともある?

久野

まあ稀にですけどね。

安田

へぇ~。

久野

基本的に儲かりはしないです。どう考えても苦しいはずですから。

安田

テレビには「苦しい」って人ばかり出てきますけど。実は「給付金で儲かった」「いままでより収入が増えた」みたいな飲食店もありますよ。

久野

人を雇ってなくて、小さな規模だったらあり得ますね。持続化給付金で100万とか200万とか入ってくれば月の利益を超えちゃうから。

安田

かなりいびつな形になってます。スピード優先でやるとしようがないものなんですか?

久野

社会保障や助成金の根本的な考えは「弱い人を救済しよう」ってことなので。大企業や多店舗展開してるところより、小さいところのほうが有利です。

安田

ちなみに雇用調整助成金っていつまで続くんですか?

久野

とりあえず2月末までは延長が決まってます。

安田

意外と短いんですね。

久野

延長に延長を重ねてきたのでさらに伸びる可能性はあります。じつは雇用調整助成金は昔からずっとあるんですよ。

安田

え!コロナの前から?

久野

はい。前からずっとありまして。コロナやリーマンが来ると特例で条件が緩和されるんです。

安田

どう緩和されるんですか?

久野

たとえば申請がものすごく楽になってる。本来は計画書どおり休まなきゃいけないのに、いまはそういった計画がいらないんです。

安田

へえ。

久野

休んだ結果だけ出しておけばお金がもらえる。あと上限が8,330円なのに、いまは特例で1万5,000円になってる。金額と書類のつくりやすさがぜんぜん違います。

安田

なるほど。100パーセント出るっていうのも今だけなんですね。

久野

そうです。しかも中小企業だけです。

安田

「大企業は力があるから自分たちでがんばれ」ってことですか。

久野

そうなんです。社会保障制度は「弱い人を救う」という思想に立ってるから。

安田

今回の特例措置は何回ぐらい延長されてるんですか?

久野

たしか3回目じゃないですかね。

安田

今後もコロナが終息するまではずっと延長され続ける?

久野

とにかく失業率が上がることは許さないので。

安田

そこは政治家も敏感なんですね。

久野

「株価を上げる」ことと「雇用を与える」ことが国家の使命みたいになってます。

安田

働く意欲のある人に働く場所を与えよと。

久野

そうですね。失業のインパクトをものすごく意識してるから、大赤字になろうがやるとは思う。ただ・・・

安田

ただ?

久野

けっきょく最後には税金にはね返ってくる。

安田

税金にはね返った分はお金がある人や大企業が払うんですか?

久野

たとえば東北の震災に関してはいまだに復興税を払ってるんです。ああいった形になるでしょうね。

安田

復興税も累進課税なんですか?

久野

復興税は企業には一律のパーセンテージでかかってきます。

安田

個人はどうなんですか?低所得者も取られる?

久野

所得税の一部なので低所得者にもかかってきます。

安田

なるほど。先が思いやられますね。

久野

今回の雇用調整助成金は雇用保険から出てるんですよ。

安田

それは予算的に?

久野

はい。だから「雇用保険が値上がりするだろう」と言われてます。で、雇用保険は会社と折半という制度なので、1対1.5ぐらいの割合で会社も負担してる。

安田

給料が高い人は失業保険もたくさんもらえるんですか?

久野

いや、そんなことないんですよ。上限があるので。

安田

たくさん払ってるのにかわいそうですね。

久野

はい。強者が弱者を助けるのが社会保障の基本なので。

安田

「弱者ばかりが損してる」って論調が多いですけど、現実は逆ですね。

久野

そうなんですよ。

安田

「俺たちの税金をこんなムダなことに使いやがって」みたいな人ほど、大して税金は払ってないですもんね。

久野

そのとおりです(笑)

安田

文句ばっかり言って。「じゃあ、お前は税金をいくら払ってんだ?」って言いたくなります(笑)

久野

政治家はそう思ってるでしょうね。絶対に言わないでしょうけど。

安田

言ったら選挙で落ちちゃいますもんね。

久野

はい。

安田

ヤフーコメントの横にその人の納税額を表記してほしいです。

久野

そんなことしたら大変なことになりますよ(笑)

安田

なんだかんだ言って社会を支えてるのは大企業や高額所得者の税金なんですね。

久野

まあ、否定はできないです。

安田

みんな文句言うけど、日本の社会保障は弱い人を助けるいい制度なんだと。

久野

はい。そこをものすごく意識してつくってます。



久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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