この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
久野
安田
つまり雇うのはやめたってことですか?
久野
雇うのはやめてないです(笑)
安田
久野
正社員はすでに雇ってますので。
安田
これからも、どんどん人を増やしていく拡大路線なんですか。
久野
仕事は増やしていきたいと思ってます。ただ「雇わない良さ」みたいのもよく分かってきました。
安田
(笑)。分かっていただけましたか。
久野
雇わないと「責任感が生まれない」と思ってたんですけど。全然そんなこともなく。逆に業務委託でお願いしてるほうが「仕事の貫徹力」みたいなのが強い。教育をしなくていいってのも魅力ですし。
安田
前からそう言ってるじゃないですか。雇わなけりゃ「育てなくていいし、モチベーションアップもいらないし、辞めないですよ」って。
久野
「ありがとうございます」って言われるんですよ、仕事を頼んだら。びっくりしますよね。
安田
そりゃそうですよ。仕事が増えれば収入も増えますから。
久野
そう。だから頼めば頼むほど喜んでくれて「ありがとうございます」ってお礼言われる。納品も「こんな感じで大丈夫でしょうか」って、すごく細かく気を遣ってくれるし。
安田
評価が上がれば仕事も増えますから。社員だったら仕事が増えても喜びませんけど。
久野
利害関係が完全に一致してますよね。
安田
はい。社員は給料決まってるから、仕事が増えても負担が増えるだけ。利害が一致してない。
久野
ですよね。
安田
今回リモートワークをやってみて、「正社員じゃなくてもいいか」って気づいた会社は多いと思います。そのほうがずっと管理しやすいし。
久野
リモートでマネジメントやるのは大変ですから。8時間何やってたか確認しなくちゃいけない。画面の録画とかしてもしょうがないし。
安田
久野
結果だけ見てお金を払えばいいですからね。
安田
でも社長はまだまだ正社員が好きですよ。
久野
社長から見たら「社員は何でもやってくれる」ってのが楽なんでしょうね。
安田
それは社長の怠慢ですよ。何でもやってくれるんじゃなくて、何でもやらせてるだけ。
久野
そうですね。給料が定額だとやらせたほうが得だと思うし。あとはセキュリティが心配でしたけど。
安田
久野
うちの場合はぜんぜん気にならなかったです。
安田
コロナで電話受付を外注した経営者さんがいるんですけど。
久野
安田
はい。社員よりも対応がしっかりしてたそうです。もうコロナが明けてもこれでいいかって。情報管理もすごくしっかりしてるって。
久野
そこの信頼をなくしたら仕事がなくなりますから。社員より必死ですよ。
安田
「社員だからちゃんとやってくれる」って信じてる経営者は多いですけど。実際は逆だったりします。
久野
うちも「給与計算の委託」を受けてますけど。情報管理は徹底しますから。
安田
遺言なんかもプロに託したほうが確実じゃないですか。情報漏洩の心配もないし。それと同じですよ。
久野
そうですね。その道のプロに外注したほうが安心ですね。
安田
安心だし、結局そのほうがコストも安い。社会保険料もかからないし。
久野
外注なら簡単に切れますしね。
安田
久野
はい。仕事ができないぐらいではクビにできません。
安田
リモートワークの導入で一気に変わりそうな気がします。出社しないことが当たり前になったら雇用形態も変わりますよ。
久野
企業の考えは変わると思います。ただ労働法が変わるかどうか。そこが日本の成長の鍵だとは思うんですけど。
安田
どう変えるのが理想なんですか?もしも労働法を変えるとしたら。
久野
やっぱり「仕事に対してお金を払う」というルールにしなきゃいけない。今はどこまでいっても時間縛りなので。
安田
久野
ただ業務委託だと指揮命令ができないので。「雇用と業務委託の中間」みたいな形態が生まれてくれば理想なんですけど。
安田
優秀な業務委託なら指揮命令なんて要らないでしょ。
久野
確かに。まあ賢い経営者は、どんどん業務委託に変えていくでしょうね。
安田
社員だと、それこそ「パソコンの前に何時間座ったか」で報酬を支払うしかない。
久野
安田
リモートじゃなくても「座ってるだけ」で報酬が支払われてたわけですよ。これまでは。
久野
そうですね。それに対して社会保険まで払ってるわけで。
安田
もう根底から変えたほうがいいですって。
久野
ただやっぱり厚生年金の神話ってあるんです。業務委託になると税務的なところも自分でやんなきゃいけないし。
安田
会社がバックアップすればいいんですよ。すでに雇ってる会社はそうするしかない。無理やり業務委託に変えることもできませんし。
久野
社員に自発的に変わってもらうしかないですからね。
安田
仕事ができる人ほど「管理はいらない」「指示もいらない」ってなると思う。パソコンの前に8時間座ってなきゃいけないなんて苦痛でしかないし。
久野
そうでしょうね。できる人はどんどん業務委託になるんじゃないでしょうか。
安田
本音を言えば、会社はそういう人には正社員で残って欲しいんでしょうけど。
久野
残るとしたら、やっぱり厚生年金を捨てられない人でしょうね。案外多いかもしれません。
安田
厚生年金以上に稼げると思いますけど。できる人なら。
久野
長年刷り込まれた神話みたいなのがあるんですよ。これは入っておかなくちゃっていう。
安田
だったら自分で会社をつくって入っちゃえばいい。私もそうしてますよ。自分ひとりの会社をつくって厚生年金にも入ってます。
久野
そうなんです。ひとりで会社つくっちゃえば、社会保険の問題は解決するんです。
安田
「雇用と業務委託の中間」って、できる可能性はあるんですか?
久野
たぶんできないと思います。反対する人が多すぎるので。
安田
生産性アップとか言いながら、肝心のところは変えようとしないですよね。
久野
そうなんですよ。だから会社としてはどうしようもない。
安田
大手がやってるように、どんどん社員を減らしていくんじゃないですか。
久野
年配の社員は減らしていくでしょうね。とくに管理職の部分。ただ本当に必要な若手に関しては正社員で雇うしかない。
安田
優秀な若手を安い給料で囲い込むのは、もう無理だと思いますけど。
久野
ハイスペック人材には3000万円払うっていう会社も出て来ました。
安田
3000万円の正社員って元が取れるんですかね?どう考えてもシェアしたほうがいい気がするんですけど。
久野
囲い込みたいんでしょうね。社員の側も厚生年金に入りたい人は多いし。神話の時代が長すぎたんですよ。
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。