第102回「なぜ介護保険は40歳から?」

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第102回「なぜ介護保険は40歳から?


安田

また値上がりですか?介護保険。

久野

ステルス値上げでしょうね。

安田

いつから上がったんですか。

久野

2020年3月から上がりました。

安田

介護保険って、自分が要介護になったときのために払うんですよね。

久野

そうです。40歳から介護保険料が徴収されます。

安田

久野さんも払ってるんですか。

久野

40歳を超えたので払い始めました(笑)

安田

それがまた値上がりすると。

久野

じつは毎年上がり続けてます。皆さん知らないですけど。

安田

なんと!

久野

昔は今みたいに「むちゃくちゃ高く」はなかったんです。

安田

だんだん上がってきたってことですか。

久野

そうです。

安田

ステルス値上げで。

久野

毎年少しずつ上がって凄く高くなっちゃった。

安田

大きなニュースにはなってませんけど。

久野

サイレントでやってますから。

安田

これって年収に応じて高くなるんですか。

久野

そうです。厚生年金や健康保険とおなじ。階段で金額が分かれてます。

安田

この先ずっと上がり続けるんですか?介護保険というのは。

久野

上がり続けると思います。財源がないので。

安田

税金だけでは足りないってことですか?

久野

はい。足りてません。

安田

つまり「自分が介護になったときの費用が足りないので、今から払おう」ってことですか。

久野

そうです。たとえば医療介護になると、今は1割負担で介護サービスを受けられる。

安田

介護保険に入ってる人は受けられると。

久野

じつは介護保険って複雑で。40〜65歳の人は第一号というのに該当してまして。

安田

第一号?

久野

第一号の人は、特定の病気に罹患しない限りは介護保険を使えない。

安田

なんと!

久野

65歳以上の人は第二号なんですけど。この人たちは認知症とか、身体的に要介護2とか3になった場合には介護保険が使えるんです。

安田

それは健康保険とは別ですか?

久野

また別の制度です。健康保険と厚生年金以外に介護保険も別途徴収されます。

安田

国民健康保険しか入ってない人は払ってないんですか?

久野

いえ。介護保険は別で徴収されます。

安田

じゃあ国民全員が入ってると。

久野

はい。40歳を超えたら徴収が始まります。でも40歳の人は特定疾患でしか介護保険サービスが受けられない。

安田

特定疾患って、たとえばどんな疾患ですか。

久野

難病と呼ばれるやつですね。筋肉が動かなくなるような。

安田

そういうのじゃないと駄目だと。

久野

あるいは若年性アルツハイマーとかですね。じゃないと使えないです。

安田

ということは、基本的には65歳を過ぎないともらえないってことですね。

久野

そうです。もらえないというか、自己負担1割2割で介護サービスが受けられない。

安田

なるほど。つまり高齢になって要介護になったときに、1割負担で介護が受けられる。そのための財源ってことですね。

久野

そうなんですけど。また難しいのが、日本の制度って基本的には積み立てじゃないので。今払っている分を自分のために使うわけじゃないんですよ。

安田

先輩のために順繰りに払ってると。

久野

はい。だから間違いなく値上がりしていく。

安田

若者は増えないのに要介護の人は増えるから?

久野

そういうことですね。しかも平均余命が延びてますから。

安田

じゃあ、まだまだ上がり続ける。

久野

間違いなく上がり続けるでしょうね。平均寿命が伸びれば伸びるほど高くなる。

安田

なぜ、わざわざ介護保険だけ分けて取るんですか?税金を上げればいいだけじゃないですか。

久野

社会保険は第二の税金と言われてまして。言ったら怒られるんですけど(笑)

安田

第二の税金?

久野

所得税ってだいたい給与の15%なんですよ。社会保険を合わせて給与の30%。

安田

そんな感じですよね。

久野

で、会社も15%負担してる。

安田

はい。これがまた高いんですよ。

久野

たとえば所得税に15%乗せたら「日本はめちゃくちゃ所得税が高い国」ってことになるじゃないですか。

安田

なりますね。

久野

法人税に乗っけたら「めちゃくちゃ法人税が高い国」ってことになる。

安田

なりますね。

久野

だから税金とは区分して、正当性を出していくわけです。

安田

税金はそんなに取ってないよと。

久野

はい。そういう理屈ですね。

安田

実質は税金と同じじゃないですか。強制だし。

久野

だから第二の税金と言われてるんですよ。社会保険税ですね。あんまり言うと怒られちゃうんですけど(笑)

安田

誰に怒られるんですか。でも、それだったら20歳過ぎたら全員に払わせたほうが財源は増えますよ。なぜ40歳以上なんですか?

久野

だって20代からは取りづらいですよね。

安田

年金は取ってるじゃないですか。

久野

年金は65歳になったら全員受け取れますから。でも介護保険って万人が受けるものじゃない。

安田

要介護にならなきゃもらえないと。それは40代でも同じですよね。

久野

40歳ぐらいから「そろそろ病気が起きますよね」っていうイメージがある。

安田

何ですか?それは。

久野

厄年みたいなもんで「40過ぎたらガタっとくる」ってみんな言うじゃないですか。

安田

だから40なんですか?なんかいい加減。特殊な病気じゃなければもらえないし。

久野

もらえないけど、みんな納得しちゃってます。

安田

納得してるんじゃなく知らないんですよ。まさか自分がもらえないとは。

久野

そこはあんまり告知してませんから。

安田

あざといですよね。

久野

頭いい人が考えることはものすごく繊細なんです(笑)



久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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