年金改革ですか。
はい。密かに進んでます。
それはどういう改革ですか。
政府はいま厚生年金の加入者を、ガンガン増やしていってるんです。
パートの奥さんが入ったり、とかですよね。
パートの人は週30時間以上働くと社会保険加入なんです。これを「20時間を超えたら社会保険に入れちゃおう」みたいな波が来てまして。
「社会保険料を払う人」を増やしたいってことですよね。
そうです。これまで501人以上の会社で適用だったのが、2022年10月に101人以上になって、2024年10月からは51人以上の会社が対象になってくる。
どんどん対象を広げてると。
はい。なので中小企業も2024年10月からは……恐ろしいですよ。
影響は大きいですか?
社会保険に入らないことが中小企業の収益源でしたから。
それもどうかと思いますけど。対象は主にパートさんですか?
そうです。パートさんです。
今後はパートとして雇う意味がなくなってくると。
そうなんですよ。それが年金改革のひとつの目玉。
へえ。
年金に関して、いま何をやってるかっていうと、財源の確保なんです。
でしょうね。
なんとか適用を増やすことによって、社会保険の財源を増やそうとしてる。
そりゃあ、払う人を増やしたいでしょう。
そういう改革が5個ぐらいありまして。「年金大改革を2022年4月から順次やります」みたいなことが、ひそかに進んでる。
社会保障費の使途っていろいろあると思うんですけど。やっぱり年金がいちばん大きいんですか?
年金・医療という分野ですね。
医療も大きいですよね。
医療はでかいです。
コロナで「おじいちゃんおばあちゃんが来なくなって、病院が儲からなくなった」とか言われてます。
そこが大きな問題なんですよ。
ですよね。行かなくていいんだったら「最初から行かなくていいじゃん」って思います。ひまつぶしに来る人も多いイメージ。
そうですね。
なぜ自己負担を3割とかにしないんですか?
それはシルバーデモクラシーですよ、やっぱり。
それをやったら選挙勝てないってことですか。
はい。選挙に勝てない。
本当にそうですかね。逆に圧勝する可能性もあると思うんですけど。
それはどういう理屈で?
たとえば野党が「政権を取ったら3割にする。申し訳ないけど払ってくれ。どうしても払えない、命にかかわる老人は国が面倒を見る。だけど余裕がある人は悪いけど3割出してくれ」って言えば。選挙で勝てると思いますけど。
いや、逆だと思います。
逆?
たとえば電気代とか水道代とか。あと、それこそ医療関係ですね。そのあたりの生活コストに関しては、中国に学ぶとものすごくわかりやすい。
中国ですか。
はい。中国はそこをめちゃくちゃ低く抑えてきてるんです。なぜなら一党独裁体制を保つには、とにかく最低限のインフラは安くしておく必要があるから。
そこがキモだと。
ここが高くなると暴動が起きる可能性があるんです。だから、とにかく「生活コストが上がらないように上がらないように」っていうのが行政の考えてること。
日本もそこは同じだと。
はい。だから年金・医療・解雇の問題は基本的にアンタッチャブル。
だけど結局、「収入を増やすか、支出を減らすか」しかないわけですよね。
ないですね。
どっちにしろ国民が払うわけじゃないですか。税金で。
はい。
社会保険料を上げるとしても、医療費の負担を増やすとしても、出どころは同じでしょう。結局は国民が払うわけで。
そうですね。再分配してるわけですから。
じゃあ「どっちがいいの?」って話で。「今はあまりにもバランスが悪い。だからこうします」っていうのは、国民の合意を得やすい気がするんですけど。
合意しますかね。
高齢者自身も「3割取りゃいいのに」って言ってる人いますよ。
う〜ん・・・どうでしょう。日本人の政治に対する興味ってかなり低いんですよね。だから「郵政民営化選挙だ」っていうのが通ってしまう。
それが関係してると。
だって本当はそんなはずないんです。それ以外にもいろいろ決めることがあって。
そりゃそうですよね。
だけど年金問題とか医療問題をちょっとでも持ってくると、揚げ足取りのように「あそこはこんなことを言ってるぞ」って反対の論議を展開してくる。
そこで争えばいいじゃないですか。
そうなった時に「医療費を3割に上げる」という党と、「医療費は今のままです」という党の2軸になりやすい。だから、こういう論点には持っていきたくない。
「あの党は老人を殺すつもりだ」みたいなことを言われて。悪者にされちゃう。
そういう意見を声高にいう人だけを、いっぱい連れて来るんです。
まあ、ありそうな話ですけど。国民はそんなに馬鹿ですかね。
日本人って変化にめちゃくちゃ弱いんです。たとえば医療現場も1割で潤ってる人がいるわけです。「おじいちゃん毎日来てくれてありがたい」っていうお医者さんとか。
いそうですね。
そういう人たちが「俺たちの生活はどうなっちゃうんだ?」って声をあげる。
「値上げしたら利用者が減るだろ!」ってことですか?
そういうことです。
確かにそういう気質はありますね。徐々に死んでいくほうがいいっていう。あとは重要なことを決めるのに、理屈じゃなく感情で決めるとか。
いやぁ、感情は恐ろしいぐらい、そうですね。
その時の感情だけで投票しちゃいますから。
とくに日本人は騙されやすいっていうか、同調圧力がすごく強いので。マスクだって、日本ではしてないと恐ろしいことになるじゃないですか。
ですよね。
ビジネスマナーまで出てますから。「どの色のマスクがOKで、柄はやめましょう」とか。「二重はこういう感じです」みたいな。
そんなマナーまであるんですか!
ちょっと前までは、仕事中にマスクをすることが「マナー違反」だったんですけど(笑)
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。