バターとか、マーガリンとか、コロナの影響で値上がりしてるみたいです。
海外から入ってこなくなってる影響でしょうね。
「給料は増えないのに、物価だけ上がって死にそうだ」ってネットに書かれてました。
メディアがそうやって煽るから。
「また値上げだ」みたいなニュースばっかりで。一方で「デフレで物価が上がらないから給料も増えない」とか。言ってることが矛盾してますよね。
メディアはいつも矛盾だらけです。
どっちが正しいんですか?値上げしたら庶民の生活がつらくなるのか、値上げしないからつらくなってるのか。
私はやっぱり値上げすべきだと思いますね。
値上げのたびに叩くメディアが問題だと。
大問題じゃないですか。小さな話をいちいち。「10円上がります」とか。
値上げの話は視聴率が取れるんでしょうね。
炎上ネタは視聴率上がります。
「俺たちに死ねって言うのか!」みたいな。値上げしないのが、回り回って自分の給料の安さに反映されてるのに。
そうなんですよ。「安い物はいい」っていう個人の感覚が企業にまで浸透してる。
企業は人の集まりですから。感情で動きますよね。
「自分の生活は苦しいのに、おまえらのプロダクトはなんでこんなに高いんだ」みたいな。
日本人は安いのが好きですよね。「となり町まで数円安い卵を買いに行く」とか。
折込みチラシを端から端までチェックしたり。
自分の時給をまったく計算してないですよ。労力を考えたら、ずいぶん高い気がするんですけど。
やっぱり日本人の気質でしょうね。「安いニッポン」って本もありましたけど、安いのが好きなんでしょう。
「物を大事にする」「もったいない」という感覚と関係あるんでしょうか。
私は教育だと思います。「努力してコストを下げることが商売の基本」みたいなことを教え込まれるから。
「無駄づかいはよくない」って子どもの頃から教えられます。
だから日本人ってすごく貯金が多いんですよ。投資もせずにコツコツお金を貯めてる人が多い。
お金を使わないから景気が悪くなって、収入が減って、さらにお金を使わずに貯金を増やすっていう。なに目的でやってるのかよくわからない。
ですね(笑)
そういう教育をしてるってことですか。国を挙げて。
だって正直なところ、貯金してもお金は増えないじゃないですか。
なんだったら減っていきますよね。
そうそう(笑)
銀行の手数料も高くなって。預けてるだけで減っていくみたいな。
銀行だって商売ですから。それが当たり前だと思うんです。
手数料を取られるのは海外では当たり前ですよね。
投資なんていうものは一切教えないから。
日本人にとっての投資ってギャンブルと同じ感覚ですよね。
そういう感覚が染みついてます。
「とにかく出費は抑えよう」と。
本来は逆だと思うんです。仕事を依頼するときに1万円で依頼するのか10万円で依頼するのか。10万円もらえば安田さんも頑張ると思うんです。
まあ気持ちは変わりますよね(笑)
なのに「安田さんには100円でやってもらったほうがいいんだ」みたいな。
100円だと頑張りようがないです。
そりゃそうですよね。
人によるでしょうけど。たくさん払ったらパフォーマンスを発揮してくれる人もいるし、安く発注した時と変わらない人もいるし。
確かに。
今はそういう仕事がどんどん増えてるんじゃないですか。ランサーズ的な。
消費者として商品を選ぶ目が養われてない気がします。ランサーズとかで「同じ物だったら安い方がいいよね」って。実際買ってみるとぜんぜん違うんですけど。
違いがわからなければ安い方を選びますよ。
サービスを同じくくりで理解しちゃう人が多いんです。ネーミングという商品を頼むんだったら「できるだけ安い方がいいよね」って。短絡的に考えてる。
なんでこうなっちゃったのか。
やっぱりそう教育されてるからですよ。
そこが不思議です。「お金をどんどん使おう」って教育したほうが、物価も上がっていいと思うんですけど。なんで国を挙げてそういう教育をしないのか。
ものがない時代は放っておいても売れたから。今は必要なものを全部買っちゃって飽和状態になっちゃった。
まじめにコツコツやるだけじゃ、もうダメだと。
0から1の段階はそれが正しかったんです。経済ってどこかで成熟期を迎えるので。
成熟期はどういう教育をしたらいいんですか。
「工夫すると高く売れるんだ」という感覚を身に付けなくちゃいけない。人の工夫に対してお金を払うという感覚をもっと養わないと。
シビアな割に資格や学歴には何百万も払いますよね。「その大学に何百万も払う価値があるのか?」ってことは考えない。
資格や学歴は大好きです。それも教育なんでしょうね。
どうして国は教育を変えないんでしょう。
感覚がズレてる人がつくってるから。たとえば景気刺激策も間違ってますよね。
どこが間違ってるんですか。
戦後の復興期や高度経済成長期は、とりあえず道路をつくればそこに住宅が建って、人が集まって、物を買うという構造が成り立った。
みんな家や家電を買い漁ってきましたよね。
今はもう人間が変わっちゃったわけです。だけどいまだに「道路つくろうか」「鉄道走らせようか」みたいな。そういう施策になっちゃう。
それが巡り巡って景気がよくなると思ってるんでしょうね。
その感覚がもうズレてるんですよ。
本来ならどういう経済対策をすべきなんでしょう。
デジタルとかAmazonとか、ああいう企業を育てなきゃいけない。宇宙産業に投資するとか。
普通に考えたらそうですよね。なぜ道路を作っちゃうんでしょう。
票につながるからですよ。過去の成功体験が強烈すぎて8割ぐらいの人がそこから抜け出せていないから。
国民がそれを望んでると。
それで景気が良くなると信じたいんでしょうね。
サービス業は伸びそうですけど。日本人が得意な「おもてなし」とか。
これほど丁寧にサービスをやっても、「サービスはタダだ」という感覚が強いじゃないですか。価格も含めて「おもてなし文化」みたいな。
確かに。
やっぱり教育を変える以外に方法はないんです。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。