第209回 政治と経営はAIに

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第209回「政治と経営はAIに」


安田

神奈川県の大井町で「町議選の候補者」がなんと、ゼロだったそうで。

久野

候補者ゼロとか1で選挙にならない地域って、全国にはたくさんあるんです。

安田

決して給料も安くないし。なぜこんなに人気ないんだと思いますか?

久野

けっこう責任があるんじゃないですか。企業の管理職と同じで。公の職なのでSNSで叩かれたりもするし。

安田

なるほど。

久野

予算がない市町村ではこういう事が起きてきます。「戦略の悪い会社」みたいな感じで。

安田

戦略の悪い会社?

久野

戦略の悪い会社の管理職って大変なんですよ。結果が出ないと管理職が責任を負わされて。だからみんななりたくない。

安田

仕事がなくて困ってる人もいるわけじゃないですか。きつい肉体労働やってる人とか。それこそ貧困にあえいでる人とか。立候補しちゃえばいいのにと思うんですけど。

久野

それはちょっと難しいでしょう。

安田

投票なしで選ばれるわけですよ。立候補すれば。

久野

その地域に住んでなきゃいけないし。

安田

その地域に住んでる人で、暇でお金がない人っていると思うんです。

久野

そういう発想が湧かないと思います。さすがに。

安田

そうかもしれませんね。ちなみに国会議員はどうですか。

久野

国会議員はまだなりたい人がいっぱいいますね。

安田

そのうちいなくなるんじゃないですか。甲子園で酒飲んで、たばこ吸って、散々叩かれた議員がいましたよね。

久野

いましたね。「酒は飲んでない」とか言って。後で調べたらやっぱり飲んでみたいな。

安田

あれはさすがに本人の問題ですけど。だけど住民みんなから叩かれまくって。テレビではさらし者にされるし。

久野

とんでもなく袋叩きに合いますもんね。

安田

オンライン限定の「顔や本名を出さない歌手」も出てきてます。曲は作りたいけど、有名になりたいわけじゃない。

久野

有名税が今の時代は高過ぎる気がします。

安田

国会議員ぐらいの収入や権利があればともかく。町議とかだったら割に合わないんでしょうね。

久野

割に合わないと思います。自由も奪われて。日本ではかなり民意を反映させなきゃいけないし。いろんな意見も聞かなきゃいけないし。

安田

調整とかも大変でしょうね。

久野

変な逆恨みとかもありそうだし。

安田

学校の先生も定員割れしてますよね。昔は子どものなりたい職業で必ず上位に入ってたのに。

久野

忙しい割に報酬が見合わないんでしょう。ちょっとしたことで叩かれるし。

安田

先生になりたい人もどんどん減ってくんでしょうか。

久野

そう思います。恐ろしいことですよ。中途半端な収入しか得られない割に力も与えられない。何のためにやってるか分からなくなります。

安田

「国会議員数が多過ぎる」「給料が高過ぎる」「自分たちの身を削れ」って、みんな言いますけど。ある程度の報酬や権限がないと、ますます人材の質が下がりますよね。

久野

そうですよ。学校の先生もそうですけどもっと収入を高くするべき。

安田

議員の報酬も上げるべきですか?

久野

議員もいろんな人がエントリーして、競争の中から「志が高くて、能力が高い人」を選んでいかないと。国家としてはすごく大事な仕事ですよ。

安田

でも「議員の報酬上げよう」なんていったら、国民から袋叩きに合いますよ。

久野

報酬を上げないから優秀な人が集まらなくて、その結果、国民の給与が下がってるんですよ。

安田

なるほど。

久野

国会議員の数を半分にして、報酬をガンと増やして、もっと競争が起きるようにした方がいい。

安田

人を減らして給料を上げるのはいいですね。でも町議ってそもそも必要なんですか。

久野

地方自治法の観点からは必要なんでしょうね。

安田

それこそAIとかに、やってもらったらどうでしょう。

久野

最近読んだ本に、それが一番「国が成長する方法だ」って書いてありました(笑)

安田

やっぱり(笑)

久野

AIに人選してもらう。21世紀は民主主義の失敗に気付かされた時代なんだそうです。いろんな意見を聞き過ぎちゃって誰も前に進めなくなって。

安田

何やっても文句言われますもんね。

久野

「AIがあらゆる情報を元に決めました」となると、みんな納得するじゃないですか。AIの方が判断に誤りが少ないんじゃないかって。

安田

民主主義って「国民の知性や成長」がベースですよね。でも現状はそうなってなくて。民はどんどん馬鹿になっていくというか。

久野

多数決で決めるということの限界が来てます。一党独裁の国しか伸びてないし。

安田

だけど一党独裁は嫌じゃないですか。いきなり戦争が起こったり自由がなくなったり。

久野

嫌でしょうね。

安田

民主主義でもなく独裁でもない。となるとやっぱりAIしかないですよ。公平にやるべきことを粛々とやって、余計なことはしない。

久野

AIがやれば人件費もかからないし、ミスもしないし、自ら学習するし。言うことないと思うんですけど。

安田

そういう時代になりますかね。

久野

そういう国家は出てくるでしょうね。

安田

日本でもAI特区みたいなのを作って欲しいです。政治家ゼロの街がどうなっていくのか実験してみる。

久野

日本はそういう取り組みが一番遅い国ですから。

安田

確かに。

久野

会社はやるかもしれないです。社長がAIですみたいな。

安田

久野さんの会社でやってくださいよ。社員に隠れてこっそり。「じつは俺、何も決めてなかった」みたいな。

久野

それで、めっちゃ伸びたら嫌ですね。社員が幸せそうだったり。「今までの自分の努力はなんだったんだ」って(笑)

安田

売上がいきなり3倍ぐらいになったり。

久野

社員の定着率も上がって。辞めなくなって。

安田

いいことばかりじゃないですか。

久野

嬉しいのか嬉しくないのか。

安田

経営者としたら嬉しいんじゃないですか。

久野

そんなことないと思いますよ。「自分が頑張らないとダメだ」というところがやりがいになっているので。

安田

そこが経営の醍醐味ですもんね。

久野

だけどあり得ると思います。AIが経営する未来は。

安田

とくに効率よくこなしていくビジネスとか。

久野

AIが管理した方が無駄がないでしょうね。変な忖度も要らないし。

安田

コミュニケーションでミスも起きないし。

久野

そもそも人件費がかからない。

安田

多くの社長が路頭に迷うことになるかもしれませんね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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