その51  適切天国

数年前、あるプロスポーツチームで
応援についての問題が話題になりました。
正確には、試合中に盛り上げるために
私設応援団が自チームの観客に対して合唱を呼びかける
「応援歌」というものがあり、
その歌詞の一部に不適切な箇所があるという指摘が
チーム公式からあったのです。

熱心なファンサイドと
チーム側がぶつかってしまうことはままあることではありますが、
その際はチームが
多分に野次馬的に集まってきた人々を巻きこんで叩かれることになりました。

応援についての問題とは、
不適切な箇所とした歌詞の一節が
「お前」
だったことです。

応援歌が「やれ!」「がんばれ!」と鼓舞する内容のもので
雰囲気的にも自然な呼びかけ方であったため、

え、それだけ…?

という反応がむしろ炎上に近い反響になりました。

しかし「お前」というワードが
21世紀以降に大きく立ち位置を変えた言い方のひとつであることは
間違いありません。

20年前の男性であれば
「目上でなく」かつ「ある程度近い距離感」
の条件にあてはまっていれば
誰でも躊躇なく使っていた呼び方だったと思いますが、
現在ではオンの場で使うことはかなりまれといえるでしょう。

あるいは世代的に上の方が
以前と変わらず部下などに使用するにしても、
ちょっと乱暴な響きがないとはいえません。

毎日生きているうちに時間が過ぎただけで
ルールが変わってしまうのは、
波打ち際に立っていたらいつのまにか腰まで水につかっていたような
理不尽さが正直、あります。

結論としては
大きな流れにはあわせていくしかないよね、なのですが、
もういっそ
これなら誰に対しても適切である、というルールを敷いて、
あえて不自然な言葉を皆で共有してみるというのはいかがでしょう。
人工的であることがわかっているならば
見慣れないルールに従うことがむしろ自然なことに感じるはずです。

貴様はどう思われますか。

 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

リーマン20年のキャリアを3ヶ月分に集約し、フツーだけど濃度はまあまあすごいエッセンスをご提供するカリキュラム、「グッドゴーイング」を制作中です。

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