第176回 集客の順序

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

商売を始める時、集客について考えない人はいないと思います。
実際、開業前の私も集客に関する多くのアイデアを事業計画書に書き込んでいました。

でも、そんなアイデアを今から見返すと違和感を感じる部分もあり、その違和感を感じる部分というのが「アイデアのほとんどが新規集客についての内容ばかり」だったと言うことなのです。


「新規のお客さんがお店に来てくれて、その後リピーターになっていく」
そう考えれば、新規集客を優先して考えるのは当然のことのようにも思えますし、私もこの順序に疑問を感じていなかったからこそ、新規集客のアイデアばかりを考えていたのだと思います。

では実際に開業した後、私のお店にリピーターが増えていったのかと振り返ってみると、正確な記録は残っていないものの、私の想定を大きく下回るリピート率だった記憶があります。

私は先ほど「新規のお客さんがリピーターになる」と書きました。
確かにお客さん視点の順序としては、これで間違っていないのでしょう。

ただ、実際にはなかなかリピートされなかったという現実をお店視点から考えるならば、当時の私が取り組むべきだったのは新規集客よりも、まずはリピートしたくなる仕組み作りだったと思うのです。

リピートしたくなる仕組みの上に新規集客が加わるから来店数が増えていくのであって、リピートしたくなる仕組みのない上に新規集客をしていたからいつまで経っても来店数が増えなかったということ。

つまり、今の私が思う集客の順序とは「リピートされる仕組み→新規集客」であり、そう考えるのであれば当時の私はこの順序を間違えていたと言える訳です。

冒頭に挙げた事業計画書。
この中にはリピートしてもらうためのアイデアが1つしか書いてありませんでした。その理由は私の心のどこかに「一度お店を使ってもらえれば、接客で何とかなる」という甘い読みもあったと思いますし、当時の私と同じように考える方もいらっしゃるかも知れません。

ただ、リピートしてくれるお客さんを増やすことが、もっともコストのかからない集客であるならば、リピートしてもらう仕組み作りに力を注ぐことこそがオーナーにとって優先すべき取り組みであり、逆に「リピートしてもらう仕組み作りを疎かにした状態で新規集客をしてしまう事ほど時間とお金の無駄遣いはない」と今は思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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