その16「L」と「V」の魅力

昔からある最も有名なブランドバッグで、
「L」と「V」が組み合わさった紋様になって
「L」「V」「L」「V」ばっかり描いてあるやつがありますが、
わたくし、あのわかりやすさが正直
大好き
です。

しかし生まれてこの方、購入したことはありません。

それはわかりやすさが突き抜けすぎていて、
オシャレに使うには難易度が高いからです。

あの柄のバッグや財布は、
日本では老若男女問わず、
(大変失礼とは存じますが)
〇ィトンでさえあればいいという
アンチオシャレ層から買われまくってきた数十年の積み重ねがあり、
すでにひとつの歴史といっても過言ではありません。
高級ブランドなのにもかかわらず
オシャレになれないアイテムに大枚はたくというのは
心理的に困難な話でございます。

どうにかかっこよく使う方法もなくはないのですが、
相当にハードルが高うございまして、

① それ以外のものをオシャレ偏差値の高いもので固める
② 自分がブランド価値のある人間である

のどちらかです。

ファッションでは
「ハズし」という言い方で
全身隙間なくキメるのはいささか野暮であり、
どこかに遊びをもたせることがオシャレには必須の感覚である、
というコンセンサスがあります。
そういった意味で
①は「ハズしなんですよこの〇ィトン」とわかるように表現するということで
なかなかに大変であり、
②は、まあ、そうではないので駄目ですね。

かようにオシャレに使うことが事実上不可能なLとVですが、
もうひとつの特徴である「値段が高すぎる」ことは、
わかりやすさを超える最大の
<魅力>
だと思います。
一番有名なシリーズなんか、素材が革ですらなく、布+塩化ビニールです。
控えめにいって、最高です。
経済的動物である人間にとって
本質的価値とはなにか、という問いを与えつづけてくれる
最高のケーススタディのひとつといえましょう。

ところで
「L」「V」の組み合わせ紋様、
あのようなグラフィックはいまやどのブランドでも定番として持っており、
先日もちょっとした革小物で、知らない紋様の知らないブランドを見かけました。
WEBページは高級ブランドらしい雰囲気で
生産はイタリア製、
値段は「L」「V」の半分くらい。
でもぐぐってみたら思いっきり日本人の企画による日本のブランドでした。

高級ブランドたちが組み合わせ紋様をこぞって使ったことから
組み合わせ紋様 = 高級ブランドである?
という大衆の認識のズレに巧みに乗ったブランディングです。

王道とはいえないんでしょうが、
こういった錯覚を成立させてしまうのも
「L」と「V」の魔力であり
底知れぬ魅力なのだと思いまする。

この著者の他の記事を読む

著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

リーマン20年のキャリアを3ヶ月分に集約し、フツーだけど濃度はまあまあすごいエッセンスをご提供するカリキュラム、「グッドゴーイング」を制作中です。

感想・著者への質問はこちらから