第212回 異次元の少子化対策

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第212回「異次元の少子化対策」


安田

異次元の少子化対策についてどう思いますか。

久野

ちょっと分かりにくいですね。

安田

地球上に存在しないから「異次元なんじゃないか」って言われてます。

久野

何をやるか明確じゃないんですよ。

安田

そうなんです。名前ありきで何をやるか決まってない。

久野

まずはそこを明確にしてほしいですよね。

安田

そもそも少子化対策って意味あるんですかね。

久野

それはあると思いますよ。

安田

先進国はみんな出生率が低いじゃないですか。2を下回るのが当たり前ですよね。

久野

確かに貧しい国ほど子どもはたくさん産まれてます。

安田

貧しい国では子どもが労働力になりますから。先進国の場合は20歳ぐらいまで働かないし、逆に教育費がかかるので。

久野

いま教育費も高いですからね。

安田

そうなんです。日本では子どもがいることが負債みたいになってます。

久野

怒られそうですけどそれが事実でしょうね。日本で子育てするのは大変ですから。

安田

子育てしやすくなったら、たくさん産むようになると思いますか。

久野

どうでしょう。けど出生率低下が政治の一番の失敗ってことは間違いない。

安田

でも日本だけじゃなく先進国はみんな減ってるんですよ。政策だけの問題ではない気がしますけど。

久野

政策だけじゃない部分もあると思います。ただし、維持とまでは言わないけど下がり方を抑えるぐらいはできたはず。

安田

急激に下がり過ぎってことですか。

久野

そこが一番の問題ですよ。ゆっくり減っていく分にはいくらでも対応できるので。

安田

なぜこんなに急降下したんでしょう。

久野

私は政治の失策だと思います。

安田

高校や大学を無償化すべきとか。

久野

やってる施策が「何々が安くなる」とか、そういうのばっかりじゃないですか。

安田

安くするのはダメなんですか。

久野

お金を増やす施策がなさ過ぎるんです。産まれたら毎月10万払いますとか。

安田

なるほど。

久野

何もチャレンジをしないまま「ただ減ってしまった」という感じ。これが一番の問題ですよ。

安田

確かにそうですね。

久野

いろんな価値観があるとは思うんですけど。やっぱりお金がないっていうのが一番の原因ですよ。

安田

仮にみんながお金を持ってたら、もっと子どもは増えてるんでしょうか。社会保障制度がしっかりしてる北欧の国でも、やっぱり2は切っているわけで。

久野

そうですね。

安田

これは先進国のたどる道なんじゃないのって気がしますけど。仮に日本の人口が増え続けて3億人だったら、今は豊かかもしれないですけど将来大変なことになりますよ。

久野

女性の社会進出と、子どもの出生率っていうのは非常に関係性がありまして。1億総活躍でみんな共働きにしていくと、子どもの数は間違いなく減るんです。

安田

それはどうして?

久野

専業主婦の方が子どもをたくさん産んでくれるので。基本的には女性が社会進出をしていくと子どもの数は減ります。

安田

働きながら子育てするのは大変ですもんね。

久野

働きながら3人も4人も育てるのは大変ですよ。そういう現象が先進国で起こってることを、日本はずっと見てきたばずなのに。まったく学んでない。

安田

どういうことを学ぶべきだったんですか。

久野

たとえば保育所が足りないとか言ってますけど、女性に社会進出を勧めたら保育所が足りなくなるのは分かり切ったことで。

安田

北欧では学費や医療費がほとんど無料ですけど、出生率は低いですよ。

久野

北欧も共働きがメインですから。

安田

つまり奥さんを働かせないようにすれば、出生率は上がると。

久野

女性の社会進出と教育にお金がかかり過ぎること。突き詰めればこのふたつだと思います。

安田

このまま行くとどうなると思いますか。

久野

どんどん減っていくと思いますね。どこかで底を打つでしょうけど。

安田

出生率2までは回復しませんか?

久野

絶対しないと思います。

安田

私は楽観視してまして。またどこかで増えるんじゃないかって。

久野

数値的に見るとどんどん減ってますけど。

安田

増えすぎたから減ってるだけで、減りすぎたらまた増えるだろうと。

久野

自然に増えていくってことですか。

安田

はい。適正のサイズになるんじゃないかなと。政治で何とかなるものではないような。教育費や医療費を国がすべて賄ってあげても、今は増えない気がします。

久野

今の日本は産む方が厳しい社会なんですよ。産む産まないを自由に選択できる状態なら、安田さんの言うような戻りもあるかもしれないですけど。

安田

このままいくと自然な回復すら厳しいと。

久野

そう思います。だって何も手を打ってないですからね。

安田

子供の未来を考えるとちょっと不安になりますね。この国は大丈夫なのかな?って。

久野

どんどん高齢化社会になって、年金も社会保険料ももっと増えるだろうし。

安田

そうですよね。

久野

日本は本当に内需の国なので。人口が多いから成り立っていたわけですよ。

安田

確かに。

久野

これだけ人口が減って、内需がシュリンクし続けていくことはもう明白ですから。

安田

それこそ外需を増やすような政策とか、すればいいのに。

久野

本当ですよ。この期に及んで、まだ日本人は日本語しかしゃべれないですから。

安田

経済政策と言えば道路を造るとかビルを建てるとか。そんなのばかりですよね。

久野

新しいことにもっとチャレンジしないといけないです。

安田

なぜチャレンジしないんでしょう。

久野

そういう発想が生まれないんじゃないですか。日本の教育からは。

安田

「言われた通りやりなさい」という教育ですからね。いまだに。

久野

このままじゃダメだということは分かってると思うんです。だけど誰もそれを変えようとしない。だから将来がどんどん不安になっていく。

安田

それが出生率の上がらない最大のポイントかもしれませんね。将来に希望が持てないというか。

久野

それが一番だと思います。「これから良くなっていく」っていう上昇気流みたいなものがないと。

安田

私の予想が正しければ、どこかで底を打って増えていくはずなんですけど。

久野

もう底は過ぎてしまってる気がします。このままだと1すら下回る日が来るかもしれません。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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