この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
第258回「年金を受け取らず働き続けてもらう制度」
安田
久野
まだ確定ではありませんのでどうなるか分かりませんが。
今までは月収66.5万円が上限だったんです。そこを超えると保険料は一定で。
安田
久野
そうですね。今回は厚生年金の上限を上げようという話です。これまでの上限の上にもう1等級上を作ろうと。
安田
つまり月収66.5万円以上の人の厚生年金負担額が増えると。
久野
安田
久野
年間3万4000円くらい上がります。会社も3万4000円の負担増ですね。
安田
合わせると1人あたり年間7万円くらい上がるってことですね。
久野
安田
久野
安田
若者からこれ以上取るのは難しいから「そこそこ稼いでいる人」からもうちょい取ろうと。
久野
そうですね。本当は健康保険を上げる方がいいんですけど。厚生年金を上げると年金払いも増えるから。
安田
久野
じつは健康保険の等級を上げられることが1番恐ろしいんです。サービスは何も変わらないのに保険料だけ増えてくという。
安田
久野
安田
久野
で、今回は厚生年金をいじろうってことになってる。これまでの上限以上に稼いでいる人は全員が対象になります。
安田
厚生年金というのは厚生年金保険だから、ある程度以上に稼いでる人には出ないという話でしたよね。
久野
安田
現役時代の年収が高い人ほど老後も稼ぎそうな気がするんですけど。
久野
そうかもしれません。そこも見込んでいるかもしれないです。
安田
久野
そりゃ反対するんじゃないですか。66万5000円以上稼いでる社員が多い会社は負担がすごいので。しかも永久的ですからね。
安田
久野
大企業はとくに負担が多いです。基本的には60歳まで雇わなきゃいけないから。
安田
「年金の支給額を減らす」という可能性はないんですか。労働人口が減っていくと、どれだけ負担を増やしても限界が来ると思うんですけど。
久野
可能性はあります。支給年齢を後ろにズラすという方法もありますから。
安田
今の現役世代は働き続けなきゃいけないってことですよね。老人になっても。
久野
そのために定年年齢を引き上げていますね。働ける環境を作るってことです。
安田
もう70歳ぐらいまでは働いてもらうことが前提なんでしょうね。
久野
そうなんですよ。元々、厚生年金って「働けなくなったら払うよ」という制度なので。
安田
久野
「今の65歳って元気でしょ」「まだまだ働けますよね」ってことですね。
安田
「働けなくなった人を働いている人が支える」という制度なんですよね。
久野
そうなんです。だから「働けるのに働かない」ってことは想定してない。
安田
今の40〜50代が70歳まで働くことは確定ですね。
久野
国としては70歳までは雇用を確保しようとしています。今は65歳なんですけどそれを引き延ばして。雇用が増えないと働けないので。
安田
それって国が負担していたものを企業に背負わせるということですよね。
久野
安田
企業が正規雇用することに対して後ろ向きになりませんか?社員全員を70歳まで雇い続けるって結構しんどいですよ。
久野
前向きにはなれないでしょうね。だけど働き続ける以外に方法はないんですよ。今の年金はインフレに対応しない制度に切り替わっていて。生活費が足りないんです。
安田
「引退して年金で暮らす」なんてことはもう許されないと。
久野
「年金を受け取らずに働いてもらおう」というのが、この国の意図ですね。
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安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。