第295回 転職回数と解雇規制の関係

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第295回「転職回数と解雇規制の関係」


安田

いま日本では平均転職回数が2回だそうです。

久野

これすごいですよね。終身雇用は事実上なくなってるってことでしょう。

安田

でもアメリカは11回ですよ。

久野

11回!

安田

日本の場合は年代によってかなり違うと思います。今の新卒で定年まで勤め上げる人ってたぶん1割いないでしょう。

久野

もういないかもしれない。いないんでしょうね。

安田

大手でも定年まで3割残ればいいほうじゃないですか。

久野

公務員は多そうですけどね。

安田

公務員だって危ないですよ。いつどうなるか分からないし。

久野

確かにそうですね。 

安田

中小企業なんてほとんど残らないと思います。

久野

社長だけが1人取り残されることになるかも。

安田

その可能性は大きいですよ。身内以外はみんな入れ替わっていくという。

久野

大手の場合は社長も入れ替わりますからね。

安田

大手の社長って新卒プロパー社員から選ばれるのが常識でしたけど。それも変わっていくんじゃないですか。

久野

そうですね。中途で入った人が社長になるとか。

安田

プロパー社員は他の会社を知らない人たちなので。他の業態や会社を見てきた経験の方が価値が上がっていきそう。

久野

若い人は自分のキャリアをどう作っていくか、めちゃめちゃ考えてますよ。

安田

大企業の20〜30代採用は中途が半数近くになっています。あと10年もしたら若手社員の半分ぐらいは転職組になりそう。

久野

近い将来に逆転するでしょうね。

安田

そうなると管理職も中途出身者が増えていくんでしょうか。

久野

大手はまだまだ転職組の役職が上がってかないパターンが多いです。要は受け入れる側が変わっていなくて。社内事情に精通した人が上がっていくわけですよ。

安田

そこに大きな壁があるってことですね。

久野

はい。給料はそこそこ出すけど出世のど真ん中からは外してるっていう。ただこれも5年ぐらいで変わっていくと思います。

安田

変えざるを得ないでしょうね。優秀な人が入ってこなくなりますし。

久野

そうなんですよ。いずれ変えていかざるを得ない。

安田

人材獲得競争に負けるってことはビジネス競争でも負けるってことなので。平均転職回数もどんどん増えるでしょう。2回ってことはないですよ。

久野

5、6回にはなるでしょうね。会社としてもジョブ型採用に変えていかないと。何でもできちゃうゼネラリストって逆に辞めるとリスクなので。

安田

確かにそうですね。

久野

人が入れ替わっても回るような形にしないとマズイです。そのためにはビジネス自体も変えていかなくちゃいけない。

安田

ゼネラリスト時代の終焉ですね。会社の命令で何でもやってきた人たちが40〜50代で使えなくなってきて。

久野

裏を返せばスペシャリティが全然身についてないってことじゃないですか。

安田

これからは地域やジョブを限定したスペシャリスト採用が増えていくでしょうね。

久野

働く側もスペシャリティーが磨ける会社を選ぶようになっていますし。そういう需給バランスになると思います。

安田

ジョブ型を増やすには解雇規制もセットだと言われています。

久野

いや、そこは触らないと思います。10年後ぐらいには状況が変わってるかもしれませんが。自然に変わっていくのを待っている感じですね。

安田

自然に変わっていくんですか?

久野

解雇規制って終身雇用が前提なんですよ。終身雇用は長く働く人ほど給与が上がる仕組みじゃないですか。

安田

後々の報酬アップのために若い間は我慢する仕組みですよね。

久野

そうなんですよ。だから途中でキャリアを切ることは死に値するわけです。解雇規制はそこから始まっていて。

安田

なるほど。平均転職回数が5〜6回になってきたら、実質的に終身雇用は終わってるってことになるから。

久野

国民の意識が「終わってるよね」となるのを待ってる感じですね。平均転職回数が一定ラインを超えたら解雇規制は自然と緩くなっていくと思います。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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