さよなら採用ビジネス 第4回「リクルートがIndeedの次に狙うもの」

このコラムについて

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回のおさらい ①Indeed功績の1つは文字情報による求人認知、②決算書を見習って!人事・採用リテラシーの低さ 第3回「Indeedとは何か」


安田

前回はIndeedについて話しました。まだまだ知らないことも多いIndeed。実はリクルートが買収した会社なんですよね。買収金額いくらでしたっけ?

石塚

約1100億です。

安田

なるほど。

石塚

Indeed買収前の2011年頃から、僕は「リクルートはいまにHRD(求人広告事業)を売却する」って予測をしてました。今に手放すよ、と。もし売りに出したら、マイナビはどんなに資金積んでも買いに来ると思います。リクルートはもう、求人広告事業に執着していないのです。事業ボリュームから考えると大したことなくなったので。

安田

とはいえ、求人で世界一を狙っているようにも見えます。創業事業へのこだわりを捨ててでも世界のトップになりたい。そういう戦略とも考えられませんか?

石塚

そういう面もあるかもしれません。単純にこの会社の考え方は、「ここからどれ位伸ばせるのか」ということなので。

安田

リクルートはけっこうシビアですよね。

石塚

そうです。

安田

何故リクルートが、リクナビをやり続けているかというと、お金を払う人がいるからですよね。企業がお金を払ううちは、儲かるからやればいいんじゃないの、ってことだと思うんですよ。

石塚

儲かるうちはやり続けるでしょうね。そして儲からなくなったら、スパッと切る。元々リクルートの事業モデルは、人生のいろんなライフスタイルに併せた媒体事業です。

安田

「まだ、ここにない、出会い。」ですもんね。

石塚

はい。その各事業から得られるビッグデータを結構もっている、ということを自覚し始めたんですよ。Googleのようなビジネスモデルを相当意識し始めている。だから本体はAI系のエンジニアを死にもの狂いで採用していますよね。グーグルみたいな会社を、リクルートらしく作りたいのかなと、私は感じます。

安田

「まだ、ここにない、出会い」を真剣に事業として追求していくと、目指すモデルはグーグルになりますよね。

石塚

そうです。

安田

ところでリクルートは、Indeedに続いてGlassdoor(グラスドア)という会社を買収しました。Indeedが求人情報を集める会社だとしたら、Glassdoorは会社に関する口コミを集める会社ですよね。飲食店でいう「ぐるなび」みたいなもの。企業が発信する求人情報を、いずれ求職者は信用しなくなって、そこで働いた人とかの口コミ情報を最も信用するようになる。リクルートはそう予想しているのでしょうか。

石塚

大筋そういうシナリオを書いていると思います。これからは評価経済社会だと言われてますから。

安田

なるほど。

石塚

ただ、飲食店も本当に良いお店って星の数を気にしてないですよね。常連さんだけで成り立っているので、ぐるなびなんて気にしてない。会社もそうじゃないかと思います。「グラスドアだか、どこでもドアだか、そんなものにつべこべ言われる筋合いはない。うちはうちのやり方で、人採って育てている」と。実際、本当に良い会社には人が集まるでしょう。

安田

確かに老舗のお店とかは、固定のお客さんとその紹介だけで成り立っているところがありますよね。でもこれもある意味、インターネットが無い時代からの口コミじゃないですか。ぐるなびの星をつけるために努力しても意味ないだろうというのは良く分かります。でも本当の意味で、美味しい料理、良いサービスをするお店、という評判を上げざるを得なくなるとも思います。Googleの何が強いかというと、金のために捻じ曲げた情報ではなく、本質的に正しい情報を提供しようとする姿勢。だから必ず正しい口コミは残ると思います。

石塚

そうですね。

安田

つまり、金の力で捻じ曲げない限り、口コミサイトは非常に有効な武器になるのかなと。

石塚

不祥事のようなことも起こり。本当はやっちゃいけないことを、裏では評価をあげるためにやってしまう。

安田

はい、あり得ますね。

石塚

すると「やっぱりそのサイトってそうなんだよね」と言われる。最近ニュースになった裏口入学みたいな。「ああやって金積んで入るんだ」みたいな。そう見られてしまう。

安田

例えばアメリカの大学では、裏口入学を正面に据えています。寄付金をたくさん払う人の合格枠として。その寄付金を奨学金にして、貧しくても優秀な子が学校に通える。隠すからまずいのであって、きちんと公言すれば何の問題もない。

石塚

おっしゃるとおりですね。リアルな情報を単純に並べるのか、そこに恣意的な何かが加わるのか、この違いですよね。

安田

Googleもそうですが、グラスドアも、恣意的な情報を排除して正しい情報を選ぶテクノロジーの競争になる。そうでないと生き残れなくなりますから。そしてお金で買った広告に関しては、これは広告ですよときちんと伝えていく。

石塚

現にそうなってますよね。

安田

つまりお店の側は、本当に良いお店をつくるか、金の力で良いお店だという広告を出すか、どちらかを選択しなければならない。

石塚

でも広告だとバレてますからね。

安田

はい。だから最終的には良いお店をつくるしかない。

石塚

そうですね。ただ会社の場合、人に関するリテラシーがあまりにも低すぎます。人が集まる会社はどうやればできるのか、何を大事にしないといけないのか、自社らしさって何なのか、こういうことのリテラシーが低すぎる。だから、どうやったら本物の良い会社になるのかが分からない。

安田

なるほど。良いお店になる方法が分からないと。

石塚

人への意識を変えていけば、良い会社にすることは出来ます。ゼロから1をつくるわけでなく、眠っているものを可視化して、自社の魅力を見つめ直すのです。全ての人に響かなくてもいいのです。響く人にだけ響けばいい。常連のお客さんに愛され続ける、老舗のような会社を目指せばいいのです。

次回第5回へ続く・・・


石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

 

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