さよなら採用ビジネス 第78回「銀行総合職の凋落」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第77回『下積みは本当に必要なのか』

 第78回「銀行総合職の凋落」 


安田

みずほ銀行が評価制度を刷新するそうですよ。

石塚

総合職と一般職を統合するって話ですよね。

安田

はい。でも銀行の総合職と一般職って天地の差があった気がするんでけど。

石塚

一応、総合職って銀行の花形ですから。

安田

ですよね。転勤は当たり前で「全員が支店長を目指してる」みたいな。

石塚

その通り。

安田

一般職はもうちょっとのんびり働いてるイメージなんですけど。それを統合してひとつにしちゃうって、意味がわからないです。

石塚

僕も意味わからないです(笑)

安田

何のための統合なんでしょう。

石塚

これって結局「一緒にしたら、全員はいらないよね」っていう。人員削減のエクスキューズなのかなって思います。

安田

メッセージとしてはふたつ考えられますよね。「一般職も総合職並みに働いて」っていうのと「総合職はもはや一般職と変わらないよ」っていうのと。

石塚

まあ少なくとも劇的なイノベーションではないですよ。

安田

そうですか?

石塚

はい。「うちは血を流してでも、次の10年で金融ビジネスのリーディングカンパニーになるんだ!」みたいなものは、まったく感じない。

安田

そういう改革をやろうとしてる人も、いるんでしょうけど。

石塚

いないんじゃない(笑)?

安田

いませんか?あれだけ人数がいて。ひとりも?

石塚

学校の延長線上での勉強秀才はいると思うけど、ゼロイチでイノベーティブなことができる人っていないと思います。

安田

そうですか。

石塚

そういう人は銀行を飛び出ちゃうと思う。あまりにも手続きが多すぎて、面倒くさくなる。

安田

なるほど。でも評価制度を統合するってことは、一般職でも総合職並みに引き上げられる可能性があるってことですよね?

石塚

理論上は。

安田

逆にいうと、総合職でも一般職並みの給料になっちゃうってことですか?

石塚

まさにそれがやりたいんですよ、きっと。

安田

そっちですか?

石塚

絶対そうですよ。「あなた、総合職の評価基準に満たないんで、一般職の給与体系にします」って。

安田

それは人件費を下げるためですか?

石塚

おっしゃるとおり。これは総額人件費を下げるための刷新。コストを下げるための評価制度ですから。

安田

でもそれって社員への不利益行為じゃないですか。「総合職で入ったはずなのに、いつの間にか一般職にされた」みたいな。

石塚

でも雇用は継続するでしょ。

安田

まあ、そうですけど。

石塚

雇用を継続する場合は今、裁判所も配転・移転を広く認めるので。

安田

でも中にいる人からしたら「たまったもんじゃない」って感じですよ。

石塚

それでも出ていくのは本当にごくごくごくごく一部です。

安田

これだけの事をされても耐えますか?

石塚

耐えてしがみつきますよ。銀行に勤めてる人は絶対そう。

安田

へぇ。

石塚

絶対そう。だからダメなんです。

安田

でも今回は、常識的な下限を超えて報酬が下がる可能性もありますよ。

石塚

ありますね。だからうつ病が増えると思います。

安田
それでもしがみつくんですか?
石塚

しがみつくと思う。

安田

ちなみに銀行の一般職ってどのぐらいの収入があるんですか?

石塚

いやもう聞くも無残ですよ。

安田

そうなんですか。

石塚

総合職の半分もないでしょ。だって一般職って何やってるイメージですか?

安田

昔だったら通帳の記入とか。でも、いまは通帳なんて記入しないし。何やってるんですかね。

石塚

だから庶務雑務ですよ。

安田

そもそも窓口に人来ないですしね。

石塚

おっしゃるとおり。まあでも本丸にいる人は切実なんでしょうね。上から「人件費コストを半分にしろ!」って言われて。

安田

それって命令ですか?

石塚

もちろん。いろいろ徹夜で議論して「これはもう、一般職と総合職の統合しかないぞ」みたいな。

安田

でも銀行の収益って、優秀な総合職の人数に比例するんじゃないですか?

石塚

しないと思う。

安田

しないんですか?

石塚

もう、そういうビジネスモデルが終焉を迎えてるので。

安田

じゃあ、いま大量に抱えてる総合職は、ぶっちゃけもうやることがない?

石塚

そうですよ。だって国際的な金融格付けにおいて、みずほ銀行とトヨタ自動車のどっちが格付け高いですか?

安田

それはトヨタ自動車ですよね。

石塚

その時点でもう銀行を名乗る資格がないんですよ。本当に優秀な企業は直接金融の手段だっていろいろあるじゃないですか。

安田

確かに。いくらでもありますね。

石塚

これまでの延長業務しかやらない銀行って、本当に厳しいと思います。

安田

だから総合職をリストラすると。

石塚

ある意味賢いなって思います。

安田

解雇せずに収入だけ下げちゃうっていう。

石塚

そうそう。僕とか安田さんだったら「ふざけんな!」って暴れるんでしょうけど。そういうメンタリティないから。

安田

現場はどんな反応なんでしょう。

石塚

「あなたの評価は一般職並みです」って言われたら、銀行員のマインド持ってる人は「申し訳ありません」となる。

安田

ストぐらいはしてもいいと思うんですけど。

石塚

そういうことすると飛ばされちゃうから。安田さんとか僕みたいなのは、入行しても最果て支店に飛ばされてます(笑)

安田

じゃあ今後は総合職を採らなくなるんですか?

石塚

実際、新卒採用はかなり抑制してますよ。

安田

もう銀行に就職するのはやめたほうがいい?

石塚

かつての総合職のイメージは捨てたほうがいいです。

安田

でも学生さんって、今でも銀行の内定もらって喜んでそうですけど。

石塚

それはありますね。

安田

現状を知らないからですか?

石塚

そのとおりです。でも本当に優秀な学生は違いますけど。

安田

本当に優秀な学生は銀行を受けないですか。

石塚

いえ。大企業と金融の仕組みを学ぶために1~2年だけ働く。そしてすぐに見切りをつけて辞めていきます。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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