第153回「パナソニックはもう買うな!?」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第152回「本当のブラックは2割未満」

 第153回「パナソニックはもう買うな!?」 


安田

パナソニックで50歳以上を対象にした早期退職が始まりました。なんと4,000万円以上も退職金を上乗せするとか。

石塚

もう限界なんでしょうね。

安田

だけどパナソニックといえば天下の松下電器ですよ。

石塚

そうですね。

安田

松下幸之助さんは「うちがつくってるのは電化製品じゃなくて人なんだ」とおっしゃっていて。

石塚

ずいぶん昔の話ですね(笑)

安田

ずいぶん昔ですけど。だけど「絶対リストラしない」王道みたいな会社でしたよ。松下電器は。

石塚

そんなことないと思います。

安田

じゃあ、もし松下幸之助が生きていてもリストラしますか?

石塚

すごくむずかしい質問ですね。でも答えは「イエス」だと思う。

安田

へえ〜。

石塚

っていうか、松下幸之助がいま生きてたら、こんなに人を雇わないと思う。

安田

雇いすぎちゃったということですか。

石塚

バルミューダ的な会社をつくるんじゃないかな。

安田

ちょっと想像できないですけど。

石塚

ちっちゃな会社や研究所みたいな会社をたくさんつくる。

安田

日本の家電メーカーってもうやっていけないんですか?

石塚

生き残るには規模が大きすぎるってことですよ。

安田

でも縮んでいるとはいえ、国内マーケットには1億何千万人もいるわけですよ。

石塚

これ以上の高機能・高付加価値の電化製品っていりますか?

安田

もう、みんな満たされてるってことですか。

石塚

じっさい満たされてますよね。そうすると市場は縮む一方だから「あんな巨大な家電メーカーはいらないんじゃないか」ってことです。

安田

たしかに。「壊れたら買い直すけど」って感じですよね。だけどコロナの影響で家電は売れてるみたいですよ。

石塚

今は巣ごもり需要があるので。

安田

大きな流れにはならないってことですか。

石塚

そうですね。

安田

海外の家電メーカーはまだまだ伸びてるところが多いですけど。

石塚

海外のマーケットは、まだまだ家電を欲しい人がいっぱいいるから。

安田

そこで戦えるほどの力は日本のメーカーにはない?

石塚

ないでしょうね。

安田

昔はあったじゃないですか。なぜなくなったんですか。

石塚

もう家電領域で、日本じゃないとできないものってほぼないらしいです。

安田

なんと。

石塚

あとは「安さ」だけなんですよ。

安田

だけど「どうせ家電買うなら韓国製や台湾製じゃなく、日本製だろう」ってのが、まだあるんじゃないですか。

石塚

たとえば安田さんって、アイリスオーヤマの家電製品とか持ってます?

安田

持ってないですね。すぐ壊れそうで。

石塚

これ、いいんですよ。

安田

そうなんですか。

石塚

そんなに言うほど壊れないですよ。

安田

へぇ~。

石塚

「値段から考えれば十分でしょ、これ」って。たとえばコードレスの掃除機を買ったんですけど、1万2,900円でした。何の不自由もないですよ。

安田

いかにもパクリっぽいですけど。

石塚

「ちょっと重いかな」「ちょっとダサいかな」ぐらいです。まあ、べつに十分でしょうと。

安田

でも機能をそぎ落として安くしていけば、アイリスオーヤマさん的になりますよね。

石塚

なります。

安田

じゃあ国産で買うとしても、それで十分ってことですか。

石塚

そうなんです。

安田

日本のメーカーは高い商品をつくりすぎてると。

石塚

そうなんですよ。たとえばパナソニックの最新式全自動洗濯機。いちばん最上級はいくらすると思いますか?

安田

40万ぐらいじゃないですか。

石塚

さすが。38万円ですよ。そりゃあ、たしかにモーターもすばらしくて、縦置きのドラム式いいんですけど。私は妻が「買ってくれ」って言ったら却下します。

安田

却下ですか(笑)

石塚

却下しますよ。「38万も洗濯機に……いいよ」って、「渦巻き式で十分だよ」って。

安田

でも1年2年で壊れるものじゃないし。

石塚

じゃあ10年持ちますか?

安田

10年は厳しいですね。そういう意味では、昔ほど「つぶれない」っていう神話もなくなってきましたよね。

石塚

結構繊細だから。壊れると「ああ、安田さん。これ、全部替えないとだめだな」みたいな。「なんだよ」みたいな。

安田

確かに。

石塚

だいたい7年か8年ぐらいで洗濯機は買い換えてるような気がします。

安田

私はダイソンの掃除機を使ってるんですけど。

石塚

おお。

安田

「壊れた」って言ったら新品を丸ごと送ってくれました。

石塚

さすがですよね。

安田

日本のメーカーはその辺りが面倒だと感じますね。フタが壊れただけなのにフタだけを売ってもらえなかったり。

石塚

そもそも安田さんみたいな嗜好性の強い人だと、欲しい日本製家電なんてないでしょ。

安田

じつは冷蔵庫が欲しいです。テレビCMに出てる「冷凍のまま肉が切れちゃう」っていう冷蔵庫。

石塚

三菱ですね。冷蔵庫は絶対に三菱がいいですよ。

安田

へえ。そうなんですか。

石塚

はい。僕は4か月待って三菱買いましたから。

安田

すごいこだわりですね。

石塚

それぐらい差があるんですよ。パナソニックの冷蔵庫は買っちゃダメ。

安田

冷蔵庫の話になっちゃいましたけど(笑)パナソニックさんの今後ってどうなんですか?

石塚

う〜ん。人事で比べたとき、日立とパナソニックってすごく好対照なんですよ。

安田

それはどのように?

石塚

日立は一貫性があって、制度を変える時にも軸がある。パナソニックは2000年過ぎたぐらいからパナソニックとしての軸がないんですよ。単にトレンドに乗ってるだけ。

安田

それが製品にも反映されてると。

石塚

そういうイメージですね。パナソニックは施策でちょっと脚光を浴びるけど、一貫性がない。元を辿れば「マネシタ電器」ですから。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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