2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第161回「ソフトバンクに集う逸材」
ソフトバンクの社外取締役に?
はい。襟川(えりかわ)さん。コーエーテクモの。
コーエーテクモ?
コーエーという会社とテクモという会社が合併したんです。
コーエーって、あのゲームのコーエーですか?
はい。「戦国無双」で有名なゲームメーカー。
その襟川(えりかわ)さんがソフトバンクの取締役になったと。
はい。これは注目すべき人事だと思います。
それは「女性が取締役になった」ということが?
違います。財務で稼ぐ能力がずば抜けた人なんです。
財務で稼ぐ?
つまり投資スキルですね。コーエーテクモの利益の4割はファイナンス。まさに財務で稼いでるんですよ。
へえ〜。
で、孫さんはその腕が欲しい。
そりゃ欲しいでしょう。でもそんな腕を持ってるんだったら、自分でファンドとかやればいいじゃないですか。ソフトバンクの取締役なんてやらずに。
襟川さんはメリットがあると判断されたんでしょう。ソフトバンク経由の情報も入ってくるし、いろんなネットワークもできるし。
どうせなら国の資金を運用してほしいですけど。
いやいや(笑)それは分野が違うでしょう。
そうですか。
「どの会社にお金を入れると化けるのか」を見抜くスキルなので。
なるほど。投資先を見抜くってことですか。
はい。的確な投資先を見抜くスキル。
単なる為替や株価への投資ではなく。
それは金融商品のディーラーですね。
っていうことはM&Aに長けてるってことですね。
MAもそうですし、アーリーステージにお金を入れたり。
そういうスキルって、どうやったら身につくんですか?
襟川さんはパテント戦略がずば抜けてまして、必ずしも資本を入れるだけが投資じゃないんです。
パテント戦略?
つまり特許ですね。知的所有権を先に押さえるんです。
なるほど。
たとえば「戦国無双」というゲームは、パテントの塊と言われてまして。いっぱい特許を取ってるんですよ。
それは技術的な特許ですか?
技術もそうですし、著作権もそうですし、商標もそうですし。
パテント戦略は大企業ならどこでもやってそうですけど。
いや、意外に抜けています。
そうなんですか。
はい。襟川さんという人は本業の周辺で稼ぐのがうまいんです。
たとえばどうやって稼ぐんですか?
当然パテント料が入るじゃないですか。使用料とか。
パチンコ台やパチスロ台に「戦国無双」ってタイトルを使わせるとか。
はい。あるいは二次利用とか。技術特許もあります。操作するときの画面の動かし方とか。
動かし方に特許があるんですか?
こういう動かし方をするには、コーエーにライセンス料を払わないといけないとか。ゲームクリエイトの世界では、コーエーに技術料を払うケースがいっぱいある。
へえ〜。
これがバカにならない収益で。ゲームをつくると同時に技術をつくっちゃってるわけですよ。
なるほど。
その技術の権利を取得して使用料を取る。まあ傑物ですよ、この会社は。
それを作ってきたのが襟川さんだと。
はい。あのソフトバンクの孫さんが「アドバイス聞きたい」って言うんだから、超一級なんでしょう。
何歳ぐらいの方なんですか?
もう70歳のはずです。
なんと!70歳の女性がそんなすごいスキルと知識を持ってる?
ちょっとベールに包まれた方ではあります。ご夫婦で創業されて。
創業者なんですか?
襟川夫妻でコーエーという会社を始めたんですよ。
あのゲームのコーエーの創業者?
そうです。
そんなすごい人が今さらソフトバンクの社外取締役になるんですか。
孫さんが三顧の礼で迎えたと聞いてます。「ぜひ襟川さんのアドバイスが聞きたい」と。
人の会社を手伝うより、自分の会社の利益を伸ばしたほうがいい気もするんですが。
もう飽きたんでしょう。まあ巨万の富は築いてますし、ちょっと刺激が欲しかったんじゃないんでしょうか。
確かに。お金では動かないですよね。
お金じゃないですよ。
孫さんって勝負師なので、近くにいると刺激的で面白い経験ができそうですよね。
いやぁ、面白い話がいっぱい来るんじゃないですか。それを「襟川さん、どう思いますか?」とかって言われるの、結構楽しくないですか?
孫さんは昔から人を口説くのが上手ですよね。お金も出し惜しみしないし。
うまいですね。
ZOZOの前澤さんも孫さんに株を売っちゃいましたし。日本にはいろんな経営者がいますけど、孫さんってやっぱり特別な存在ですか?
もう極めつけに優秀な経営者のひとりだと私は思ってます。
世界的にも有名なんですか。孫さんって。
有名ですよね。世界的なネットワークもすごいですし。アメリカの第3位と第4位の携帯電話会社を買うぐらいですから。
企業買収も上手ですよね。
大企業の経営者とは大違いですよ。
例の原発事業とか。
高値でつかまされてね(笑)ボロボロになったらまた買い叩かれるみたいな。
サラリーマン社長とオーナー社長の違いでしょうか。
そうだと思います。結局は人の金なので。命かけて勝負してないんですよ。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。