第163回「その時がワタミの命取り」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第162回「増殖する八甲田山の悲劇」

 第163回「その時がワタミの命取り」 


安田

ワタミの会長がついに社長に復帰されるそうで。

石塚

虫のいい話ですよね。

安田

ワタミもコロナの影響で、対前年売上が一時9割ぐらい落ち込んでましたよね。

石塚

いや、コロナもそうですけど、その前がひどくて。

安田

その前?

石塚

創業者が参議院議員に転出したあたり。もうひどかったですよ。

安田

そんなに大変だったんですか。

石塚

そうですよ。2008年に社員の過労死問題でたたかれ、「ブラック企業」のレッテルを貼られ、業績が悪い中を清水さんっていう方が必死で立て直して。

安田

ということは「しんどい現場を置いたまま」議員になっちゃったってことですか?

石塚

その通りです。

安田

え〜ひどいですね。

石塚

はい。で、その後、清水さんが必死に立て直して黒字化した。そしたら黒字になったところで「俺がこんど社長に戻るから、おまえは副社長だ」っていう。

安田

それが今回の人事だと。

石塚

おっしゃる通り。

安田

今ってコロナで大変な時期ですけど。火中の栗を拾いに帰ってきたのかと思ってました。

石塚

いやいや。ワタミは今業績がいいんですよ。

安田

え!ワタミって業績いいんですか?

石塚

いいです。

安田

へぇ~。

石塚

清水さんが「和民」という名前を入れない、「ミライザカ」とか「三代目鳥メロ」で着々と黒字化して。

安田

あれは清水さんがやったんですか。

石塚

そうです。その後、テリー伊藤と組んだ「からあげの天才」というFCモデルが、これまた当たって。

安田

へぇ~。凄い人なんですね。

石塚

凄い人です。政投銀から調達した120億も「完済のめどが立った」と言ってます。

安田

すごい。

石塚

いま足元の業績は好調なんですよ。

安田

お酒も出せなくて、チェーン店は軒並みアウトだと思ってました。

石塚

FCは全部からあげのテイクアウトだから。居酒屋業態からの脱却がうまくできたんですよ。

安田

ミライザカなんて居酒屋みたいなもんじゃないですか。焼き鳥はありますけど。

石塚

あそこは少し売り上げを落としてますけど、それでも赤字にはならない。

安田

それはどうして?

石塚

食材の調達と価格設定を清水さんがうまくやられていて。足腰の強い業態なんです。

安田

一時は“ブラック事件”で「ワタミなんかで食べるか!」みたいな雰囲気でしたけど。

石塚

あれで居酒屋業態を脱しておいたのが逆によかった。

安田

今はもうブラックではないんですか?

石塚

働き手にとってはブラックでしょう。ただ働き手の大多数がそれに気づいてない。そこがこの会社の恐ろしいところ。

安田

何のために渡邉さんは戻って来るんですか?

石塚

業績がよくなったし、ひさしぶりにまた社長やりたくなったんでしょう。

安田

えっ、それだけですか!?

石塚

はい。

安田

「コロナで大変だし、やっぱ俺がやるしかないだろう」ってことじゃない?

石塚

本人はそう思ってるかもしれません(笑)もうあの人、自我が肥大してますから。

安田

もともと会長でも代表権はあるんですよね?

石塚

いったん清水さんに代表権を渡してます。ただ大株主ではあるので。

安田

戻って来たい時には戻って来れると。

石塚

オーナー支配ですから。

安田

だったら社長に復帰する必要もないでしょう。会長のままでもやりたいことはできるでしょうし。

石塚

政治の世界では通用しなかったし、「ひさしぶりに、またビジネスやりたくなったなあ」っていうのが正直なところじゃないですか。

安田

「ビジネスの表舞台に戻りたくなった」ってことですか?

石塚

その通りだと思います。

安田

それだけのために、その清水さんはナンバー2に降格されるわけですか?

石塚

はい。清水さんって、明治大学の学生のときにワタミでバイト始めて。優秀だからって超青田買いで、大学中退させて入社させてるんですよ。

安田

へえ〜。

石塚

この方はとても優秀で、人物的にもバランスがよくて、絶対に弱音を吐かない人。そのうえ新卒の生え抜きなので、オーナー社長にしたら使い勝手がいいんです。

安田

なるほど。

石塚

「アールの介護」を買収してワタミが介護事業に舵を切った時も、まったく勝手の違う事業のヘッドをやらされて。きちっと軌道に乗せてますから。

安田

すごいですね。

石塚

で、「俺こんど選挙に出るから、おまえ社長頼むな」って言われて。「えーっ、こんな赤字なのに!?」って、ひさびさに外食に戻ったら、ひどい状態で。

安田

それを立て直したところで戻ってきたと。

石塚

なんとかうまく立て直して、黒字化までしたところで。

安田

渡邉さんが社長に戻った場合どういう影響が出てくるんですか。

石塚

意外にワタミというブランドは「安くておいしいものを出す」って認知されてるんですよ。

安田

ということは、またワタミブランドを大々的に掲げていく?

石塚

業態は変わっていくでしょうけど。去年から焼肉業態も始めてますし。

安田

あれは渡邉さんの肝いりなんですか?

石塚

そうみたいです。コロナを配慮して個室化して、無煙ロースターをテーブルごとにつけて。値段が割と安めで、おいしい肉を出す。これも当たってますね。

安田

じゃあ、このまま業績は良くなりつづける。

石塚

いやぁ、この会社は足元にはいろんなものが転がってますから。

安田

それは人事問題ですか?

石塚

はい。労務問題に爆弾を抱えたままなので。危うい感じです。

安田

社内はどんな雰囲気なんですか。社員や幹部の人たちは、やっぱり渡邉さんへの忠誠心みたいなのが残ってる?

石塚

いや、忠誠心というよりも恐怖でしょうね。独裁企業なので超トップダウンなんですよ。それが嫌だったら辞めるしかないっていう。

安田

とはいえ、このご時世ですから。ワタミさんと言えども残業や休みは守ってやっていくしかないでしょう。

石塚

どうだろう(笑)人件費をものすごく抑制してますし。店舗はほとんどがアルバイトで正社員の給与も安い。これで成り立ってるという構造は1ミリも変わってない。

安田

石塚さんの予想ではワタミは今後どうなっていきますか。

石塚

おそらく何らかの形でもう1回労務問題が出てくると思います。そのときが命取りになるような気がします。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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