第186回「みずほの終わりと金融業界の未来」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第185回「テレビと一蓮托生の運命」

 第186回「みずほの終わりと金融業界の未来」 


安田

みずほホールディングスの社長が交代しました。

石塚

はい。

安田

「これで変わっていきます」って言ってますけど。

石塚

無理、無理(笑)

安田

今回の社長も興銀出身らしいですね。「ぜんぜん変わってないじゃないか」って書かれてました。

石塚

僕はみずほの社外取締役をもっと糾弾したほうがいいと思う。

安田

え?社外取締役ですか。

石塚

6人ぐらいいると思うけど「なにやってんだ!」って言いたい。

安田

まあこういう組織体制ですから。イエスマンに近い社外取締役を置いてるんじゃないですか。

石塚

そうなんですよ。でも一応、構造上は指名委員会があって。次の代表を決める指名委員会の委員長って社外取締役だから。

安田

そうなんですね。

石塚

委員長の責任はどうなってるんだと。

安田

なるほど。

石塚

メディアはもっと社外取締役に対して糾弾しないと。「おまえらなにやってるんだ」って言うべきなんです。

安田

社外取締役ってそんなに権限あるんですか。

石塚

ガバナンスが効いてない原因って、社外取締役の責任が大きいですよ。高額報酬を貰ってる割になにもしてない。

安田

みずほって元々興銀と富士がメインですよね。

石塚

そうです。

安田

富士銀行も力のある都銀でしたけど。派閥には入れなかったんでしょうか。

石塚

たぶん興銀が9割ですよ。

安田

そうなんですね。

石塚

第一勧銀出身は、一部例外を除いて全員いなくなったでしょう。

安田

へえ〜。そういうふうになってるんですね。

石塚

富士も本当に少数だけです。

安田

関連会社に行ってしまったとか?

石塚

ほとんど出ましたね。

安田

辞めちゃったということですか。

石塚

50代はグループにも居られないはずです。

安田

じゃあ実情は興銀が吸収した感じ。

石塚

おっしゃる通り。

安田

興銀以外の人がトップになるなんてあり得ないですね。

石塚

あり得ないです。

安田

つまり興銀のカルチャーが変わらないかぎり、変えようがないってことですね。

石塚

そうですね。商業銀行を2つ持ってる非効率さとか。4つのシステムを2社の運営会社で管理するとか。マンガみたいなことをやってますから。

安田

組織の9割も掌握してるならシステムぐらい簡単に統一できそうですけど。

石塚

実質のポストはそうなんだけど。そこにいろんなものがひも付いてるわけですよ。

安田

いろんなもの?

石塚

これは「もともと第一勧銀のお客さんだった」とか。いろいろ連続性があるわけです。

安田

トップダウンが現場まで通じないってことですか。

石塚

要するに、根本的な改革をぜんぶ先送りしてきた歴史ですよ。

安田

なぜ先送りにしちゃったんでしょう。

石塚

すごいパワーがいるし、絶対恨まれるし。だから先送りにしてきた20年ですね。

安田

今回こそは「抜本的な改革をやる」と書いてました。

石塚

ムリでしょうね。

安田

社内で若者の声が届く制度とか。「上の考えで勝手に決めずに、現場の声を吸い上げていく」って。

石塚

メディア向け工作のような感じがします。

安田

根本的にはなにも変わらないってことですか。

石塚

はい。ここが日本企業の“宿痾”みたいなもので。本当に切り込む人なんていないんです。そもそもそんな人はトップになれない。

安田

今の若手がトップになっても変わりませんか。

石塚

そこまでみずほ銀行があるんでしょうかね。

安田

もう風前の灯火ですか。これだけの大きな会社が。

石塚

これだけ金融システムでトラブルを起こすと、金融庁としても放置できない。1回国有化して、根本的に入れ替えて、って考えてるでしょう。

安田

うわさでは聞きますけど。本当にそういう可能性があるんですか。

石塚

前も言いましたけど、金融ハッカーなんかが入ると、とんでもないことになっちゃうから。信用不安とか、ひいては東京市場の金融システム自体にひびが入る。

安田

国有化したらどうなるんですか。

石塚

国有化すると、いったん連続性にリセットがかかる。システムも当然入れ替える。

安田

ゼロからやるってことですか。

石塚

そうです。

安田

大混乱になりませんか?その間どうするんですか銀行業務は。

石塚

銀行業務自体はどこかで仮営業させて。下手に改築を重ねるより、隣の土地に全面新築して移転させたほうが早いから。そういう判断になるんじゃないですか。

安田

それはシステムの話ですよね。そこ以外は基本的に変わらないってことですか。

石塚

どこまで金融庁が手を入れるかの話ですよ。

安田

組織を変えないと、また同じようなことが起こりそうな気もしますけど。

石塚

おっしゃる通り。一旦ゼロにして、お客さんだけどこかの銀行にくっつけてしまうか。

安田

そういう可能性もあるんですか。

石塚

あるでしょうね。「三菱、引き取ってくれよ」と。

安田

そっちのほうが現実的な気がします。

石塚

国有化でワンクッション置いて三菱になる、みたいな感じかもしれません。

安田

住友にはなりませんか。

石塚

そっちの可能性も当然ありますよ。もしくは「東と西で分けようぜ」って話もあるかもしれません。

安田

なるほど。

石塚

「もうメガバンクは2行でいいよ。赤と緑でいいよ」ってことになるのかな。

安田

あとは中小向けのメガバンクを北尾さんがつくれば、もう十分だと。

石塚

そうですね。3つでぜんぶ済むんじゃないですか。

安田

4つも5つもいらないですよね。

石塚

いらないです。

安田

学生にあれほど人気の業界だったのに。

石塚

今でも「銀行が安定企業だ」って考えてる20代はいます。もしこの対談を見てたら、絶対すぐキャリアを考え直したほうがいい。

安田

そんな人いますかね。

石塚

これがたくさんいるんですよ。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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