2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第197回「焼肉事業の未来」
第198回「ハロワ求人の真実」
ハロワ採用のその後について教えてください。
まず2年前にハローワークの申請システムがすべて一新しました。
そうなんですか。
はい。コロナの影響で。わざわざ所轄のハローワークに足を運ばなくても、求人票を電子申請できるようになった。これがいちばん大きい変化です。
昔は「必ずハローワークに行ってください」って言ってましたよね。
そうなんですよ。会社側からすると、求人を申し込んだり、つくったりするのが、すごく楽になった。
求人票の中身はどうですか?「ちゃんと情報発信している会社がない」って、おっしゃっていましたけど。
相変わらずハローワークは求人票のレベルが低いです。構造はどんどんハイテク化してるんですけど。
ハイテク化してるんですか。
Google検索で上位になりやすいように、スマホ連動、Google連動はとてもいいです。
へぇ~。
たとえばIndeedに出ている求人情報をポチッと押すと、「IDとパスワードを入力してください。もしくは新規登録してください」って出るわけです。
出ますね。
これ面倒くさくないですか?
面倒くさいです。
中身を見ようと思ったら新規登録しなくちゃいけない。「面倒くさいなあ」ってなる。ところがハローワークは、ポチッとやるとぜんぶ情報が出てくる。
登録しなくても?それはどうして。
要するに有料媒体はぜんぶ見せたくないから。囲いたいから。
なるほど。登録させたいと。
登録させたい。けど、べつにハローワークはそんな縛りがないので。
ユーザビリティ最優先でいけるわけですね。
その通りです。
ということは有料媒体よりも使いやすい?
求職者にとって探しやすいし、見やすいです。
若い求職者もよく使ってるんですか?ハローワーク。
目につきやすいから使いますよね。
若い子にとってハローワークって、どんなイメージなんでしょう。
リクナビやIndeedと変わらないです。
へぇ~。
求人媒体のブランド価値って、今はほとんどないですから。
あんなにCMやってるのに。
はい。とくに30歳以下は顕著ですね。
じゃあ何のためにテレビCMやってるんですか。
僕も不思議です。「誰のための宣伝なのかな」って。
つまり30歳以下は求人サイトにこだわらないと。
「このサイトで調べよう」という意識はないでしょうね。職種や地域でググるだけ。
じゃあ有料媒体に求人を出す必要性はない。
正直あまりないですね。
中には「これは有料媒体を使ったほうがいい」という案件もあるんですか。
知名度のあるお客さんは、有料媒体・求人サイトを組み合わせると効果がいいです。
それはどうして。
ネームバリューのある会社はワンショットの効果が大きいから。1回出すだけで十分なんですよ。
知名度がないとそうはいかない?
知名度がないと掲載期間を長くするしかない。媒体会社はそんな話はしませんけど。
つまり1回の掲載では採用できないと。
そう。目につきにくいから。会社名で探さないし。そうすると「エリア×求人ジャンル×こだわり」という、絞り込みの勝負になっちゃうわけですよ。
そこの勝負になると1回掲載では無理なんですか。
ターゲットが少ないですから。1回だとギャンブルと同じになります。本気で採りに行くなら長期掲載するしかない。
ターゲットを広げるとどうなるんですか?
応募が来ない。来ても採用に結びつかない。
なるほど。だから知名度が低い会社は無料媒体を活用した方がいいと。
そういうことです。
ちなみにハロワは「優秀な人が採れない」「専門職は採りにくい」というイメージがあるんですけど。
先日、長岡(新潟)の歯医者さんで歯科衛生士さんが3名採用できました。
それはハローワークだけで?
そうなんですよ。歯科助手・受付も採れました。地方企業さんは絶対ハローワークをやったほうがいいです。
媒体費はゼロですよね。
ゼロです(笑)
期間はどれぐらいですか。
3〜5ヶ月を想定してたんですけど、2ヶ月足らずで終わっちゃいました。
すごいですね。他の歯科医院はハロワに求人出してないんですか。
出しているのですが、中身スカスカな求人票ばかりです。「うちはここが違います」「こんな方にマッチします」というポイントをちゃんと載せてあげれば効果が出ます。これは歯科医院にかぎらず。
もっとたくさん書かなきゃダメだと。
スカスカというのは情報量の問題ではないんですよ。中身のある、求職者に刺さる情報をちゃんと書いてあげないと。
つまりソフトが大事ってことですか。
おっしゃる通り。媒体にお金使うより、ソフトにお金を使ったほうが、はるかに安上がりだし効果が出る。
なかなかそれに気づかない人が多いですね。
本当にそうで「なんでやらないのかなあ」って思う。だって、やったところはほとんど結果が出ているわけですから。
安い方が効果出るなんて信じられないんでしょうね。
結局、経営者ってそう考えるんですよ。「なかなか採れないんだったら、よりお金を使わなければ」って。「ちょっと待った」って言いたいですけど。
もったいないですね。
残念ながら中小企業の経営者は人に関するリテラシーが低すぎます。
知り合いの経営者に話をしたら、みんな石塚さんを紹介してくれって言いますけど。
安田さんの知り合いはリテラシーの高い人が多いんですよ。
ちなみにこの求人票って石塚さんが自分で書いてるんですか?
自分で取材して、自分で考えて、自分で書いてます(笑)
大変ですね(笑)
だから月マックス10件しか出来ません。
人を育てて代わりにやらせようとは思いませんか?
思いません。教えても出来ないと思うし、僕は求人票を作るのが大好きなんですよ(笑)
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。