第261回「人手不足のいく末」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第260回「神になった男」

 第261回「人手不足のいく末」 


安田

2023年上期の倒産がなんと4000件。原材料アップと人手不足が原因だそうです。

石塚

そこにコロナ融資の回収が重なって。

安田

厳しい時代ですよね。

石塚

たまたま3つがいっぺんに重なっただけで。はっきり言うと経営者の実力不足じゃないですか。

安田

厳しいですね(笑)

石塚

時代が変わったんですよ。

安田

今までのように真面目に管理しているだけではもうダメだと。

石塚

ダメになるパターンは2つあって。元々利幅が少なくて自転車創業的なところはもうジ・エンド。

安田

もうひとつは?

石塚

事業を続けるだけでそこそこ儲かってた会社。環境が変わって、材料費高騰・燃料費高騰で一気にバランスが悪くなってきた。

安田

なるほど。そういう会社もあるんですね。

石塚

デフレだったし。地方には多いですよ。

安田

地方は人件費も安いし。

石塚

おっしゃる通り。だけどそこも厳しくなってます。原材料費も人件費も上がってるから。

安田

どうしたらいいんでしょう。

石塚

事業再生のプロ中のプロに聞いたことがあります。事業再生でまずやることは、新商品を作る前に既存商品の値上げだそうです。

安田

値上げですか。

石塚

既存商品の値上げをするのが一番早いと言ってました。

安田

「値上げして売れなくなる」ってことが、皆さん怖いわけじゃないですか。そこはどうするんでしょう。

石塚

もちろん色んな手を打つんですけど、意外と「値上げしてください」って言うと、半分ぐらいは「わかりました」って言ってくれるそうです。

安田

そうなんですか?

石塚

要は「その勇気がないんだ」と。「ずっとこの値段でやってもらってるし、今回こうなったし、わかりました。今回は値上げに応じます」ってところが大半ですって。

安田

今までが安すぎたってことですよね。卵も安すぎたんですよ。ちょっと値上げしただけで「買えない」とか言われますけど。300円とかですからね。

石塚

そう。全員で首絞め合っているわけですよ。

安田

このままだとマズいですよね。上期だけで4000件も潰れていて。下手すると1万件を超えるかもしれない。

石塚

廃業も含めてですけどね。

安田

この数字は加速していきますよね。ギリギリ踏ん張ってる会社も多いので。

石塚

でしょうね。

安田

倒産が増えると人手不足って変化しますか?倒産したところから人が出てくるじゃないですか。

石塚

二極化するでしょうね。

安田

どのような二極化ですか。

石塚

うまく浮いた人材を生かす会社とそうならない会社。

安田

そうならないのはどんな会社ですか?

石塚

たくさんありますよ。「浮いた労働力を違うところに」って頭のいい人は考えるんだけど。ただ余ってる人を持ってきたからって、現場はそんなに単純じゃない。

安田

誰でもいいわけではないと。

石塚

「誰がやってもできる仕事」というのは、みんなが嫌う仕事だったりするわけです。なかなか世の中そう上手くはいかない。

安田

たとえば建設業はすごく人不足ですよね。小さな建設会社から出てきた人を大きな建設会社に回せばうまく行きませんか。

石塚

建設業はそうなるかもしれません。小が大に飲まれて、総数は一緒なんだけど中身はかなりシンプルになっていく。

安田

飲食はどうですか?ここもかなり人不足ですけど。

石塚

飲食は25兆円市場と言われてますが、中小企業・零細企業の巣窟みたいになっていて。ここはほとんどが淘汰される。

安田

それは人不足で?

石塚

人不足と原材料費アップですね。

安田

そこから出てきた人材で他の飲食店はうまく回りませんか?

石塚

そんなに単純ではないですね。まず飲食を辞めた人が飲食には行かない。

安田

でも飲食が好きな人もいますよね。

石塚

ひとりでお店をやってる大将なんかは大好きですね。だけどこの手の人材は他に行っても使えない。

安田

なるほど。難しいですね。

石塚

飲食業界の人不足はずっと続くと思います。

安田

大手のチェーン店は時給2000円に近いところも出てきました。

石塚

それでも足りないんですよ。とにかくまず省人化と自動化を進めなきゃいけない。あとは時給プラスアルファの付加価値ですね。企業の魅力合戦になるんじゃないですか。

安田

最終的にはどういう飲食業が生き残ると思いますか?

石塚

総合力を活かしたチェーンと、個性的で強みを持った個店の二極化になる。

安田

スケールメリットで利益を出すか、値上げしても成り立つぐらいの魅力があるか。

石塚

おっしゃる通り。

安田

宿泊業はどうですか。

石塚

宿泊は大幅に外資化されるでしょう。

安田

人材もどんどん外資系に流れていきそうですよね。待遇も良さそうなので。

石塚

そうなるでしょうね。

安田

地方の安い民宿とかはどうなりますか。

石塚

安い民宿で勝負するなら200店、300店やらないと利益が取れない。ゴルフ場もまとめて運営する会社が出てきてます。

安田

そういう会社は人不足をどうやって解消するんですか?

石塚

本当に必要なところ以外は無人化・省人化していくでしょうね。

安田

民宿やホテルで働いていた人たちはみんな外資に吸収されるんでしょうか。

石塚

そこも二極化でしょう。「この人たち誰かいる?」となった時に手が上がるかどうか。上がる人はどんどん吸収されて、そうじゃない人は残される。

安田

これだけ人手不足でも?

石塚

無理ですね。「あげるって言われても要らない」って人が市場に溢れる可能性があります。

安田

その人たちはどうなるんですか。

石塚

時給や月給を下げて、条件を譲歩して、どこかにぶら下がるしかない。

安田

誰もやりたがらない仕事を安い報酬でやるわけですね。

石塚

いや。人間って、困ったから「なんでもいいです」とは言わないので。

安田

じゃあ、どこにぶら下がるんですか。

石塚

おそらく人材派遣会社がうまく吸収すると思います。人不足の会社は山ほどあるから。派遣先には困らないし。

安田

非正規雇用がまた増えていくわけですね。

石塚

そうそう。人材派遣会社だけは、この倒産と廃業を朗報だと考えてるでしょうね。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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