2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第292回「大学に行く前にしっかり考えよう」
保育士さんが奨学金を返すために風俗店で働いてたみたいで。懲戒免職になったそうです。
懲戒処分で「停職3か月」と言われて、「だったら辞めます」という流れだったみたいです。
そうなんですね。こういうことって表に出ないだけで実はたくさんあるんでしょうか。
ありますよ。何百万という借金を背負って新社会人になるんですから。普通に働いていたら返せませんよ。
奨学金を返すために男はマグロ漁船、女は風俗、みたいなことが現実に起きていると。
はい。今は親から学費が出ないから。
親も出せるほど余裕がないですもんね。
だって学費が30年前の2倍なのに給料は下がってるんですよ。出せるわけがない。
学費が払えなくて中退する人も多いんですよね?
仕方なく中退して働く人が増えてます。優秀な人もたくさんいますよ。
大学に入る能力があれば中退だろうが卒業だろうが能力は変わらないのに。
そうなんですよ。だけど彼らは高卒扱いになっちゃうわけです。
かわいそうですね。借金を抱えて社会人になる人も大変だし。どうしたらいいんですかね。
ちょっと暴論に聞こえるかもしれないけど、僕はもう大学に行かせないようにしたほうがいいと思う。
高卒で働けばいいと。
我々の世代って何%ぐらい大学に行ったか知ってますか?
40%ぐらいですか。
安田さんの頃は24.1%。つまり4人に1人ぐらいだったわけですよ。それが今は57.7%。つまり昔の倍以上の人が大学に行っちゃった。ここが問題なんです。
行かない方が良かったと。
本来だったら18で高校を卒業して働いていた人たちを、みんな受け入れちゃった。
高卒と大卒で生涯賃金が「1億円違う」と言われてますから。1億に対する先行投資としては行くんじゃないですか。やっぱ大学に。
だからそこを変えればいい。18歳で初任給38万円出せばいいわけでしょ。
能力が高いのであれば、高卒だろうが中退だろうが高く払って採ればいいと。
おっしゃる通りです。若年労働人口がこれだけ減少するんだから。「18歳でもうちは30万でも40万でも払うよ」って。
そんなことが現実的に起こりますか?
半導体のTSMCなんかやってきますよ。高校生にいきなり年収600万とか700万とか。
なるほど。
別に最終学歴なんて関係ない。若いってだけで今は宝石のような価値があるんだから。「高卒でもこれだけの報酬を払います」という会社が増えてきたら、別に大学なんか行かなくていい。生涯賃金も変わらなくなりますよ。
大卒と高卒で生涯賃金が変わらなくなる?
はい。だって10年も経てば日東駒専レベルなんて誰でも入れるようになるんですよ。今でもFランクの大学は筆記試験に誰も来ませんもん。
そうなんですか。
推薦とか総合選抜型で集めるわけです。そうやって確保しないとやっていけないから。
10年経てば日東駒専レベルもそうなっていくと。
間違いなくそうなります。もう大卒なんて何の価値もなくなりますよ。
本当に勉強したい人だけ大学に行きゃいいと。
そうです。本来の目的に立ち返ればいいんですよ。
税金を使って大学の無償化なんてやるより、高卒と大卒の収入格差をなくしたほうがずっと早いわけですね。
僕が今高校生だったら半導体か大手食品メーカーの製造職に行きますよ。初任給も高いし工場は綺麗だし衛生レベルも高いし。見栄やプライドでホワイトカラー職についてもブラック労働させられるだけ。
ホワイトカラーはもうオワコンですか。
まず数が激減しますよ。一部のエリート以外はそもそも採用されない。無理してそんなところに入るよりブルーカラーで報酬の高いところに行った方が絶対にいい。
なるほど。そうなると高卒も大卒も変わらないと。
変わらない。時間通りに終わるし、福利厚生はいいし、休みもあるし。「石塚くん、有休20日ちゃんと消化しなきゃダメだよ」みたいな。
莫大な借金を背負ってまで大学に行く必要はないと。
学歴なんてなくても欲しい会社はいくらでもあります。変なプライドを捨てて高卒で働いたほうが人生ハッピーです。大学に行く前にちゃんと考えたほうがいい。何百万も借金を抱える価値なんてもうないんです。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。