2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第297回「JALとANAの未来について」
JALとANAのコロナ後の業績に明暗が出ているそうです。
売上はどちらも回復してるけど収益にかなり差がありますね。
国際線の単価がすごく上がってるみたいです。インバウンドの影響でしょうか。
そう思います。これからも増えることはあっても減ることはないでしょうね。
国際線に関してはJALの方が有利に見えるんですが。なぜここまで収益に差が出るんでしょう。
人件費の差ですね。JALとANAでは人件費率に10%の差があるから。JALが19.5%でANAが9.7%ですよ。
なぜ同じ業界でこんなにも差が出るんですか?
JALって破綻前から、ものすごく給与水準が高かったんですよ。
昔の国鉄みたいな?
おっしゃる通り。JALには 5つの強烈な労働組合が職種ごとにあって。パイロット、CA、整備、という感じで、それぞれが力を持ってるんです。
それで経営が立ち行かなくなって破綻したわけですよね。
おっしゃる通り。
JALを潰すわけにはいかないってことで、稲盛さんが入って改善して。そこで相当な無駄を削除して収益体質になったはずですよね。
稲盛さんが奮闘努力されて、この結果ってことです。
なるほど。前はもっと酷かったと。
もっとすごかった。だから破綻するわけですよ。
今でもまだ人件費率で2倍の差があるという話ですが。2倍って致命的な気がするんですけど。これでもやっていけるんですか。
そこが両社の特徴だと思うんですよ。両社のトップが戦略を語る面白いインタビューがあって。
ほほう。
JALはCA出身の新社長で、かつての旧東亜国内航空、JAS出身の方が女性社長として就任したんです。
女性社長なんですね。
その新社長が打ち出した戦略は一言で言うと「社内調整をしっかりやります」ってこと。つまり社内調整型がJALのトップなんですよ。
労働組合もひっくるめて丸く収めるってことですか。
おっしゃる通りです。いろんな問題があるけど「粘り強く話をしてオールJALで頑張りましょう」と。
もうコストカットは終わったから、これからみんなで頑張ろうと。
ところが実際には、現場が反対して大幅なコストカットは実現できなかった訳ですよ。
あの稲盛さんでも難しかったんですね。
稲盛さんが頑張って大幅な改革をした。これからは女性をトップに据えて、社内調整型の戦略を打ち出して、「なんとかこの辺で」っていうのがJALなんでしょう。
根っこは変わっていないと。
変わってない。一方で全日空の社長はパイロット出身で、指導力と実績重視のトップダウン型なんですよ。
ぜんぜん違いますね。
人件費比率も違うし、トップの姿勢や戦略も違う。社内調整型が勝つのか、トップダウンの指導力グイグイ型が勝つのか、すごく見物ですよ。5年後には結果が出ると思います。
結果は見えている気がしますけど。JALが勝てるポイントってあるんですか。
JALってすごくスタッフに手厚いんですよ。たとえばCAの勤務時間もANAは飛んでる時間だけ。だけどJALはその前後までカウントする。
なるほど。社員にとってはいい会社ですね。
はい。有名な話なんですがJALってパンティストッキングは全部クリスチャンディオールで、会社支給だったんですよ。
なんと。
JALは元々が国営企業なのでコストをすごくかけがちなんです。一方でANAは追いかける立場だから当然ストッキングは国産だし、飛んでる時間しか給料は出ないし。
その割にANAの人ってモチベーションが低いようには見えないです。
そこがやっぱりトップダウン型の指導力の強さですよ。
やっぱり最後はANAが勝つんじゃないですか。
このビジネスは国際競争だからコスト競争は避けられない。会社の安定性で言うとANAに軍配が上がります。
ですよね。収益率の低いJALの方が報酬は高いって。矛盾してますよ。
JALはブランドと共にそういう負の遺産も背負ってるわけですよ。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。