2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第316回「スポーツに見るマネジメントの未来」
日本のスポーツは遅れてると言われてますよね。教え方とか監督の関わり方とか。
今はかなり変わりつつあります。海外で経験を積む人が増えてるから。10代の終わりぐらいから20代前半までどんどん海外で経験、トレーニングして。
そうなんですか。
たとえば男子バレーボールも長い間低迷してたけどオリンピックでメダル狙えそうなところまでいったり。
確かに。あれは海外で育った日本人が増えてきた影響ですか。
その通りです。
「東洋の魔女」と言われて根性で金メダル取った頃も強かったですけど。
懐かしいっていうか、古いね(笑)
当時と比べて教え方が下手になったということでしょうか。
単純に世界がもっと進化してるってことでしょう。どの競技もまずテクノロジーが違う。データが基本になっていて画像解析も進んでるし。
投げた球の回転数までわかるらしいですね。
その通り。バッターもそれを見て対策を立ててくるし。とにかくテクノロジーがものすごく進化してる。
そこが大きな差ですか。
あとは各分野のプロがたくさん関わっていること。バレーをやったことはないけど心理学のプロとか。コーチングのプロとか。フィジカルの専門家もいるし。君の身体でプレイするなら「ここを鍛えなきゃダメだ」って科学的にアドバイスをもらえて。
なるほど。プロの集団が選手を育ててマネジメントしてると。
そう。一方で日本はひとりのカリスマが全部やってる。「俺の時代はこうだった」「俺はこうやって結果を出してきた」って押し付けて。要は個性化を許さないわけですよ。オーダーメイドな練習メニューなんて作れない。
海外ではその道のプロが「その人にとってベストな練習のやり方」を考えてくれると。
そもそも最初から競技を絞らないので。なるべくいろんな競技を複数やらせて適性を見ながら絞り込んでいく。
確かに。アメリカの高校生って野球もアメフトもバスケもやってます。
日本みたいにリトルリーグからずっと野球なんてことはしない。
海外で活躍する日本人が増えてますけど。そういう人たちは海外のトレーニングメニューを取り入れてるんでしょうか。
文部科学省の学習指導要領から遠い分野ほど世界的な競争力が高いんですよ。
なんと。
スポーツはその典型で。もう早い段階から海外でプレーしたり、海外の高校や大学に進学することが割と当たり前になってきてる。
いいことじゃないですか。
一方で真逆の環境もまだまだあるわけですよ。たとえば同志社大学のラグビー部とか。
ラグビーの名門大学ですよね。
そう。昔は日本選手権といえば同志社大学だったんですよ。大学選手権を何連覇もして。だけど今は同志社って2回戦行くかどうかぐらいで。
そうなんですか。
今、関西で1番強いのは天理大学じゃないですか。同志社は全然下です。理由は簡単で、黄金世代のOBが老害になってる。同志社のラグビージャージーを着た人以外は同志社に関われないんですよ。
日大もそういうイメージですよね。
結局そうやって閉じてるところは不祥事も起こりやすいし選手も伸びない。
なるほど。
閉鎖的な組織はもう無理ですね。
プロ野球もいまだにナベツネさんが仕切っていると言われてますからね。
プロ野球もメディアも全部仕切ってますよ。
大企業は多かれ少なかれそういうイメージです。OBがずっと権力を握っていて。
経産省はそこを変えようとしていますね。敵対的買収でも「ある程度認めます」という方針に変えて。
敵対的な買収を認めちゃうんですか?
丸ごと買収すれば技術力とかいい部分を活かせるわけですよ。経営陣を全部取り替えて。
なるほど。新しい株主が上だけ入れ替えちゃって。
そう。またしても外圧頼みなんですけど。日本人は黒船が来襲しないと変わらないから。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。