2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第321回「こじはるモデルの凄さ」
小嶋陽菜さんってAKBの?
そうです。中心メンバーだった人ですね。
タレント業は引退したんですか?
僕も芸能通じゃないから詳しいことわかんないですけど。自分で事業を始められて。それをこの度売却されたみたいです。
どんな事業なんですか?
アパレル会社ですね。ファッションブランドです。
なるほど。アイドルの起業でありがちなパターンですね。
Herlipto(ハーリップトゥー)というファッションブランドなんですけど。すごく上手いなと思う部分があって。
小嶋さんは社長なんですか?
そうです。ハートリレーションという会社の社長であり株主でもある。
ひとりで始めたってことですか?
いや、当然バックアップしてる人はいらっしゃるんでしょうけど。このファッションブランドの売上が30億ぐらいあるわけですよ。
すごいですね。
すごいです。小嶋さん自身も数億円稼いでらっしゃるみたいで。やり手ですね。バカじゃできないです、こんなの。そして最後は売り抜けるっていう。
売り抜けたんですか?
そうなんですよ。株式会社ゆとりという会社に17億円で丸ごと事業売却しました。
給料を含めて億単位の利益が出てたらそれくらいの価値はありますよね。
おっしゃる通りです。SNSを使ったブランドの作り方もすごく上手いし。女性ファンをすごく上手に掴んでいます。
へえ。女性ファンが多いんですか。
ブランドコンセプトがいいんでしょうね。ビューティ系の化粧品とかスキンコスメの商品も評判が高いと聞いてます。
なぜ売却したんですか?
資本力のあるところに売却することで自分が作ったブランドを加速させたいと。で、自分は商品開発とかにもっと時間を使いたいっていう、すごく真っ当な理由ですね。
バランス感覚が素晴らしいですね。
そうなんですよ。びっくりしました。
芸能人が知名度を活かしてファッションブランドを立ち上げても、あまり長く続かないイメージです。そういう意味では出口戦略がすごく大事なんでしょうね。
そこが上手だなと思って。小嶋陽菜さんのビジネスモデルってファンマーケティングからスタートしてるわけですよ。今のアパレルって工場を持たなくても出来るので。
化粧品も出来ちゃいますよね。こういう感じで作ってほしいっていうと製造を請け負ってくれる会社があって。
安田さんがいつも仰っているコンセプトとネーミングですよね。彼女の発信力もフル活用して。マーケッターとして本当に天才的ですよ。
そんな才能があったんですね。
「もっと好きなことだけやりたい」ってことで事業売却まで決めて。本当に見事だなって感じです。これだけの売り上げ規模を作るんですから。
事業って売り時がすごく大事ですよね。「まだこれから」って時が一番高く売れる。
おっしゃる通り。だけどそういうステージって経営者は自分でやりたがるんですよ。
分かります。で、売ろうと思った時には価格が暴落していて。振り返ってみたら「あの時に売っておけばよかった」ってみんな言いますもんね。
普通はそうなんですけど。この方は「これからピークだ」って時にもうバサッと売ってしまう。
本業が経営者じゃないから出来るのかもしれませんね。
まさにそこなんですよ。これって有名芸能人や有名スポーツアスリートの新しい生き方だと思って。こじはるモデルがお手本になるかもしれない。
自分の知名度やファンとのつながりを活かしてブランドを立ち上げて、ある程度儲かるところまでいったら事業売却してしまうと。
そう。また次の事業を立ち上げてもいいし。小嶋さんみたいに好きな所だけやり続けてもいい。素晴らしい成功事例ですよ。
単なるアイドルかと思っていたらこんな才能があったんですね。
まったくの仮説ですが、小嶋さんは秋元康さんの手法をよく見てたんじゃないですか。
なるほど。「そうか、こうやって儲けるのか」と研究していたと。
僕の仮説ですけどそんな気がします。お見事ですよ。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。