この記事について
2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第334回「週休3日で生まれるもの、なくなるもの」
第335回「給与アップ交渉代行サービス」
安田
退職代行から1歩前進して「給与アップ交渉代行」というサービスがあるそうです。
石塚
「社長、給料上げてください」って弁護士が交渉しに来るっていう。
安田
組合も力がなくなってきたし。給料の交渉って海外では当たり前みたいですけど、日本人はなかなか自分で言い出しにくいみたいで。
石塚
安田
このサービスは「給与アップを呑んでくれなかったらそのまま辞める」という退職代行も兼ねたセットサービスだそうで。
石塚
もうプロ野球のエージェントみたいになっていくんじゃないですか。僕はとてもいいと思います。だって自分のサラリーの話を社長と交渉ってやっぱ話しづらいじゃないですか。
安田
話しづらいですよね。お金の話って日本人はしちゃいけないような空気があります。小さな会社だと会社の状況もわかりますし。
石塚
安田
社員30人の会社で10人まとまって1人の弁護士さんに代行を頼んできたとしたら、もう断れないです。賃上げ呑まざるを得ない。
石塚
その時点で社長はもう根本的に考え直さなきゃいけないですね。この会社をどうするか。
安田
弁護士さんが入ることによって交渉もしやすくなりそうですよね。「ちょっと10万はきついんで、7万ぐらいでなんとかなりませんか」みたいな。社員相手にそんな交渉できないけど。
石塚
経営者も代理人を立てればいいと思う。代理人同士で8割ぐらいまで詰めて。
安田
なるほど!まさにプロ野球の契約交渉みたいになっていくわけですね。
石塚
おっしゃる通り。代理人同士なら評価の話もドライに伝えられるじゃないですか。
安田
石塚
一気に中小企業の給料が上がっていくきっかけになるかもしれません。
安田
石塚
いいことですよ。ようやく日本人の賃金が真の意味で上がるんじゃないですか。
安田
石塚
サイズダウンするしかないでしょうね。給料を上げても利益が出るところまで。
安田
「社員の雇用を守っている」と思ってる社長は腹を括れるかも。社員の側から突きつけられることで。
石塚
いい機会になりますよ。30人のうち20人が辞めるんだったら、「じゃあ残った10人で規模を縮小して、利益が出る体制に持っていくか」みたいな。
安田
社員の側もどんどんドラスティックになっていくんでしょうね。
石塚
でも安田さん、面白い話があって。最近ものすごく昭和のスタイルの会社が脚光を浴びてるのご存知ですか。
安田
石塚
ちょっと暑苦しいぐらいの人間関係とかエモーショナルな会社が20代の支持を集めてたりするんですよ。
安田
そういう会社が好きっていう人もゼロではないですからね。100社に1社くらいはそういう会社も成り立つんでしょうね。
石塚
そう。そこに思いっきりターゲットを絞り込んで。「超昭和な会社で働きたいんだ」っていう1〜2%を狙っていくっていうのはありです。
安田
そもそも中小企業は何らかのエッジを立てていかないと。難しいでしょうね。
石塚
事業構造や収益構造を見直すか、「僕は所属してるだけで本当に嬉しいんです」って会社を作るか。どっちかしかない。
安田
「昭和の会社にすれば人は来るんだ」って勘違いしないでほしいですけど。非常に少ないパイを狙ってるんだってことを理解しないと。
石塚
これは再現可能性がめちゃくちゃ低いんですよ。やれる会社自体が本当に限られて。結局中途半端なことやっちゃうじゃないですか。中小企業って。
安田
そうですね。中小企業って「給与も休みもそこそこ、仕事もそんなに厳しくないし、残業もあまりありません」みたいになりがちです。
石塚
そうそう。ファミレスでご飯食べるようなもんで。お腹は満たせるかもしれないけどワクワク感乏しいみたいな。
安田
それこそ週休4日に振り切っちゃうとか。正社員は全員週3日勤務にするとか。しかもそこそこ稼げるよっていう。
石塚
安田
石塚
安田
この弁護士さんのサービスは一気に広がると思いますか?
石塚
広がると思います。国民民主党が「手取りを増やします」って言っただけであんなに議席増やすんだから。どんだけ日本人の働き手は手取りが少ないんだって話ですよ。
安田
「そろそろ辞めよう」と思ってる人って結構いるじゃないですか。転職サイトに登録してる人とか。その人たちに「辞める前に1回交渉させてください」ってCM流したら、すごいブームが来そう。
石塚
そこはもう狙ってるでしょう。アディーレとかベリーベストとか。彼らのマーケティングは本当に天下一ですよ。
安田
石塚
僕らは他人事だから楽しめるんですよ。雇わない経営だから。人を雇って利益を出してる経営者は大変ですよ。
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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。