第343回「若者は仕事を選びたい放題」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第342回「有名大企業の未来予測」

 第343回「若者は仕事を選びたい放題」 


安田

タイミーの真似をする会社がいっぱい出てきましたね。

石塚

増えましたね。スキマバイトのアプリ。

安田

いろんなアプリ経由で来るから、労働時間が管理できなくなっているみたいです。

石塚

問題になってますね。気づいたら労基法違反になっていて。これ雇った会社の責任になっちゃうんですよ。

安田

会社としては怖くて使えなくなりますよね。スキマバイト。

石塚

恐らくこれはQRコード決済と同じ道を歩むと思います。

安田

それはどういう道ですか。

石塚

集約されていくってことですよ。QRコード決裁ができる「〇〇ペイ」って一杯あったじゃないですか。

安田

ありましたね。あれどうなったんですか?

石塚

淘汰されて残ったのがpaypayと楽天payぐらいですね。

安田

スキマバイトのアプリもそうなっていくと。

石塚

そう思います。「おい、こんなの集約してくれよ」「40時間超過で残業代をうちが持つの勘弁してくれよ」ってお客さんに言われる。

安田

トータル時間がわからないって怖くて使えないですよ。

石塚

おっしゃる通り。だから2社ぐらいになって終わりじゃないですか。

安田

スキマバイト自体はなくならない?

石塚

もはやスキマバイトがないと回らない店舗もありますから。

安田

これ不思議なんですけど。なぜスキマバイトだと埋まるんですか?

石塚

単純に「今ちょっと仕事したい」って子のニーズを拾えるからですよ。

安田

急にバイトしたい人ってそんなに多いんですか?

石塚

たとえば夜7時に食事の約束をしていて。それまで時間が空いてるから「新橋でバイトでもしよう」って探すと、すぐ見つかるわけですよ。

安田

そんな人いますか。

石塚

いるんですよ。そしてすぐに入れるバイトがあるんです。それをアプリ化したっていう意味ではタイミーってすごい会社だと思う。

安田

お店の側からすると「使い物にならないかもしれない人」を1時間だけ入れるわけですよね?そんなの戦力になるんですか。

石塚

店舗側も忙しいから。「これだけやってくれる」という人がいれば助かるんです。

安田

大きなチェーン店が使うんですか?

石塚

小さな個人店でも使います。

安田

それって苦肉の策ですよね。スキマバイトじゃないと人が採れないってことですよね?

石塚

その面は大きいと思います。

安田

本当はちゃんと毎日来てくれる人を採りたいけど、それじゃ埋まらない。仕方がないから1時間でも2時間でもいいから来て。ということですか。

石塚

そうです。

安田

サービスの質は落ちないんですかね?生産性とか。

石塚

もうしょうがないですよね。それとタイミーが上手なのは「このバイトさんはこういう評価です」と店側がつけること。

安田

なるほど。

石塚

すごく評価が高いと「あ、この人いいな。ちょっと時給高めでも来てもらおう」みたいな。要するにスキマバイトのプロみたいな人が出現してる。

安田

スキマバイトのプロ?

石塚

あまり縛られたくない人で空き時間をすぐに換金したい人。

安田

身近にいますか?

石塚

うちの娘も使ってますね。たとえば地方にライブで行くじゃないですか。

安田

はい。

石塚

そうするとライブが始まるまで時間が空くんです。「4時間だけ居酒屋でバイトしようかな」とかって言って探してますよ。交通費が稼げるし、時間も潰せるし。

安田

そんなに都合がいい仕事があるってことですか。

石塚

あります。4時間だけ雇ってくれるんですよ。これだけ人不足だから店としてもありがたい。

安田

今の大学生って飲食店のアルバイトを探したらあっという間に決まるんですか?

石塚

選びたい放題じゃないですか。

安田

なんと!選びたい放題ですか。私が学生の頃ってアルバイトニュースを買って、電話しまくって。

石塚

キオスクでフロムAの雑誌買って。懐かしい!

安田

いいバイトはすぐ埋まっちゃう感じでしたけど。今の学生は「バイト先が見つからない」なんて悩みはないわけですか?

石塚

ないですね。猿田彦珈琲とか、応募倍率が異常なところを除けばまともな時給が出るバイトはいくらでもあります。正社員募集だって山ほどあるし。若者にとっては幸せな時代ですよ。

\ これまでの対談を見る /

石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

感想・著者への質問はこちらから