第359回「給食から考える行政の限界」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第358回「飲食チェーンから人間が消える日」

 第359回「給食から考える行政の限界」 


安田

鳥取大学の附属学校の4校で突然給食が出せなくなったそうです。栄養士さんが休んで。

石塚

管理栄養士が1人しかいなかったってことですね。

安田

そうなんですよ。次の人を採ろうにも採れない。お米とパンと牛乳だけ出すから「おかずは自分で持ってきてください」という状態だそうです。

石塚

子供たちがかわいそうですね。ただ難しいんですよ。待遇がいいわけでもなく。何かあった時の責任も大きいじゃないですか、学校って。

安田

ですよね。みんな求め過ぎなんですよ。「安く給食を用意しろ」でも何かあったら文句は言う。

石塚

アレルギー対応でも気を使うでしょ。

安田

確かに。しんどい仕事ですよね。

石塚

そばアレルギー、牛乳アレルギー、卵アレルギー、中には倒れちゃったりする子もいるから。

安田

うずら卵で窒息した子がいたじゃないですか。小学校の1年生ぐらいだったかな。それで学校が訴えられて。うずら卵をちゃんと噛んで飲み込むことを指導しなかったって。

石塚

無茶言うなって感じだけど。

安田

お気持ちは分かりますけど、そこまで要求したら先生のなり手がいなくなっちゃう。こうなるともう給食は廃止でしょうか。

石塚

そもそも予算が無くて。給食を作っている会社も赤字で利益が出ないんですよ。

安田

給食会社も慈善事業ではないですからね。社員の給料も払わなくちゃいけないし。

石塚

もう給食センターを全部自動化しちゃうとか。もしくは各ご家庭でお願いしますか。どっちかしかないですよ。

安田

慶応の幼稚舎ってご存知ですよね?

石塚

はい。慶應義塾の小学校ですね。

安田

そこはニューオータニと提携して、毎日ビュッフェスタイルで好きなものを選び放題だそうです。すごいゴージャスなんですよ。

石塚

あそこは送り迎えも全部バスだし。

安田

その代わりに年間154万円の学費がかかるそうです。

石塚

それだけじゃ済まないでしょう。寄付だってすごい金額ですから。

安田

ここまでやる必要はないですが、ある程度美味しくて安全なものを出して欲しいならお金を出すしかない。

石塚

ですね。

安田

国や自治体に要求するのもちょっと無理がありますよね。

石塚

お金を払うか自分たちで全部やるか。ただそうなると共働き家庭は大変なんですよ。

安田

ますます少子化になっていきますね。

石塚

それを社会がどう引き受けるかです。

安田

業者にお弁当を届けてもらうのはどうですか?昔は中学にパン売りに来てる会社とかあったじゃないですか。

石塚

いたいた。

安田

共働きの人は弁当代を子供に渡して。国のお金で給食全部やるって無理がありますよ。

石塚

学校にコンビニを開いちゃうとか。

安田

それも良いですね。

石塚

学校にコンビニがあればみんなそこで買うわけですよ。

安田

弁当を買わずにお菓子ばっかり買ったりして。

石塚

それはしょうがない。自動販売機形式でもいいし。コンビニ自販機を出店させる都内の私立学校って今増えているんですよ。すごく売れるみたいです。

安田

へえ〜。

石塚

病院にもいろんな食べ物が入ってる自販機があるでしょ?あれはセブンイレブンがやってるんですよ。

安田

そうなんですね。病院のコンビニはよく見かけますけど。

石塚

コンビニは人を置かなきゃいけないから。自動販売機だったら無人なので。1日に3便ぐらい補充すれば勝手に売れる。月の売り上げがすごいみたいです。

安田

学校もそういう風に割り切った方がいいですね。

石塚

批判はされるだろうけど。これは本当に日本の将来を先取りしてるような事例ですよ。

安田

いずれ全国でこうなっていくでしょうね。

石塚

だって毎年100万人減っている国ですよ。100万都市が毎年ひとつ無くなるってことなので。役所もやりようがないんですよ。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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