第32回 助成金や補助金より減税を

この対談について

国を動かす役人、官僚とは実際のところどんな人たちなのか。どんな仕事をし、どんなやりがいを、どんな辛さを感じるのか。そして、そんな特別な立場を捨て連続起業家となった理由とは?実は長年の安田佳生ファンだったという酒井秀夫さんの頭の中を探ります。

第32回 助成金や補助金より減税を

安田
最近はいろんな助成金や補助金が出ていますよね。国や自治体が地元の企業を応援したり、地域活性化につながるようなアイデアを募集してサポートしたり。

酒井
ええ。コロナ禍にもいろんなものが出てましたね。
安田
そうなんです。そういうこともあって、「助成金でホームページを作りたい」というような相談を経営者さんからよく受けるんです。つまり「お金がもらえるならホームページでも作るか」というスタンスなんですよ。

酒井
ああ、なるほど。実際、本当に必要な人というより、受け取るのが上手な人がもらっている印象はありますね。
安田
そうなんです。本来は面白い事業を考えた人とか、地元を活性化してくれる人のためのお金なのに、なんだかおかしなことになってしまっている。なぜなんだろうと考えると、申請手続きの煩雑さや書類の多さがハードルになっているんじゃないのかなと。

酒井
仰るとおりでしょうね。
安田

そもそもなんであんなに面倒くさくしてるんですか?(笑)


酒井
笑。これはなかなか伝わらないかもしれないんですが、実は役所の人たちも安田さんと同じことを考えているんです。「自分たちが渡したい層にどうして届けられないんだ!」と。
安田

えっ、役所の方もそう思ってるんですか? じゃあもっと申請を簡単にすればいいのに。


酒井
そこがなんとも難しいところで、届けたい層にきちんと届けるために試行錯誤した結果、どんどん手続きが煩雑になっていくという(笑)。
安田
なぜそんなことになるんですか(笑)。

酒井
端的に言えば、簡単にすればするほど不正が増えちゃうんですよ。たとえば私も独立当初に申請したベンチャー育成の補助金があるんですけど、申請書類がA4用紙2枚ぐらいだったんです。
安田
へぇ! それぐらいならなんとか書けそうです。

酒井
そういう出しやすさもあってかなり応募が集まったんですけど、同時に不正も一番多かった。最近でも補助金詐欺みたいなニュースをたまに見ますが、そのはしりですよね。
安田
なるほどなぁ。申請しやすい半面、騙し取りやすいと。確かに書類が200枚もあったら本当に真剣な人じゃないと出さないでしょうけど。

酒井
そういう風に考えているとだんだんと複雑になっていくわけです。1人1人面接をしようとか、本当に実態がある会社なのか証明させないととか、きっちり契約書を出させようとか。
安田
そうすると確かに不正は減るんでしょうね。一方で、そういう書類を作ることに長けた会社しか応募できなくなってしまう。

酒井
ええ。それができない会社が、申請代行の会社などを頼ると。ただ、悪徳業者はもちろん複雑な書類にも対応できる能力を持っているので、結局不正が起こる。結果、じゃあもっと審査を厳しくしないと、と。
安田

その堂々巡りになると。


酒井
ええ。そういう意味で私個人としては、補助金や助成金は全部廃止にした方がいいと思いますね。お金を配って不正が起こるくらいなら、その予算の分、税金や社会保障費を減らせばいい。
安田
ほう、なるほど。でも確かに、例えば新たな起業を支援するために補助金を出すなら、会社の登録にかかる手数料を減らしたりゼロにすればいいと。

酒井
例えばそういうことですよね。会社設立時に、わざわざ登録免許税を支払わせておいて、後から補助金を出す。そこに矛盾というか、無駄があるんじゃないかと。
安田
そう言われてみると確かにそうですね。何でそんなことをするんですかね?

酒井

う〜ん、一つ言えるのは、役所は1つの施策に複数の効果を求めがち、ということです。補助金にしても、単に申請したその人にお金が入るだけじゃなく、その行為が波及して他の効果をもたらすところに意味を見出している。

安田

ふむ。例えばどういうことですか?


酒井

例えば何か素晴らしい事業があったとしますよね。役所の場合、「この事業を応援するために補助金を出そう」だけでは足りないんです。補助金を出した結果その会社だけでなく、周辺の会社にもいい影響を与え、場合によってはその地域にもメリットが生まれる。そういう複数の効果を出せるものが「良い補助金」とされるわけです。

安田

ああ、なるほど。でも現実として、その真逆の光景をよく見ますよ。補助金は出したけど、結局誰にもメリットが発生してないっていう。


酒井

そうなんです。これも手続きの話になるんですが、申請を通すため、つまり要件を満たしていることを証明するために、実現不可能な事業計画を作ってしまうんです。で、審査が通って実際に事業を始めてみたら、まったく計画通りにいかないと。

安田

なるほど。最初に言ったように、「補助金や助成金をもらうこと」が目的になってしまっている会社も多いでしょうしね。そもそも身銭を切る覚悟がないと、事業としては成功はしないと思うんですけどね。


酒井
仰るとおりですよね。一方役所にも問題はあって。例えば昨今のIT補助金も、純粋な補助のためというより、政治家から「日本のDXはどうなっているんだ」と聞かれたときのためのアリバイに使っているふしがある。「ほら、ちゃんとサポートしてますよ。ちゃんと働いてますよ」と言うためのもの、というか(笑)。
安田

笑。でももともとその補助金って、中小企業のIT化が大変そうだからお金を配ろうっていうシンプルな話だったはずですよね。


酒井
そこにさっき言った「複数の効果」の話が絡むんです。「せっかくだからDX要素も付け加えよう」とか「地域活性化要素も付け加えよう」「雇用は大事だから人を雇ったら」とどんどん付け加えるうち、本来デジタル化したら人が減るはずなのに、なぜか雇用が増えるという話になってしまっている(笑)。
安田
あらためて考えると意味不明ですね(笑)。ちなみに酒井さんの言うように、もし助成金とか補助金を本気でなくそうと思ったら、どうしたらいいんですか?
酒井

う〜ん、既に補助金漬けになっている会社も多いので、簡単にはいかないと思いますけれど。でも敢えて考えるとすれば、法人税の減税でしょうね。減税する代わりに助成金や補助金はすべて廃止するという。

安田
なるほど。とはいえ、全廃するとなったらすごい数の反対意見が集まりそうですね。
酒井
ええ、すごい勢いで関係各所から陳情が来るでしょうね。「うちのだけは止めないでください」って(笑)。
安田
確かにそうですね。いやぁ、お役人さんも大変だ(笑)。

対談している二人

酒井 秀夫(さかい ひでお)
元官僚/連続起業家

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経済産業省→ベイン→ITコンサル会社→独立。現在、 株式会社エイチエスパートナーズライズエイト株式会社株式会社FANDEAL(ファンディアル)など複数の会社の代表をしています。地域、ベンチャー、産官学連携、新事業創出等いろいろと楽しそうな話を見つけて絡んでおります。現在の関心はWEB3の概念を使って、地域課題、社会課題解決に取り組むこと。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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